2009.04.14
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塩の食べ比べをしよう 【食と暮らし】[小6・体育(保健領域)]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第三十三回目のテーマは「食と暮らし」。塩の食べ比べをしながら塩の大切さやその利用法に関心を持ちましょう。

塩分の摂り過ぎはいけない、塩は生きるためには大切、汗をかくと塩が残る、塩水でうがいをする……など、私たちの暮らしには塩は身近な存在です。もちろ ん、子どもたちにとっても同じこと。5年生の理科の学習では、「ものの溶け方」で塩を溶かした経験もあります。子どもたちが大好きなスナック菓子には塩味 が効いているものがたくさんあります。そこで、塩の大切さや人間とのかかわりに関心を向けてもらうきっかけとして、塩の食べ比べをします。6年生の体育 (保健領域)の学習で1時間ほど取り上げました。

2種類の塩を用意する

精製塩とその他の塩の2種類を用意します。一般的な塩が精製塩です。精製塩はイオン交換膜法で、化学的に作られています。一方、天然塩・自然塩・自 然海塩・粗塩などと表示されている塩は、天日乾燥や煮詰めるなどの方法で作られます。健康ブームに合わせ、食品売り場に多く並ぶようになりました。苦味や 甘味があります。それぞれをアルミのカップに入れてお盆に用意しておきます。

≪備考≫「食用塩公正競争規約:食用塩公正取引協議会 (平成21年2月発行)」によれば、表示に自然塩、自然海塩、天然塩などの言葉は使えません。こうした言葉が商品に使われるのは、販売業者が独自の定義で 使用しているというのが現状のようです。ここでは、塩の違いに着目させるために、「自然塩」という名前で「その他の塩」として授業に取り上げました。

塩といえば?

「塩から思いつくことってどんなことですか」
と聞きます。
「白い」
「海」
「塩ラーメン」
「塩鮭」
「おにぎり」
「フライドポテト」
など、子どもたちは思いつくまま自由に答えます。

 その後、身近なところで塩が使われていることや、塩がないと食物がおいしくないこと、調味料としての塩の重要性について話します。

「ここに2種類の塩があります。違いを見きわめてもらいます。ところでソムリエって知っていますか」
「はい。ワインの鑑定をする人です」
子どもたちの発言を受けて、ソムリエの話やテイスティングという言葉(外観をチェックしたり、色を見たり、香りを嗅いだり、口に含んだときの舌触りを確か めたりすること)の意味について話します。こうした話をすると子どもたちのやる気がさらに盛り上がります。

塩の食べ比べをする

塩のテイスティング

子どもたちはすぐに塩を食べ比べようとしますが、まだ食べ比べません。最初に食べ比べる観点を決めます。色や見た目、手触り、味や食感・香りなどの点から比べることを話し合いで決定しました。ここで、ようやく塩をテイスティングします。

「こっちの塩は、しょっぱい!」
「あれっ、ちょっと味が違うよ」
子どもたちは気づいたことをカードに記入しながらにぎやかに話し合います。

 子どもたちのカードには次のように記入されています。

【色や見た目】
精製塩:真っ白、粒が小さい
自然塩:少しにごっている感じ、柔らかそう、海でとれたてのような感じがする

【手触り】
精製塩:さらさらしている
自然塩:湿っている、ふわっとしている、固まっている

【味】
自然塩:精製塩よりも溶けるのが早い、すっぱくてからい、味が濃い、しばらく味が口に残る、後味が残る、海の水を飲んだときのしょっぱさがある

 続いて、スーパーで購入した5種類の塩を見せます。 「同じ塩でも、こんなにたくさんの種類があります」
と話すと、
「スーパーマーケットにもいろんな塩がいっぱい並んでいました」
「母さんがどの塩にしようかと話していました」
といった発言が出てきました。塩の専売制度が廃止され、自由に塩の製造販売ができるようになり、国内外の様々な塩が売られ始めたこと、塩は人間が生きていくのに欠かせない働きをしていることを説明しました。

「でも、生きていくのに欠かせない塩も、摂り過ぎると体のためになりません。どれくらいの量を摂るといいのか、また上手に摂るための工夫について次の時間に勉強しましょう」
と次の時間の予告をして、生活習慣病の予防の学習につなげました。

授業の展開例
  • かまぼこやうどん、マヨネーズやケチャップなど、意外な食べ物に塩が入っています。塩の入っている食べ物を探してみましょう。
  • 塩は人間との付き合いも長いので、塩の大切さや身近さは様々な言葉の中に生きています。「青菜に塩」「敵に塩を送る」など塩にまつわることわざを集めてみましょう。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 准教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

文:藤本勇二 イラスト:あべゆきえみうらし~まる〈黒板〉

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