教員の仕事は多岐に渡ります。
担当している子どもの年齢や状況によっても違ってきます。
しかし、どの年代を担当しようとどの様な状況の子どもを担当しようと大事になることが「創造的な仕事をしているか?」ということです。「仕事をしているか?」ではありません。
「『創造的な』仕事をしているか?」です。
「創造的な仕事」とは、どういうものだと私が捉えているのかを説明します。
教師の仕事には、事務作業的な仕事がいくつもあります。
例えば、次のようなものです。
・集金を集め、その額を確認する。
・出席簿を付ける。
・アンケートの集計をする。
少し教育的要素が入ったものでは次のようなものがあります。
・教室環境を整える。
・子どもの提出した宿題のチェックをする。
私がイメージする「創造的な仕事」とは次のようなものです。
・次の日の授業をより良いものにするために思案する。
・子どもや地域の実態に合った教材教具を開発する。
・最新の教育理論を学ぶ。
・質の良い授業をたくさん見る。
・他の人に自分の授業を見てもらう。
・自分の実践を様々な形で公開していく。
・失敗したことの原因を探る。
これまで多くの若い先生たちと接してきました。
大学を出たばかりの人を何人も見てきました。
そういった中で感じることは、若い先生たちの仕事の質の低さです。
経験年数が少ないのは、当たり前です。
そういったことに起因することを言っているのではありません。
学生(お金を払っている立場)から社会人(お金をもらう立場)になり、「しっかりと仕事をしなければ」という思いから、「やった感」の強い仕事に多く取り組む傾向があるように感じます。
例えば、子どもが取り組んできた課題などへの対応です。
ある宿題のチェックに要した時間を5分だとします。
30人学級であれば、それだけで150分(2時間30分)も掛かることになります。
膨大な時間を要することになります。
帰る時間も遅くなりながら、それぞれの子どもの課題などを見て、忙しくしている自分にある部分で満足しています。
私の言い方では「やった感」が高くなっています。
確かに仕事はしているのですが、やり方にもよりますが、質は高くなく、トータルで見たときには、決してプラスではないような仕事のやり方です。
教員の仕事は、多岐に渡ります。
また、物理的に時間は有限でもあります。
一つのことに多くの時間を割くと、その分、他のことに時間を割くことができなくなります。
例に挙げた課題のチェックに膨大な時間を掛けてしまった場合、次の日の授業の準備などが疎かになる可能性が高くなります。
日々の授業の質の低下が懸念されます。
子どもの課題をチェックすることなどは、教師がエネルギーを掛けて行う仕事の中では優先順位が高い方ではないと思います。
情報機器の進歩により数年後には、子ども一人に一台タブレットを持つような状況になるかもしれません。
そうなった時、宿題の丸つけなどは、機械が自動的に行ってくれるようになるはずです。
それらは工夫が必要な仕事ではなく、作業的な要素の強い仕事だと言えます。
コンピューターやロボットの開発により、無くなっていく職種があるとされています。
車の自動運転化によりバスやタクシーの運転手の仕事が無くなっていくと予測されます。
こういったことが、学校教育にも影響を与えてくると思われます。
学校教育の中で人間と機械が住み分けが行われるでしょう。
単純な作業などは機械が担当し、人間は高度な思考などを必要とする仕事を行うようになるのでしょう。
現在、子どものノートなどのチェックに時間を割き、そこで留まっているような教員は、淘汰されてしまう可能性があります。
実は、一度、学校現場ではそれに似た状況が起こりました。
学校現場にパソコンが導入された時です。
教員全員がパソコンができることを求められるようになった時期、それに対応できないと感じた人達(特に年配の方)が何人も退職していきました。
それに似た状況が起こるかもしれません。
最後に改めて書きます。
「あなたは創造的な仕事が出来ていますか?」

鈴木 邦明(すずき くにあき)
帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師
神奈川県、埼玉県において公立小学校の教員を22年間務め、2017年4月から小田原短大保育学科特任講師、2018年4月から現職。子どもの心と体の健康をテーマに研究を進めている。
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