2023.01.23
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プロアクティブな言葉「新○年生」

次年度に向けて、学級経営を締めくくる時期になりました。2月ともなると、指導要録を作成したり、編制を考えたりと次年度に向けての校務が多くなっていきます。子どもたちへの指導においても、これまでの振り返りや次年度に向けての話をする時期です。この時期に学級が落ち着かなくなるという話を聞いたことがあります。学級じまいとなる年度末に向けて、何をなすべきなのかを今一度考えてみたいと思います。

浦安市立美浜北小学校 教諭 齋藤 大樹

魔の○月

学級崩壊が起きやすい時期があるというのを聞いたことがあるでしょうか。先輩教員から「魔の11月に気をつけて」という助言を頂いたことがあります。確かにこれまでの経験から、「11月」というのは目標を持ちにくく、同僚からも「この時期は学級が落ち着かない」という言葉を聞くことが多いです。他の月はどうなのかとインターネットで調べてみると、「2月」も学級崩壊が多いと言われているそうです。この「学びの場.com」の教育つれづれ日誌で先輩執筆者の一人である関田聖和先生も「2月危機」について触れられています。

なぜ2月が魔の月になるのか

この本当かどうか怪しい「〇月」学級崩壊説。そもそも学級崩壊とは何かを、改めて文部科学省のサイト内検索などで調べてみました。すると、公的な文書ではあまり用いない言葉なのだということが分かります。文部科学省からは、学級崩壊という言葉ではなく、「学級がうまく機能しない状況」と示されることが多くなっています。

さて、まことしやかに語られる「魔の○月」という話が本当だったと仮定すると、2月というのがなぜ浮かび上がっているのでしょうか。2月というのは、一年の締めくくりとなる時期であり、目標を持ちやすい時期ですし、11月とは正反対で、学級じまいが目前に見えています。

前述した関田先生の記事によると、学級の荒れの原因は「行事の準備などで教師にゆとりがなくなり、気ぜわしい雰囲気になるからではないか」と示されています。また、子どもたちが担任の言葉や口癖に慣れた時期というのもあるでしょう。これまで叱責中心で学級経営を進めてきた場合に、子どもたちがそうした教師の言葉かけに慣れきってしまい、言うことを聞かなくなっているのかもしれません。

いずれにせよ、本来であれば子どもたちと担任の信頼関係が十分構築できているはずの時期です。力をつくしているにもかかわらず、この時期に学級がうまく機能していないのは、同じ教員として胸が痛みます。子どもたちにとっても、教師にとっても不幸なことだと感じます。

 

2月に言いがちなリアクティブな言葉

2月というのは各学校で卒業生を送る会に向けての練習がピークとなる時期です。こういった行事の練習でよく聞かれるのが、合唱や演劇の練習の際に練習の態度が良くない児童生徒に対して「このままじゃあ、次の学年に行くのが心配だよ」というような類の言葉かけです。 

教師のイメージする形や進度とはズレが生じる中で、教師が焦りのあまりにこうした言葉を使ってしまうのでしょう。本心としては、「次の学年に向けてこれが必要だよ」という気持ちが隠されているのだと思います。もうすぐ離れてしまう学級の子どもたちに対しての揺れ動く担任の気持ち、次の学年団の先生方へ迷惑をかけられないという気持ちからこうした言葉かけになるのではないでしょうか。

子どもたちが起こした現象に対して、指導者が後追い的に指導することをリアクティブな指導と言います。新しい生徒指導提要では、こうしたリアクティブな指導ではなく、子どもたちを育てることに主眼を置いた「プロアクティブ」な指導を大切にすることが示されています。言い方、伝え方を少し工夫することで、先手型、あるいは事前対策型、予防型と呼ばれるプロアクティブな生徒指導に変化すると言われています。

「さすが、新○年生」

前述した送る会などの指導において、私がよく用いるフレーズがあります。それは、「新○年生」という言葉です。2月のこの時期まで温存しておき、「ここぞ」という場面から解禁してこの「新○年生」という言葉を何度も伝えていきます。すると、子どもたちは徐々に次の学年に向けての気持ちが高まり、まるで次の学年になったかのように気持ちが引き締まることがあります。4月から新しい学年としての意識を高め始めるのではなく、ちょうどこの2月ごろから少しずつ新しい学年への自覚を促し、成長を期待することが大切なのではないでしょうか。長距離を飛ぶ大型飛行機が4000メートル級の滑走路を必要とするように、ある程度準備期間を取って次の学年へと飛ばせたいものです。

また、2月というと、今年度の執筆テーマの一つとしている学習塾業界では新しい学年に進級する時期です。以前ご紹介した『2月の勝者』という漫画の題名通り、2月で東京都の中学受験が終了するため、首都圏の塾のカリキュラムでは、この時期から次の学年に進級することになります。子どもたちは学校とは異なり、この時期から新しい学年で呼ばれ、受験生としての意識を更に高めていきます。

叱責とは異なり、こうした未来を意識させる言葉かけこそ、プロアクティブな先手型の指導になるのではないでしょうか。ぜひ年度末のこの時期こそ「さすが、新○年生の皆さん」や「○年生になる皆さんなら、きっとできるよ」というような前向きな指導をして2月危機を乗り切ってもらいたいと思っています。

学級担任としてバトンを渡すために

私たちが教職を志した際に学んだピグマリオン効果。心から子どもたちの成長を期待することで、子どもたちが実際にその期待に応える心理効果です。新しい学年や学校でも教え子たちが輝いてくれることを信じ、そして自分がこれまでやってきた一年間の実践を信じ、共に次の学年への自覚をもたせるような指導をしていきましょう。

齋藤 大樹(さいとう ひろき)

浦安市立美浜北小学校 教諭


一人一台PC時代に対応するべくプログラミング教育を進めており、市内向けのプログラミング教育推進委員を務めていました。
現在は小規模校において単学級の担任をしており、小規模校だからこそできる実践を積み重ねています。

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