2015.07.14
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かむことについて考えよう~楽しい給食~ 【食と自立活動】[小3・自立活動]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第106回目の単元は「かむことについて考えよう~楽しい給食~」です。

日頃の生活を振り返り、噛むことを自覚することは大切なことです。よく噛んで食べることの大切さを知り、毎日の食生活に活かそうとする態度を育てるようにしたいものです。『ゆっくり よくかみ おおかみくん』(作/もとしたいづみ 絵/加藤 晃 メイト)の紙芝居を聞き、噛むことの大切さを学習した後、実際にパンや雑魚などを意識しながらしっかり噛むことによって、飲み込みやすくなることに気づかせる特別支援学級での1時間の授業を紹介します。

自分が噛んでいないことに気づかせる

本単元は全体で3時間です。1時間目は、給食時の行儀の良い食べ方や箸の使い方について話し合う。2時間目は「いただきます」の挨拶の意味を考え、食事を作って下さる人に感謝する気持ちを持つ。以上の時間を受けて、3時間目の本時の授業を始めました。

まず、自分の好きな食べ物について、おやつや給食、家の食事から話し合います。子ども達からは、カレーライス、スパゲティ、バナナ、ハンバーグ、クッキーなどが出てきました。

次に、
「カレーを食べるときは、どんなふうに食べる?」
 と質問し、実際にスプーンで食べる格好をさせます。これにより、自分がよく噛まずに飲み込んでいることに目を向けさせました。また、咀嚼する力が弱い子どもには、給食で「かつめし(地域特産の丼物)」が出たとき、なかなか噛みきれず、長い時間かかってやっと飲み込めたことを思い出させました。こうして、実際にやってみたり、給食を思い出したりしながら食べているときの様子を想像させ、あまり噛んでいないことに気づかせることができました。

『ゆっくり よくかみ おおかみくん』の紙芝居

次に、紙芝居を聞いて、噛むことについて考えます。この紙芝居は次のような内容です。

「給食の時間、お腹がペコペコのオオカミ君は、給食をよく噛まずに急いで食べて、食べ物がのどにつまってしまいます。それでも、一番に食べ終わり、急いで外に遊びに出ました。ヒツジさんやウサギさんはメニューもよくわからずに食べたオオカミ君にあきれています。すると、急にオオカミ君はお腹が痛くなり、よく噛まずに食べたことがいけなかったことに気づきます。次の日、オオカミ君はしっかり噛んで、給食を食べるととてもおいしいということがわかり、ニコニコ笑顔になりました」

紙芝居を聞いた後、オオカミ君のお腹が痛くなった理由を、紙芝居の絵や文章から考えさせます。続いて、オオカミ君がよく噛んで食べると食べ物がおいしくなることを知り、最後はのどにつまらせず、お腹も痛くならなかったことについてどう思うか、意見を出し合い、よく噛むことが体に良いということに気づかせました。

紙芝居を聞いた子ども達からは、次のような感想が出てきました。
「オオカミ君は、一度にたくさん食べたからお腹が痛くなったよ」。
「よく噛まずに飲み込んだから、お腹が痛くなったよ」。

噛むことの大切さを知る。

「オオカミ君は、よく噛んだから元気になったんだね」
 と、よく噛むとどんな良いことがあるのか、次の4点を絵にしたカードを使って説明します。子ども達は、噛むことの大切さを知ることができました。

1) 体に良い
2) 肥満を防ぐ
3) 頭が良くなる
4) 虫歯を防ぐ

続いて、子ども達の前で下の写真のように、歯の模型を動かし、口の中で噛んでいる様子を想像させました。

よく噛んで食べてみる

最後に、子ども達には、30回を目指してしっかり噛むように呼びかけます。1回、2回……30回まで、実際に教師が数えながらパンを咀嚼させます。
「口の中でドロドロになって、飲み込みやすくなった?」
 と尋ねた所、子ども達はうなずき、よく噛めば飲み込みやすくなることに気づいたようです。雑魚も同じように30回咀嚼させましたが、このときは、子ども達の方から、1回、2回……と数えて食べていました。そしてしっかり噛むことによって飲み込みやすくなることに気づくことができたようです。

子ども達の感想です。
「よく噛むと、口の中で食べ物が小さくなって、飲み込みやすくなるね」。
「よく噛むといいんだ」。

噛む体験を通して飲み込みやすくなることに気づき、しっかり噛もうとする意欲を育てることができました。本学級では、畑でとれた野菜を使って調理したり、お菓子を作ったりする機会が多いので、 会食をするときは本時の学習を活用して、しっかり噛むように声を掛けています。また、給食の時間は、特に咀嚼する力が弱い児童のそばについて、しっかり噛んで食べるように指導しています。

授業の展開例
  • 4年体育科の学習で、体がより良く成長するためには、よく噛んで食事をとることも大切であることを理解する学習に咀嚼を取り上げることができます。
  • よく噛むことをだ液の働きと関連づけて6年生の理科「消化と吸収」で扱うことができます。

渡邊 昭子(わたなべ あきこ 自閉・情緒障害児学級)

高橋 康代(たかはし やすよ 知的障害児学級)

実践時:兵庫県加古川市立東神吉小学校 教諭

兵庫県の食育研究指定校で、特別支援学級を担任している。家庭や地域と連携を深めながら、子ども達と共に、楽しい食育実践をテーマに研究を積み重ねている。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 准教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

監修:藤本勇二/文:渡邊昭子、高橋康代/イラスト:あべゆきえみうらし~まる〈黒板〉

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