2019.02.13
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認め合いのススメ

クラスの中でお互いの存在は認め合うことは非常に重要だと思います。仲の良い生徒同士はもちろんですが、さほど接点がないような生徒同士であってもです。教員も生徒も、相手を褒めるのが苦手だという人もいますが、褒められて嬉しくない人はいないでしょうし、認めてもらえると思えばやる気もアップします。年度末になり、1年間のまとめの時期なので、教員も生徒も、お互いにこれまでの頑張りを認め合っていきたいものです。

前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭  山形県立米沢東高等学校 教諭 高橋 英路

三角褒めのススメ

「三角褒め」という言葉は聞いたことがありますか?これは、良いことをしたAさんに対して、教員が直接「頑張ったね!」と褒めるのではなく、他の生徒や教員の話を引用して、Aさんに対し「B先生がAさんのことを、〇〇〇ですごく頑張ったと言っていたよ!すごいね!」と褒めるものです。B先生の話を伝えるだけでなく、この例でいえば最後に「すごいね!」と自分の感想も伝えることが大切です。

三角褒めの効果としては、その先生から褒められたということに加え、B先生という別の人からも褒められたということで、多くの人から認めてもらえたという自覚を持つことができます。さらに、AさんとB先生の関係性についても、プラスの影響が期待できます。AさんとB先生の関係性が悪く、直接言っても聞く耳を持たないといった場合に、関係改善の糸口になるかもしれません。

こうした三角褒めを何度かやっていると、Aさんは全員の先生・生徒から何らかの褒め言葉をもらうことになります。直接褒められることに限定すると、なかなか難しいものですが、三角褒めを使えばそれが容易になります。全員が褒めてくれる空間(クラス)というのは、その生徒にとって居心地が良いのではないでしょうか。

三角褒めをするには、先生1人の努力だけでは難しいものがあります。褒めていないのに「褒めていたよ」とは言えないので、その生徒に対するプラスの情報を発信してもらう必要があります。普段から生徒たちの近くに寄り添って、何気ない発言を気に留めておくことも重要です。教員については、普段の会話だとなかなか褒め言葉を言ってくれない方もいるので、こちらは会議でそうした情報を求めたり、簡単なアンケートなどを取ったりするのも良いかもしれません。

見えない部分の頑張りを共有

学校内での頑張りを皆で共有することは大事だと思います。他方、担任は知っているものの、生徒同士だとあまり見えにくい頑張りもあります。例えば、勤務校は夜間定時制なので、昼間は多くの生徒が働いています。友達と一緒に勤務しているわけではないので、そこでの様子などは、お互いにあまり知らない場合も多いです。特に、職場で褒められたことを自慢げに話す生徒はあまりいないので、プラス面となればなおさらかもしれません。また、本人やその職場にしてみれば当たり前のことが、他の人から見ると「すごい!」というケースもあります。

勤務校で行っている職場訪問(勤務先を訪問して様子を聞く)や本人との面談などで、勤務先での頑張っている情報を集め、それを皆に共有するようにしています。学校外での活動なので場合によっては皆に知られたくないという生徒もいますので、情報を提供してくれた人や本人には承諾を取るようにしています。

朝5時くらいから出勤して頑張っていたとか、昼の時間帯に行事があった日は行事が終わってスグに勤務に向かったとか、継続した勤務実績が認められて責任ある仕事も任されているとか・・・私たち教員が聞いても「なんと!そうだったのか!」と驚くようなこともあります。

生徒同士でも

教員が生徒を褒める・認めるだけでなく、生徒同士でもそうした動きが出てきてほしいと思います。そのきっかけとして、いくつかの取り組みを紹介します。
(1)振り返りシート
 私のクラスでは節目ごとに振り返りシートを書いてもらっています。簡単な自己評価や今後の決意を書くものですが、最後に「友達からのコメント」欄を設けています。全員が書き終わったところで回収し、ランダムに再配付します。そこで、自分以外の人に対してコメントを書いてもらっています。もちろん、励ましやその人が頑張っていると思うことなど、ポジティブな内容を書くよう伝えます。

(2)カードで伝える
 多くの学校や会社で取り入れられている「いいねカード(名称は様々ですが)」といった取り組みもあります。クラスメイトの良いところを見つけたらカードに記入してBOXに入れます。BOXに入ったカードは直接本人へ渡したり、掲示して全体で共有したりします。直接言葉で伝えるのは難しくても、カードに記入することで少しハードルが下がります。

(3)発表後にコメント
 授業で何か発表してもらった後、次の順番の人にコメントしてもらう方法もあります。皆の前で発表するのは緊張するので、どんな生徒であってもどうだったのか非常に気になっているはずです。発表して拍手されるのはうれしいですが、具体的なコメントをもらうことで嬉しさは倍増します。

ということで、今回は、クラス内での認め合いについて記事を書きました。皆さんの、認め合いのアイディアもぜひ教えてください。

高橋 英路(たかはし ひでみち)

前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭
山形県立米沢東高等学校 教諭


クラス担任と、地歴科で専門の地理を中心に授業を担当。生徒達の「主体的・対話的で深い学び」が実現できるよう、p4c(philosophy for children)やKP(紙芝居プレゼンテーション)法などの手法も取り入れながら日々の授業に取り組んでいます。

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