2008.09.05
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エド・はるみの113km走破

富山県立富山視覚総合支援学校 教諭 岩本 昌明

2学期をどのように迎えられましたか。

多くは、9月1日が始業式だったでしょう。8月下旬に始業式を迎えたところもあるでしょう。高等学校では、お盆を過ぎたら既に補習という名目で登校しているところもあるようです。どうであろうと、一つの学期の区切りを形式的な儀式で処理するのでなく、一人ひとりの「心のあり方」を考える上で大事な通過点としたいものです。

「心のあり方」というのは、人それぞれ色々な考え方があると思います。私は、次の2点を考えてみたいと思います。まず、夏休みを振り返るということです。もう一つは、2学期の目標や目当てを持つということを考えてみました。

夏休みを振り返るのは、学習面や健康面や体験面だけでなく、人間的な内面の成長も保障されたかということです。心の成長が、学習を通してなのか、どこか旅行へ行ってなのか、それとも地域や部活動や友人との付き合いなどで行われたでしょうか。夏休みが始まる前と、夏休みを終えて、どのような価値観が付加され、人間として一皮むけたものになったのでしょうか。単にドリルを終えた、自由研究を仕上げた、ラジオ体操を毎日スタンプ押してもらった、で留まってほしくないのです。それらを通して得たものを振り返ってみてほしいのです。生徒等の瞳の輝きに教師として、生徒の成長の度合いに気づきたいものです。眼がくすんでいたり、下向き加減の子どもたちには、時間と注意をできるだけ注ぎ直したいものです。

次に2学期の目標と目当てを持つということは、新しい学期がスタートするにあたり、〈仕切り直し〉をしてほしいのです。1学期の良くなかったことを引きずるのではなく、一端「リセット」して新たな気持ちで、再スタートを切ってもらいたいのです。1学期が良い状態で終えた方も、その結果や状態に安穏とするのではなく、気持ちの上で、今一度仕切り直しをしてみてほしいのです。教師としても教科担当者としても、こんなクラスにしたい、こんな授業を行いたいという所信表明を、短時間でも一言でも添えてみたいものです。生徒らにも一人一言のような形で夏の想い出を紹介しあいをさせたり、小片にでも書かせ文章の形で意思表示の機会を保障したいものです。

私は、最初の授業で、夏の様子を話してもらいました。それと今学期の英語は何を目標としようかと相談しました。どこまでを進度としようとか、どんな内容の単元を勉強するのか、どのような授業スタイルで進めたらいいのかなど、本人の気持ちや考えを、新しい学期の授業開きで再確認しました。

ライティングの授業で、生徒に数行で夏の想い出を書いてもらいました。1文ごとにソクラテス風(?)に、個人的な問答をしながら、英文と日本文を完成させるようにしました。書いて終わりでなく、自分で書いた文章を暗記させ、さらに発表するところまでしてみました。驚いたことに、自分で考え作った英文は、愛着があったので短い時間で「意欲」的に数分で覚えてくれました。英文が自分の体験に基づくものであったのが功を奏したようです。

さて、わたし自身が夏休みを振り返ってみます。今の時点で、私の心の中に大きく占めている出来事は、『エド・はるみさんの113km24時間マラソン』です。me her的と笑われそうです。テレビの視聴者受けを狙ったもので、感傷的すぎると、某週刊誌的視点で斬られるかもしれません。皮相的で一般的な感想程度ではないかとお叱りを受けるかもしれませんが、私は個人的に、「夢」「希望」「勇気」それと「やる気」を、彼女の行動から頂けたと思います。無謀だと分かっていましたが、同じ時間帯にひっそりと113kmを富山のどこか走ってみようかと考えました。が、行動に移すことはできませんでした。走りきったエド・はるみさんがとても羨ましく思えました。

40代後半になっても、挑戦してみたいことは山ほどあります。たとえば「東海道53次を徒歩で日本橋から京都まで旅行したい。」「南は鹿児島から北は北海道まで車や列車でのんびり縦断してみたい。」「シベリア鉄道各駅停車でモスクワまで」「アメリカ横断鉄道に乗って、英語のなまり実体験」など、某テレビ番組の電波少年のあるコーナーの再現と類似ものになってしまったようです。時間もお金もないのではありません。ないのは「その気」「やる気」「本気」なのです。言い訳という隠れ蓑をたくさん着て、結局一歩前に進もうとすることにさえ躊躇する自分が、そこに見え隠れするのです。失敗を恐れ、無謀な挑戦にも尻込みし、無難な線で妥協することへシフトしてしまい、保守的傾向に懐柔されていくようです。こんな自分を見つめ直すことができたようです。

しかし、「24時間愛は地球を救う」というのは福祉の分野に軸足があるように感じます。この主旨を教育界に流用して、「24時間愛は教育を救う」のようなものを文科省もサポートし、教師の「夢」実現の企画立案に対して予算措置が行われるようになれば楽しいのではないかと思うのですが。いかがでしょうか。

追伸:福田首相辞任の激震をTVのテロップで知り、愕然。日本の2学期はどうなるのか?

岩本 昌明(いわもと まさあき)

富山県立富山視覚総合支援学校 教諭
視覚に病弱部門が併置された全国初の総合支援学校。北陸富山から四季折々にふれて、特別支援教育と英語教育を始め、身の回りに関わる雑感や思いを皆さんと共有できたらと願っています。

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