2022.03.30
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ス米ル(スマイル)プロジェクト2021~めざせ、ムダ 0 日本一の甘地米~ 【食とSDGs・ICT】[5年・総合的な学習の時間]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイデア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。
第182回目の単元は「ス米ルプロジェクト2021~めざせ、ムダ 0 日本一の甘地米~」です。

授業情報

テーマ:食とSDGs・ICT

教科:総合的な学習の時間

学年:5年

ICTを活用した食育

「米と特産品のス米ルアイデア」の掲示物

兵庫県市川町立甘地小学校では、令和2年度末に一人1台端末が整備されました。各学年では、発達段階に応じて各教科の授業や調べ学習、係活動など様々な場面での活用を進めています。高学年の子どもたちはタブレット端末の扱いにも慣れて、“学習ツールの一つ”として活用することで、より積極的に学習活動を行うことができてきました。
食育においてもICTを活用することで、画像や動画、離れた地域の情報などを学びの中に取り入れることができるようになりました。今回は本校5年生が行った総合的な学習の時間「ス米ル(スマイル)プロジェクト2021~めざせ、ムダ 0 日本一の甘地米~」の取組についてご紹介します。

実施の背景

グループで考えた「稲わら・もみがら・ぬかのよさ」

本校区には、2級河川・市川の支流に自然豊かな田園地帯が広がっています。しかし、子どもたちに行った食育アンケートでは、栽培・調理などの体験的な活動が少なく、育てる・収獲する・調理するなどの喜びとともに生産者の思いや工夫を学ぶ機会が少ないという結果が出ました。さらに、地域の特産物についての知識が少ない子どもや、郷土料理に触れる機会が少ない子どもが多いことも分かりました。

本校の5年生は総合的な学習の時間で、「米」をテーマに学習に取り組んできました。バケツ稲の栽培を通して地域の方とのつながりをもつことができたり、稲について調べることで米づくりの中で生み出されるものについて考えたりすることができました。また、米づくりと地域の特産物との融合を考えることで、甘地の米を日本一にすることについて思いを巡らせることができると考え、今回の授業実施となりました。

授業のねらい

総合:甘地の米をムダ0日本一の米にするために、米や残さ物と地域の特産物とのコラボアイデアを意欲的に考えることができる。

食育:米を通して日本の伝統的な食文化に興味・関心をもち、地域の米づくりを持続的に行っていくために必要なことについて気付くことができる。(食文化)

これまでの授業

Jambordを使用して、アイデアを出し合っている様子

まず、課題の設定として「ス米ルプロジェクト2021」の計画を立てました。ウェビングマップを用いて「米」について思い当たることを書き出し整理しました。その中で、米づくりについて疑問や気づきを全体で共有することができました。「ス米ルプロジェクト」という名称にしたのは、自分たちの食生活で一番身近な米を通して、作る人も食べる人も、今を生きる人も未来を生きる人も、みんなが笑顔になれることを考えていこうという思いからです。

次に、情報の収集、整理・分析の段階では、「お米について知ろう」と題して、米はどのように作られるのかを調べたり、実際にバケツ稲の栽培に挑戦したり、米や残さ物の活用法を調べと地域の特産品調べを行いました。

それから米・米粉と市川町の特産物とのコラボアイデア「ス米ルアイデア」について考えました。米・米粉のよさを確認してから、Google Jamboard(デジタルホワイトボード)を使用して、米・米粉のよさを生かしたアイデアを一人ずつ出し合いました。今までの学習や自主学習で調べてきたことを根拠として、地域の特産物とのコラボアイデをたくさん考えることができました。考えを出し合った後は、グループのJambordを全体で見合いながら、5年生の「米のス米ルアイデア」を交流しました。

本時

Jambordで出し合ったス米ルアイデア

甘地の米をムダ0日本一にするための、稲わら・もみがら・ぬかの「ス米ルアイデア」を考えました。まず、前時に行なった「米のス米ルアイデア」についてふり返りを行いました。そして、米の特徴や地域の特産物とのつながりも確認しました。

