アウトプットを!
教員も生徒も、いろんなことをインプットする機会はたくさんあると思います。しかし、アウトプットというと、どうでしょうか?そのような機会が設けられていなかったり、自分から進んでやろうという気持ちにならなかったり・・・ということで、なかなかできていない人も多いのではないでしょうか。様々な研修や勉強会に参加する中で、いろんな方から「アウトプットしなきゃ!」という話を聞きました。今回は、そのことについて記事を書きました。
前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭 山形県立米沢東高等学校 教諭 高橋 英路
アウトプットの意義
アウトプットはなぜ大事なのでしょう?いくつかのメリットがあると思いますが、その中で特に大事だと考えたものをあげてみます。
(1)自分の理解を深められる
アウトプットするためには、自分の中で内容がしっかり理解・整理されていなければいけません。また、アウトプットしたことに対して質問や意見を受ける可能性もあるので、自分の持っている考えをさらに深めようとすると思います。これだけでもけっこうな労力ではありますが、一方的にインプットされる場合の何倍も身になるのではないでしょうか?
(2)客観的に振り返ることができる
アウトプットするために様々な資料やメモを作ってみると、その内容を客観的に見つめ直すことができます。いろいろやってみた、考えてみたんだけど、そもそもの目的は何だっけ?といったところに立ち返ることもできると思います。これらも、アウトプットの機会がなければ、そのまま見過ごされて、いつの間にか当初の目的を見失っている・・・なんてことになりかねません。
(3)自信になる
アウトプットして多くの人に伝えることができたという事実は、それだけでも、大なり小なり自信になると思います。(1)(2)の過程を経るだけでも、自分でも達成感を感じることができると思います。
(4)フィードバックがもらえる
自分でどんなに良い考えや実践などを持っていても、アウトプットがないと単なる自己満足になってしまう可能性があります。もっと良くなる方法があったり、自分では気づかない視点からの考え方があったり、誰かの考えと合わせることでパワーアップするなんてことも考えられます。アウトプットすることで、多くの人からそれに対するフィードバックをもらえるというのは最大のメリットではないでしょうか?
(5)発信力が高まる
あとは、アウトプットの経験を積めば、単純に自分の考えを伝える力は鍛えられると思います。より分かりやすい話し方、身振り手振り、例の出し方などなど・・・。
ということで、私なりに重要だと考えているものが以上の5つになりますが、これだけでもアウトプットする効果は十分ではないでしょうか??
生徒のアウトプット
さて、では、生徒にとってアウトプットの場は、どんなところにあるでしょう?
例えば・・・
(1)授業中
発言をする、黒板に書く、プリントに書く、模造紙にまとめる、パワーポイントにまとめる、まとめたものを発表する、グループ(ペア)の中で話す・・・
実にたくさんのチャンスがあると思います。ただ、これらの機会が保障されるかどうかは授業者の裁量になります。そのような機会を設けなければ、インプットだけで終わってしまうこともあります。アウトプットだけは授業は成り立ちませんが、学校にいる中で最も時間的な拘束が長いのが授業ですから、その中にいかに効果的に組み込むかは非常に重要だと思います。
(2)宿題
自分の考えをアウトプットできるような宿題・課題を与えることで、学校にいなくても十分な効果はあると思います。地域に飛び出して課題を見出して解決するような大々的なものから、授業で学習した内容に関連した問いに自らの考えを記述するといった簡易的なものまで、学校や生徒の事情に合わせて様々な形が考えられます。
(3)総合学習・発表会など
現在は、学校の枠内でも、「総合的な学習の時間」やSSH、SGH、専門学科の課題研究発表会など、発表の場はすごくたくさん準備されていると思います。こうしたところを積極的に活用している学校も多く、生徒たちにとっても良い学びの場となったり、大きな自信を得たりしているようです。ただ、こうした活動が、通常の教科・科目から切り離されたイベント的なものではなく、教科・科目の授業でその基盤となる力を身につけることが重要だと思います。
一昔前に比べれば、アウトプットの場は本当に増えていると思います。それをうまく活用できるかどうかは、教員の裁量による部分も大きいので、そこは力の見せ所かなと思います。
教員のアウトプット
(1)授業でアウトプット
教員にとっては普段の授業がまさにアウトプットの場と言えます。ただ、ここで大事なのは生徒の反応・声を聞かなかったら、アウトプットの大きなメリットは失われており、真にアウトプットしたとは言い難いと思うのです。
また、生徒に対しては常にアウトプットしていますが、研究授業・公開授業などで教員に見せることも大事なアウトプットです。せっかく考えた授業ですから、見てもらってコメントをもらうことは本当にためになります。特に、ありきたりな感想でなく、具体的に良いところや改善点を指摘してもらえるとありがたいです。自分で意図してやったものが効果的だったのか、自分の考えが及ばなかった視点はなかったのかなど、いろんな気づきを得ることができます。
(2)研究発表・実践発表
教育に関しては(教育に限りませんが)、官民問わず、様々な研修や勉強会などが開催されています。このようなイベントにたくさん参加している方も多いと思います。他方、そこで発表となると、なかなか勇気がいるのかもしれません。しかし、そういう場でこそ、やってみることで新たな気づきがたくさん生まれるし、自分の成長にもなり、それが自校に帰って生徒たちに還元されるんだと思います。
(3)同僚との談義
(2)にハードルの高さを感じるようであれば、同僚との職員室での談義もアウトプットの一つだと思います。普段の授業や生徒との面談の後に、短時間でも同僚と話し込むことで、次の指導に繋がるヒントが得られることも多いです。忙しい中ではなかなか時間が取れないかもしれませんが、自分でも意識してやっているところです。
ということで、アウトプットは勇気も必要ですが、それだけメリットのあるものなので、自分自身ももっとやっていこうという自戒も込め、記事を書いてみました。
高橋 英路(たかはし ひでみち)
前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭
山形県立米沢東高等学校 教諭
クラス担任と、地歴科で専門の地理を中心に授業を担当。生徒達の「主体的・対話的で深い学び」が実現できるよう、p4c(philosophy for children)やKP(紙芝居プレゼンテーション)法などの手法も取り入れながら日々の授業に取り組んでいます。
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