丈夫な体を作るために 【食と健康】[小4・保健]
食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第九十七回目の単元は「丈夫な体を作るために」です。
どちらの骨が丈夫ですか?
ペットボトルで作った2本の骨模型を見せて、教師が質問しました。見た目には全く違いがわからない模型。子どもたちは思い思いに「左の骨!」「右の骨!」と手を挙げました。
「では、今からこの骨を実際に折ってもらおうと思います」
教師がそう言うと、子どもたちは大盛り上がり。「僕が!」「私が!」と手を挙げました。クラス全員の注目の中、教師の掛け声により、代表2名が模型を両手で持ち、力を込めます。すると、一方の模型は折れましたが、もう一方はどんなに力を込めても折れません。折れた方の子どもは得意気ですが、折れなかった方の子どもは不思議顔。見ていた子どもたちも少し不思議そうです。
教師が模型の周りの紙を剥がすと……、子どもたちは「あー!」と納得。
「どうして、左の骨は折れなかったのでしょう?」
と聞くと、
「だって詰まっている!」
と答えます。
「じゃあ、どうして右の骨は折れたのでしょう?」
とさらに聞くと、
「スカスカ!」
と子どもたち。そこで、
「骨はこのように詰まっていれば折れにくいですが、スカスカだと折れやすいのです」
と説明し、
「今、骨を見てもらいましたが、この折れにくい骨のように丈夫な体を作るためにはどのような生活をしたらいいのか、今日は考えてみましょう」
と教師がめあてを提示して本時の学習に入りました。
丈夫な体を作るためにどんな生活をしたらいいか?
「今から付箋紙を配ります。丈夫な体を作るために必要なことを一人でできるだけたくさん考えて、付箋紙1枚に一つ書いていきましょう」
と教師が指示し、付箋紙をもらった子どもたちは以下のように思いついたことをどんどん書いていきました。
- 魚の骨を食べる
- 外で元気に遊ぶ
- サラダを食べる
- ヘルシーなものを食べる
- 栄養バランスの良い食事をする
- カルシウムをとる
- 早寝早起きをする
- 太陽の光を浴びる
「それでは、これから班で付箋紙を集め、皆が考えたことを仲間分けします。画用紙を受け取ったら付箋紙を仲間分けして、見出しを付けてください」
という教師の説明を聞き、子どもたちは付箋紙を「運動!」「食べる!」等と言いながら以下のように分類していきました。
睡眠
- 睡眠をとる
- きっちり休む
- 決まった時間に寝る
- 休む
- 疲れをとる
- 決まった時間に起きる
食事
- 色々なものを食べる
- ご飯をたくさん食べる
- 赤黄緑を食べる
- バランスの良い食事をする
- 牛乳を飲む
- 水分補給
運動
- 外で元気よく遊ぶ
- 運動
その他
- 勉強に集中する
「各班仲間分けができたら、皆の前で発表をするので、誰がどこの仲間を発表するか決めてください」
と教師が言います。子どもたちは発表練習をし、各班画用紙を持って黒板の前で発表をします。
「睡眠については、きっちり休む、決まった時間に寝る等の意見が出ました」
「食事については、色々なものを食べる、バランスの良い食事をする等の意見が出ました」
「運動については、外で元気よく遊ぶ、運動する等の意見が出ました」
といった子どもたちの発表を、栄養教諭が黒板にまとめていきました。
詳しい説明を聞き、自分の生活を振り返る
全班の発表が終わった後、食事について栄養教諭が、運動・睡眠については担任が以下の内容を説明しました。子どもたちは図やグラフを見ながらしっかりと聞いていました。
【食事】
体の成長に大切な栄養素(炭水化物、たんぱく質、カルシウム、ビタミン)について、骨の成長と絡めて
【運動】
新体力テストの結果と普段の運動時間のアンケート調査のクロス集計
【睡眠】
成長ホルモンの出る時間帯についてのグラフ
授業の最後に学習のまとめとして「今日から取り組めること」を各自がワークシートに書いていきました。いくつか紹介します。
「朝ごはんや夜ごはんを食べるとき、ヨーグルトや牛乳を残しているからちゃんと食べて丈夫な体を作り、しっかり遊びたいです」。
「たくさんの種類の栄養をとって丈夫な体を作る。遅くても9時半までに寝る」。
「いつも寝る時刻は遅くて11時だけど、なるべく9時30分に寝ようと思います。ホルモンが9時にたくさん出ているので、やらないといけないと思いました」。
「夏休み毎日牛乳を飲む。黄のものをあまり食べなかったのでたくさん食べる。9月からも給食を残さず食べる」。
授業の展開例
- 「今日から取り組めること」を1週間実践した結果を報告し合いましょう。
- 「調和のとれた食事」「適切な運動」「休養および睡眠の良さ」を資料等で調べ・まとめて、プレゼンをしましょう。
永町 綾子(ながまち あやこ)
栄養教諭
他県での5年の経験を基に、昨年度より地元で働いています。今年度からは栄養教諭となり、責任をより深く感じると共に、前任者が築いた食育の土台をまずは維持、そして発展できるように取り組んでいます。
授業では子どもたちが「おもしろい!」「楽しい!」「やってみたい!」と思うことをできるだけ取り込めるように意識しています。
藤本勇二(ふじもと ゆうじ)
武庫川女子大学教育学部 教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。
ご意見・ご要望、お待ちしています!
この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)