次に、本時で取り上げる稲わら・もみがら・ぬかのよさについてグループで調べてきたことを全体で確認しました。「工芸品の材料になる」「固めて製品の材料になる」「いろいろな料理に使える」など、他の地域でどんな活用がされているかをグループの代表が発表して交流しました。
さらに、前時同様Jambordを使用して、稲わら・もみがら・ぬかグループに分かれて、ス米ルアイデアを出し合いました。子どもたちは、「稲わらを田隅養鶏場で鶏のえさに使う」「もみがらを固めてリフレッシュパーク市川でBBQの燃料にする」「ぬかをせせらぎの湯で入浴剤に使う」など地域の特産物とコラボしたアイデアを考え出すことができました。
また「もみがらを肥料にして作った土を町内に配る」というアイデアも出され、地域とのつながりを意識している子もいました。

最後に、次の時間は何をするかを問いました。子どもたちからは「考え出したス米ルアイデアが実現可能かどうかを考えたい」という意見が出ました。そこで、次時は子どもたちが考え出したアイデアを「実現可能か」というものさしで吟味する計画を立てて、授業を終わりました。

児童の感想

Googleフォームで集計した児童のふり返り

学習のふり返りは、Googleフォームを使用して記録しました。

児童の感想では、米や米づくりの中で生み出されるものに関心を持ち、進んで調べ学習や話し合い活動に取り組めたことが分かりました。また、自分たちの町の特産品とのコラボアイデアを考える中で、米づくりの無駄を減らしたいという意識も高まり、地域とのつながりだけでなく環境とのつながりも感じられ、SGDsへ目を向けるきっかけになったようです。

・米や米粉で様々な食べ物を作れると知りました。

・米粉にはこんなに栄養があるんだなと思いました。

・甘地のお米はいろんなことに使えるので、いろいろな所でコラボできそうです。

・もっとお米や米粉のコラボできる方法を考えたいです。

・ぬかは、スキンケアやいろいろなことに使えることがある。

・稲わらは、汎用性がある。

・もみがらをカブトムシの土に使えるか実際にやってみたい。

・実現できることは実現してみたい。

・普段捨ててしまうものでもいろんなことに使えることが分かりました。これからは、無駄なくいろんなことに使いたいです。

授業は、その後子どもたちと実現可能な「ス米ルアイデア」の吟味を行いました。その中で実現の可能性がありそうなものについては、子どもたちがPRプレゼンを制作して市川町役場地域振興課の方へプレゼンをする予定でしたが、コロナ流行のため実現できなかったことが残念です。

ICTを活用した学習の成果と課題

今回、Jambordを使用してアイデアを出し合う活動を実施することで、児童一人ひとりが主体的に考えを持つことができました。これまでは、発表形式で順番に意見を出していく一斉授業や付箋紙を使ったグループ学習を実施していました。Jambordを使用することで、児童は友だちの思考過程や考えを目の前にある画面で見ることができ、それを参考にしながらより意見を持ちやすくなったようです。学級全体としては個人差があっても、一つの学習に一人ひとりが自分のペースや能力に応じて取り組めたのも成果だと考えます。

また、ふり返りに使用したGoogleフォームでは、即時に入力結果をグラフ化できます。児童のふり返りをその場で共有できるので、本時のがんばりをみんなで認め合ったり次の時間のめあてを確認したりすることもできました。

今回の実践で使用したJambordとGoogeフォームは、他学年・他教科でも新たな学びを提供できるツールです。今後も学校全体でICTの活用法を考えながら、児童一人一人の学びを保障できるように実践を重ねていきたいと思います。

松原秀樹

兵庫県 市川町立甘地小学校5年1組担任。

授業づくりでは、自分たちの生活や自分たちの地域を生かした学習課題の設定をめざしています。今後もICTを子どもたちの思考や活動を助ける道具として有効活用しながら、子どもたちが自ら考えを生み出す学習を模索していきたいです。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 准教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

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