授業準備の効率化?
授業準備の効率化が求められ、一人一台タブレット端末が導入され、「授業準備の時間が減っている」ということをよく耳にします。
確かに私自身もプリントを作って印刷をする回数はとても少なくなりました。
簡単な小テストであれば、Microsoft Formsなどのアンケートフォームを利用して、児童のサポートが必要なところを一瞬にして可視化することができるようになりました。
タブレットを使うことにより、学びやすさにつながることも感じています。
効率化と複雑化
ただし、一人一台端末の導入により、授業中の展開方法が無数に増えているのも現状です。
ひとつの授業を作るだけでも、様々なアプリケーションを活用できることが考えられます。
そのアプリケーションを授業中のどの場面に位置付けるかだけでも授業の展開がガラリと変わってしまいます。
タブレットを用いる際の指示や説明の仕方やタイミングも重視されるようになりました。
また、タブレットを活用して協働学習している際も活動させているだけにならないように中間指導や中間評価を意識して行う必要があります。
指導者が思考する授業づくり
つまり外に見えるような形での授業準備の時間が確実に減らすことができますが、授業が本当の学びへつながるためへの指導者が内面的に思考する時間が確実に増えている、必要になっています。
一人一台端末は授業準備の時間を減らす可能性は確かにあります。
展開や構成、指示や説明、授業中における中間指導や中間評価を無視して授業を作ることは難しくなってきているのです。
同時に授業中における指導者の即興性や児童の内面に迫るような指示や説明、評価(声かけ)が求められているような気がします。
同時に考えないといけないこと
そして大きな課題として、「そもそもデジタルでないといけないのか?」ということを指導者が常に自問自答しながら授業を構成することが必要であると思います。
思い出されるのは、10年ほど前の附属小学校での教育実習です。
図画工作科における鑑賞の公開授業で細部が見えるように大型スクリーンに映し出せるようなプロジェクターを使用しました。
授業後、指導教官に「なぜプロジェクターを使ったの?アナログではダメなの?」と尋ねられました。
その時は何も答えることができませんでした。
10年経っても変わらないこと
ここで大切なのは、目的に応じた使用です。
「どの場面で、何をするためか指導者が意図して活動を設定すること」です。
学習者用デジタル教科書について/文部科学省より抜粋
(個別学習の場面)
○ 個々の児童生徒が作業を行う,問題に回答する等,児童生徒一人一人の能力や特性に応じた学習の場面
(ア) 試行錯誤する
(イ) 写真やイラストを細部まで見る
(ウ) 学習内容の習熟の程度に応じた学習を行う
(グループ学習の場面)
○ グループでの議論を行うなど,児童生徒同士が教え合い学び合う協働的な学習の場面
(エ) 自分の考えを見せ合い,共有・協働する
(一斉学習の場面)
○ 教師によるクラス全体に向けた指導など,一斉指導による学習の場面
(オ) 前回授業や既習事項の振り返りを行う
(カ) 必要な情報のみを見せる
(キ) 自分の考えを発表する
(特別な配慮を必要とする児童生徒等の学習上の困難の低減)
(ク) 教科書の内容へのアクセスを容易にする
(その他)
(ケ) 学習内容の理解を深めたり,興味関心を高めたりする
(コ) 教師の教材準備や黒板への板書の時間を削減し,児童生徒に向き合う時間を増やす
(サ) 児童生徒の学習の進捗・習熟の程度や学習の過程を把握する
私自身も述べたような課題を克服するために、日々自問自答しながら授業づくりをしないといけないなと強く感じています。
おすすめの一冊

羽渕 弘毅(はぶち こうき)
西宮市教育委員会 勤務
専門は英語教育学、学習評価、ICT活用。高等学校や小学校での勤務経験を経て、現職。これまで文部科学省指定の英語教育強化地域拠点事業での公開授業や全国での実践・研究発表を行っている。働きながらの大学院生活(関西大学大学院外国語教育学研究科博士課程前期)を終え、「これからの教育の在り方」を探求中。自称、教育界きってのオリックスファン。
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