前回は「理解の得られにくい保護者」への支援について述べました。発達障害や特別支援教育が社会的に十分認知されているとは言い難い状況の中で、「親が理解しない」、「保護者の協力が得られない」と言っていたのでは何も解決しない、と書かせていただいたと思います。
そもそも、私たち教育関係者は、そうした状況を自ら作り出してきているのではないかと自省する必要があるのかもしれません。今回の記事の表題にもあるように「障害児を授かることは誰にでもある、それは決して他人事ではない」という事実を、実は誰からも教わったことがないというのが社会全般の保護者であり、教育現場からもその事実を発信することはあえてしていないのが現状だと思います。
1999年の調査(※)になりますが、とても興味深い研究結果が報告されていたので、その一部をご紹介します。この研究は、(1)保健婦(当時の呼称で現在の「保健師」)、(2)教員養成課程の大学生、(3)高校教員、の3つの群を対象として障害児出生に関する意識調査を試みたものです。
それによると・・・、
(1)保健師は、妊娠中に障害に関して伝えることに強い抵抗感を持っており、話す必要性を感じてはいるが、妊娠前にしておいてほしいと感じている。
(2)大学生の多くは、講義等でそのことを学ぶが、できれば時期や人は特定せず、幼いころから、できる人が少しずつ教えるのがよいと感じている。
(3)高校教員の多くが「必要である」と感じているが、校務との関係で、「自分が」教えることの難しさを感じている。
こうした結果から、高校までの段階や妊娠中は「誰もが障害をもつ子の親になる可能性があること」を伝えられていない、という現実が浮き彫りにされました。確かに、私の身の回りを見渡してみても「誰もが障害のある子の親になる可能性がある」ことを伝えられた経験があるという人がほとんどいません。
障害のあるわが子を目の前にしてはじめて、両親が事実をその瞬間に受け入れなければならない現実・・・。発達障害の場合は、幼いころは子育ての難しさを人一倍感じてきて、小学校への就学前後にいきなりその事実に向き合わなければなりません。
自然に、成り行きにまかせて「障害のある子の保護者になるかもしれないこと」を学んでもらうという現在のスタイルを、大幅に見直すことが必要だ! 教育現場において保護者への理解を求めることの厳しさがそう語っているように思います。
※参考文献
中村明子、山縣浩、柴崎建(2000)「障害児を授かることは他人ごとではない」ことを伝える可能性、日本特殊教育学会第38回発表論文集、p.450
そもそも、私たち教育関係者は、そうした状況を自ら作り出してきているのではないかと自省する必要があるのかもしれません。今回の記事の表題にもあるように「障害児を授かることは誰にでもある、それは決して他人事ではない」という事実を、実は誰からも教わったことがないというのが社会全般の保護者であり、教育現場からもその事実を発信することはあえてしていないのが現状だと思います。
1999年の調査(※)になりますが、とても興味深い研究結果が報告されていたので、その一部をご紹介します。この研究は、(1)保健婦(当時の呼称で現在の「保健師」)、(2)教員養成課程の大学生、(3)高校教員、の3つの群を対象として障害児出生に関する意識調査を試みたものです。
それによると・・・、
(1)保健師は、妊娠中に障害に関して伝えることに強い抵抗感を持っており、話す必要性を感じてはいるが、妊娠前にしておいてほしいと感じている。
(2)大学生の多くは、講義等でそのことを学ぶが、できれば時期や人は特定せず、幼いころから、できる人が少しずつ教えるのがよいと感じている。
(3)高校教員の多くが「必要である」と感じているが、校務との関係で、「自分が」教えることの難しさを感じている。
こうした結果から、高校までの段階や妊娠中は「誰もが障害をもつ子の親になる可能性があること」を伝えられていない、という現実が浮き彫りにされました。確かに、私の身の回りを見渡してみても「誰もが障害のある子の親になる可能性がある」ことを伝えられた経験があるという人がほとんどいません。
障害のあるわが子を目の前にしてはじめて、両親が事実をその瞬間に受け入れなければならない現実・・・。発達障害の場合は、幼いころは子育ての難しさを人一倍感じてきて、小学校への就学前後にいきなりその事実に向き合わなければなりません。
自然に、成り行きにまかせて「障害のある子の保護者になるかもしれないこと」を学んでもらうという現在のスタイルを、大幅に見直すことが必要だ! 教育現場において保護者への理解を求めることの厳しさがそう語っているように思います。
※参考文献
中村明子、山縣浩、柴崎建(2000)「障害児を授かることは他人ごとではない」ことを伝える可能性、日本特殊教育学会第38回発表論文集、p.450

川上 康則(かわかみ やすのり)
東京都立港特別支援学校 教諭
障害のある子どもたちの指導に携わる一方、特別支援教育コーディネーターとして小中学校を支援してきました。教育技術の一つとしての「特別支援教育」を考えていきます。
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