2学期に入って、算数の少人数クラスは編制替えを行い、それに伴って教員の担当が変わることになりました。
その結果、1学期はああでもないこうでもないと教え方を工夫し、子どもたちと楽しんで授業をつくっていましたが、今学期の担当クラスでは様子が変わりました。
今度のクラスは、塾に行っている子どもたちが多く、教科書の内容をおおむね理解しているので、いかに飽きさせずに考えさせるかということに視点を移さなくてはならなくなったのです。
さて、2学期最初に学習したのは、「並べ方と組み合わせ方」という単元です。
例えば、「1~4のカードを並べて、4桁の数を作った場合、何通りできるか」あるいは、「5種類のケーキの中から2種類のケーキを選ぶ場合、何通りが考えられるか」といった問題を解く学習です。
これを解くためには、樹形図を書けばいいことを知っていらっしゃる方も多いと思いますが、その他にも様々な考え方があります。そして、何通りかを素早く導き出すには、式を用いればいいのです。
しかし、式を使って簡単に求めることがねらいではなく、「どのようにして導き出せるのかを考えてみる」という過程を大事にしなければいけないと思っています。
ところで、新しいクラスでは、やり方を工夫させても式を考えさせても、教科書に載っている問題では物足りなさそうであったので、友人に助けを求めました。そして、おもしろい問題を教えてもらいました。
「A・Bという2つのチームが試合をします。一方が勝つか、負けるか、引き分けるかという結果があるときに、その組み合わせは何通りあるでしょう」という問題です。
1試合であるならば、「Aチームが勝ち、Bチームが負け」「Aチームが負け、Bチームが勝ち」「引き分け」という3通りの結果が考えられます。
2試合では「Aチームが2勝、Bチームが2敗」「Aチームが1勝1敗、Bチームが1勝1敗」「Aチームが1勝1分け、Bチームが1敗1分け」「Aチームが1敗1分け、Bチームが1勝1分け」「Aチームが2敗、Bチームが2勝」「2試合とも引き分け」の6通り、3試合では10通り、4試合では15通りです。そこで、100試合では何通りになるのかを考えてもらうことにしました。
組み合わせの数が、3・6・10・15・・・と増えていくことから、その増え方が+3、+4、+5・・・となっていることに気づいた子どもがいました。それで、次は21・28・・・となるだろうと予測できました。
そこから先は宿題ということにしました。
給食前の時間、うちのクラスの子どもたちは友達と一緒になって問題に取り組み、計算機を使って計算したり、何とか式を導き出そうと試行錯誤を繰り返したりしていました。見ていてほほえましくなる光景でした。
翌日、一人の男子が100までの計算をノートにやってきました。式は出せなかったものの、地道に表にして計算してきたのです。
数人の女の子のグループは、式を導き出すことに成功し、見事に正解することができました。
この問題には、隣のクラスの教師も挑戦し、彼も数時間の悪戦苦闘の後、式を考えつきました。
私は、式そのものは知っていましたが、それをどのように説明したら納得させてやることができるのか、夜も寝ないで考えました。こんなに数学に取り組んだのは、高校以来のことかもしれません。おかげで、説明の方法をまとめることができました。
実際には、小学生が考えるには難しい問題で、子どもたちがチャレンジしてくれたということが重要だったのだと思います。問題を解く中で、友達と知恵を絞り合ったり、担任に負けまいと思ったりすることに意義があったのだと思うのです。
自分から問題に立ち向かっていくという経験は、算数に限らず、とても大切なことだと思います。それを子どもたちに求めるだけでなく、我々教師も一緒になって考える、そしてその姿を見せるということを、これからも続けていきたいと思っています。
式を導き出された方のために、次回、正解を掲載します。ぜひ、挑戦してみてください。

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)
特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com
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