2008.07.25
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1学期をふり返って

富山県立富山視覚総合支援学校 教諭 岩本 昌明

特別支援学校へ変わってきて、早いもので、盲(笑?)終業式を迎えました。地域によっては7月24日(木)が終業式でないようです。曜日めぐりや休祭日の関係で7月18日(金)に終業式を終え、長めの夏休みに突入した学校も今年は多かったのではないでしょうか。正直うらやましいです。今週に入って、私も生徒も猛暑・酷暑に我慢大会状態で授業がありました。36℃の中での教室を経験すると暑さには変な自信(?)がつきました。

さて、学期末になり、『通知表』は、100点法や5段階評定とは異なった成績(評価方法)もあることを知りました。中学部・高等部普通科の重複級の通知表は、各教科や領域(たとえば生活単元・作業・自立活動など)が、すべて文章表記になっています。例えば、私の英語の場合は、次のような感じで表現して「~ができるようになった」ことについて、点数でなく文章で評価が求められました。
参考:重複障害
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%8D%E8%A4%87%E9%9A%9C%E5%AE%B3

――受動態では、「~されました」を含む英文を点字でも表現することができるようになりました。また、この表現を用いて口頭での受け答えもできるようになりました。ALTとの授業でも、返答に窮する場合、Once more, please.等適切な語を用いて応答を続けることができるようになりました。eatenなど不規則な過去分詞の語彙も増やすことができました――

一般的に中規模以上の学校で、1クラス40名以上で、6クラスなどを担当している場合、1人ひとりに、数行であっても、上のような文章表記で評価をすることは、現実的には非常に難しいことかもしれません。

実は、私は、今まで90点や40点という点数表記に密かに色々な面で疑問を持っていました。テストの点数や課題の提出など平生点などを総合して100点満点換算していたり、その分布状況で5段階評定をしてきました。評点が60点や50点であることは、どんな意味をもっているのでしょうか。数値だけでは、具体的に何か能力や力ということが分かるようにはなっていません。点数では「何ができる」「どんなことが理解できている」のかは、あまりはっきりしませんでした。いや、はっきりさせることを意図してはいないのです。
でも、このような評価法でずーと今まできていました。

一人ひとりに、点数に加えてコメントを添えた、カードでも作って学期ごとに渡すことで実践できたかもしれません。手間ひまがかかって、色々と理由を付けて、やってみてこなかったことが正直な理由です。でも、ここでは出来ました。いやこのような評価方法が求められたのです。

同じ50点であっても、去年の50点の生徒と今年の50点の生徒と英語の力が同じであるのかと、そうでないのかもはっきりしていませんでした。去年の50点の生徒と今の60点の生徒と何がどう違うのか分かりませんでした。平均点も関係してくるでしょう。「評価」論というアリ地獄に陥ることになってしまい、一筋縄では終わらない大きな問題になってしまいますので、皆さんにバトンを譲ります。
参考:私の過去の投稿「0点から見えてきたこと」(2007/06/29)

「~できた50点」「~と~ができた60点」というように、数字と文章の両方併記することで、生徒に「やる気」が醸し出されるようであれば『一石二鳥』なのかもしれません。中学の通知表では、観点別項目の欄にA~Cなどの評価も行われています。この評価のために基準となる評価規準項目がきめ細かく立てられます。少しは文章での評価の要素が入ってきます。
参考:観点別評価
http://www.taishukan.co.jp/gcdroom/captain1/kanten/captain1Revised_kanten.pdf#search='観点別評価 英語'
http://tb.sanseido.co.jp/english/newcrown/18_support-data/data/18nc_hyouka1.doc

文章にしても、数字にしても、評価は限界があることも分かっています。文章化したからといって、全部書き尽くせるわけでもありません。ややもすると文章自体も色々と脚色されて、逆に実態から離れていくことも良くあるようです。どちらにしても、今後の「やる気」を促す材料となることを願っています。

今、文章化された評価(通知表)を作り終えて、私は目から鱗状態です。一人ひとりが、どの教科の担当者からも、本当にきめ細かく深い観察と「~できるようになりましたね」という評価を得ています。視覚障害のない方からすると、当たり前にできることや、できて当然の行動や内容と言われるかもしれません。でも彼等彼女らには、この1学期を終えて、それ以前とは異なる成長の一歩を着実に踏み出しているのです。

A君の通知表を前にして、私自身は「一体何が~できるようになりましたか」と改めて問い返している次第です。

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【写真】36℃を示す温度計
ondokei.jpg

岩本 昌明(いわもと まさあき)

富山県立富山視覚総合支援学校 教諭
視覚に病弱部門が併置された全国初の総合支援学校。北陸富山から四季折々にふれて、特別支援教育と英語教育を始め、身の回りに関わる雑感や思いを皆さんと共有できたらと願っています。

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