2024.10.14
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働き方改革(小学校)[連載]学校パラレルワールド(1)

働き方改革の本やネット記事はいつも枝葉末節で、芯を食った話なんてどこにもないじゃん。
早く帰る方法とか、時短のための小手先の工夫ばかりもてはやされて、でも、ホントはそこじゃないでしょ。って思っても、芯を食った改革は、現場の我々にはできない。
学校業界が覆われている根強い風習と、法で決められたシステムの二つの大きな山を前に、一教師にはなすすべもない。でも、妄想ならできるな、と思って書きました。

東京都内公立学校教諭 林 真未

学校パラレルワールドとは?

そんな言葉はありません。
私が考えました。
現実の学校世界にいると、そして学校内外の人たちの意見を聞いていると、私には、正直、「なにやってんだか」とか「それちがうでしょう」と思うことばかり。それらはあまりに滑稽で「これもうギャクじゃん」とさえ思う。

最初は、その心に溜った疑問や不満や反論を、この場を借りてぶちまけたいと思ったのですが、「そんな美しくないことをするより、わくわくするくらい理想的なパラレルワールドを描いたほうが楽しいんじゃないか」と思いつきまして。
これから、いろんなテーマで、学校パラレルワールドを描いていきます。
まずは「働き方改革が進んだ世界」。

※パラレルワールドとは、現実とは同じシチュエーションで違う展開をする仮想世界のこと。だから、学校パラレルワールドは、学校というシチュエーションで現実とは違うストーリーが展開されます。

早く帰るとか帰らないとか

授業時数上限が週20時間に法律で決められたから、毎日1~2時間の空き時間ができた。
そもそも8:15の勤務開始と同時に児童が来ていて、2:00頃帰って、4:45までに、会議も休憩も事務仕事も〇つけも授業準備も、って無理だったんだ。今も昔も休憩はとれないけど、帰る時間は確実に早くなったなー。

積み重なってえげつなくなる雑用も、学校アシスタントさんたちのおかげでガクッと減ったし。アシスタントさんは、有資格者じゃないので、カウンセラーさんの日給1日分で、週4日来てもらえる。リーズナブルだよね。
アンケートとか調査の類もなくなったからだいぶラク。世の中がエビデンスにこだわらないから、トライアンドエラーで、良さそうな施策はどんどん現場でやってみて、ダメなら廃案、良ければ採用っていう今のスタイルのほうが好き。

空き時間が増えて何がありがたいって、他の先生の授業を見に行くことができること。
自分の授業潰して出張でわざわざ指導教諭の授業見に行かなくても、これで十分すぎるほど勉強になる。ヒラ教諭・主任教諭の肩書で、授業も学級運営も凄い人、必ず職場に一人はいるからね。
「それで空き時間潰したら、働き方改革で早く帰らすために授業時間の上限を設けた意味がない」って言われるかもしれないけど。

でも、働き方改革=早く帰る じゃないから。
なんなら、以前から仕事を適当にやって早く帰っている先生はいたし。
多くの先生の望みは、早く帰ることじゃなくて、やりたい仕事を思う存分できることなんだ。

完全分業制の実現

今となっては、それを全部学校で抱え込まなければならなかったのは、さすがに無理があったと思う。

犯罪行為をした児童生徒は、警察や少年院による指導。つまり法務省管轄。
児童生徒の健全育成に関わることは学校。つまり文部科学省管轄。
児童生徒ではなく保護者や家庭の指導、支援は福祉。つまり厚生労働省管轄。子ども家庭庁もか。

これを実現できたのは、極端に少なかった子ども家庭関連予算が諸外国並みになったから。
それと、各所にも連携する余裕ができ、現場レベルで、お互いが顔の見える関係を構築できていることは、ホントに大きい。

教育課程の統一

各校でまとめて提出する教育課程のシステムが廃止されて、区市町村で一つだけに統一したのも大きいな。
大体、あれを毎年本格的に考え直す余裕なんてどこにもない。
だから、どこの学校も、例年、似たようなものをマイナーチェンジしているだけ。
それをけっこうな時間かけて手分けして書くんだもの。
無駄だったな。
建前で、各校独自の教育をとか、教育課程に則って、とか言っていた頃のこと、今考えるとギャクとしか思えないわ。
だって、提出した後、翌年の提出時期まで読むことなんてない。全員とは言わないけど、少なくとも、きっと、そういう先生が圧倒的多数だったと思うから。

心からよかったと思う。

学力調査・体力テストの廃止

なんで、学力テストや体力テストの実施の手間を現場が被らなくちゃならないんだろうってずーっと思ってた。
せめて外注にして、パッケージで勝手にやってくれればいいのに。
だって、あれって、子どものためというより、調査のためのものでしょう。

って思ってたら、なんと廃止という英断が下された!
やればできるんじゃん!

あの労力がなくなったぶん、運動会と学芸会の企画・運営、頑張る。

いかがだったでしょうか。

これは私個人の妄想なので、読者の方の考えとは違うところもあるかもしれません。でも、この妄想けっこう楽しいので、皆さんもやってみませんか。まだまだ、テーマを変えて、学校パラレルワールドは続きます……。

林 真未(はやし まみ)

東京都内公立学校教諭
カナダライアソン大学認定ファミリーライフエデュケーター(家族支援職)
特定非営利活動法人手をつなご(子育て支援NPO)理事


家族(子育て)支援者と小学校教員をしています。両方の世界を知る身として、家族は学校を、学校は家族を、もっと理解しあえたらいい、と日々痛感しています。
著書『困ったらここへおいでよ。日常生活支援サポートハウスの奇跡』(東京シューレ出版)
『子どものやる気をどんどん引き出す!低学年担任のためのマジックフレーズ』(明治図書出版)
ブログ「家族支援と子育て支援」:https://flejapan.com/

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