2009.03.20
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春らしさ

富山県立富山視覚総合支援学校 教諭 岩本 昌明

「三寒四温」という言葉どおりの、天候がここ富山でも見られます。
雪が舞い散るような寒い日が続いたかと思えば、上着を脱いでワイシャツでも汗ばむような日もあったりします。着実に冬から春への営みが北陸にも訪れているようです。

唐突ですが「春らしさ」を皆さんは、何に感じることが多いでしょうか。
やはり天候の変化で感じる方が多いでしょうか。
近くのデパートでは、冬物の一掃のバーゲンも終り、春物の装いに変わっています。
着る物で感じる方が多いでしょうか。

合格発表に関連したチラシが新聞にたくさん入ってきます。
チラシの華やかさや枚数の多さに「春らしさ」を感じるでしょうか。

少しでも不況を吹き飛ばそうと、「春らしさ」で補おうとしているような気もします。

私はといえば、食べ物に「春らしさ」を感じている次第です。
こだわっているのは、和菓子です。中でもお餅や団子の類です。

三色団子、草餅、豆もち、豆大福、イチゴ大福、ゴマもち、桜餅、柏餅、みたらし団子、ゴマもち、安倍川もち、ヨモギ団子etc.

上に紹介したものは、最近1週間に口にしたり、店頭でどれにしようかと購入するのに迷ったりした商品名です。実にたくさんの種類があることに気付かれるでしょう。

特に「春らしさ」を感じる食べ物は、「桃色」に象徴される団子やお餅ではないかと思います。
『イチゴ大福』はその筆頭になるかもしれません。

我が家では、密かに三色団子にこだわっています。

市内にある和菓子屋さんが、それぞれ独自に作って店頭に並べてある三色団子を買い求めて、食べ較べたりしています。1本50円から100円弱の金額的にはささやかですが、それでいて心では贅沢な楽しみなのです。
もちもちっとした食感、舌に残らない控えめの甘さ、櫛の長さ、口に頬張るにちょうどよい餅の大きさなど、どこかの食通のコメントには及びませんが、その違いを堪能しております。
家族の者はどう考えているのか分かりませんが、私だけは、「春らしさ」を胃袋から感じて楽しんでおります。

同時に、市内や自分の身の回りに、気付かなかったお気に入りのお菓子屋さんが、なんと多いことであるかに気付いております。お菓子屋さんは、地域の食の文化の発祥地ではないでしょうか。
お菓子を色やその配色や形や盛り付けなど、視覚で楽しんでいます。和菓子は特にその傾向が見られるような気がして、目で愛でています。

今度お世話になる就労先に、卒業した生徒のその後の様子を伺い、挨拶を兼ねて足を運んできました。
たまたま、4月の「花見」の企画に関して、意見を出し合うところに居合わせました。利用者の方が、自治会と称している話し合いの場がありました。

A君は、「花見」にどこか適する場所を求められました。「わからない」と答えました。
彼には、もしかすると「花見」という体験がないのではと思いました。

「花見」という「春らしさ」を思わせる、日本古来の風物も、全盲であるならば理解に困難を伴うこともあるのではないだろうかと、考えさせられました。

参考:花見 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8A%B1%E8%A6%8B

彼にとっては、乗物(バス)でどこかへ移動して、そこで昼食をとった活動や行事として記憶に残るだけなのかもしれません。できれば、桜の香や桜の花びらが顔にでも触れる感覚を通して「花見」を味わってもらえたらと願います。もしかしたら「花見団子」でも食べることがあれば、それが、彼の「花見」との唯一の接点になるかもしれません。

さて、皆さんの「春らしさ」は何でしょうか。


P.S.新しい生活に飛び出す多くの方々の希望に満ちた幸をお祈りいたします(そうでない人も含めて)。
私事でありまが、諸事情で、今回でしばらく休ませていただきます。内田洋行関係者のみなさま、本サイト運営にかかわる皆様をはじめ、今までの多くの方々との出会いと多くの温かい支えに感謝いたします。ありがとうございました。

岩本 昌明(いわもと まさあき)

富山県立富山視覚総合支援学校 教諭
視覚に病弱部門が併置された全国初の総合支援学校。北陸富山から四季折々にふれて、特別支援教育と英語教育を始め、身の回りに関わる雑感や思いを皆さんと共有できたらと願っています。

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