2022.03.23
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学びの場.com開設20周年に寄せて 長年お世話になっている4名の先生に伺いました!

2001年11月に開設された学びの場.comは、今年21年目を迎えました。不易流行と言いますが、20年前の記事でも10年前の記事でもアクセスがあります。2007年に始まった人気コンテンツ「教育つれづれ日誌」執筆者となった方もおかげさまで100名を超えました。今回、その中から寄稿数上位4名の先生方に伺いました。

Q1.自己紹介をお願いします。

菊池 健一 先生(以下、菊池) 教員生活23年目になります、さいたま市立植竹小学校教諭の菊池健一です。勤務校では、NIE(新聞活用)担当として、新聞を活用した授業づくりについて研究しています。また、日本新聞協会認定「NIEアドバイザー」として主に埼玉県の新聞教育にかかわる仕事をしています。新聞を授業に生かして、児童に読解力を身につけさせたり、学習への関心を高めたりするための取組を行っています。

NIEの他に、国語辞典を活用した「辞書引き学習」にも取り組んでいます。国語辞典を様々な教科で活用し、子どもたちの語彙力を伸ばす取り組みも行っています。菊池学級では常に国語辞典を身近に置き、分からない言葉や調べたい言葉があるとすぐに調べるようにしています。

また、11年前の東日本大震災後から、毎年、担当する学年で震災や防災を取り上げた授業づくりをしています。授業づくりのために、毎年2回ほど被災地を訪ね、教材研究にも取り組んでいます。実践は「学びの場.com」でも紹介していただいています。今年度で実践は11年目になります。被災地を取材した新聞記者や被災地で語り部をされている方と連携しながら実践を行っています。

以上の3本柱で教育実践に勤める今日この頃です。私自身、子どもたちと共に学ぶという気持ちで授業づくりを行う毎日です。

荒畑 美貴子 先生(以下、荒畑) 長年に渡って小学校の教師を努める傍ら、NPO法人の活動として発達障害のある子どもたちや、不登校の子どもたちの支援のための相談活動を行ってきました。学びの場のつれづれ日誌への投稿も、10年以上続けています。そこからのご縁もあり、光村図書出版の道徳教科書の編集委員をやらせていただいたり、明治図書出版や音楽之友社、小学館などの教育雑誌にも投稿させていただいたりしています。

鈴木 邦明 先生(以下、鈴木) 現在、帝京平成大学で教員養成に携わっている鈴木邦明と申します。大学で教える前は、神奈川県横浜市、埼玉県深谷市で22年間、小学校の教員をしていました。2011年10月から2018年9月までの7年間、教育つれづれ日誌を執筆していました。

関田 聖和 先生(以下、関田) 兵庫県の小学校で教頭をしています。公認心理師、特別支援教育スーパーバイザーです。ICTを使った授業、書くこと、通常の学級における特別支援教育の視点の3つを柱にして実践を積んできました。最近では、他校の授業を参観させてもらったり、校内研修や自治体の研修に入らせてもらったりしています。

Q2.学びの場.comとの出会いについて教えてください。

菊池 17年前に「学びの場.com」に出会いました。New Education Expoのイベントに参加した際に、サイトのチラシをいただいたのがきっかけです。当時は、教員になって4年目で毎週のように教育関係の研修会やイベントに参加していました。その頃にこのサイトを知り、よく閲覧するようになりました。最初は主に教育関係の研修会やイベントなどを検索するのに活用していました。そして、徐々に様々なコーナーを閲覧するようになりました。サイトの中に指導案を紹介していただけるコーナーを見つけて自分の行った授業の指導案を投稿したのが、「学びの場.com」でのアウトプットのスタートです。その後、様々な実践や取り組みについて紹介していただきました。

荒畑 ふとしたきっかけで、執筆者募集を目にしました。しかし、そのことを忘れてしまっていたのです。数ヶ月後に、書いてほしいという依頼が来たときには、正直驚きました。当時は、ネット上の投稿が今ほど一般的ではなく、ブログなどが主流でした。その直後には、東京で教師をしているというご縁から授業の取材も受けて、当時の編集長ともお会いし、親交を深めることができました。

鈴木 小学校の教員時代に教材準備などでネットを調べていた時に見つけました。教育つれづれ日誌の執筆者に応募し、定期的に執筆するようになりました。

関田 出合ったきっかけは、よく覚えていませんが、読んでいるうちに、教師修業の場の一つとして、執筆を応募しました。一度、落ちましたが……(苦笑)

Q3.先生にとって、学びの場.comとは何ですか。

菊池 常に私の教師人生を並走してくれているパートナーのように思っています。「コンピテンシーとは?」「21世紀型学力とは?」など、なかなか自分では勉強しにくいこともサイトでわかりやすくまとめてくださり、普段から情報収集のために活用させていただいています。「学びの場.com」で学んだことを生かして、さらに詳しく学ぶことができています。また、アウトプットの面では、私がこれまで行ってきた実践を広く紹介していただいており、私の教師人生の成果がほぼすべてこの「学びの場.com」の中に収められています。月に2回ぐらいの頻度で拙いレポートですが、紹介をいただいています。そのような意味で、「学びの場.com」は私にとって教師人生を並走するパートナーであり、必要な情報や自分の貴重な実践が納められている「蔵」のような存在です。

荒畑 私が教育に対して思っていること、変わってほしいと願っていることを、綴り続けるきっかけをくれた場であると思っています。また、一読者として刺激を受けたり、情報をいただいたりする場として、長い間私のブレインのような存在です。

鈴木 執筆していた頃は、自分の考えを整理する場でした。文章化する中で、その時の実践や考えていたことなどが整理されていきました。また、現在は教員を目指す学生に対して、私の実践などを紹介する際にデータベースのようなものとしてとても役立っています。

また、執筆する中でたくさんの先生方と知り合うことができました。実際に会うことのできた先生もいましたし、SNS上で情報交換をしている先生もいます。様々な校種、地域の先生方と知り合うことができました。大きな財産です。

関田 教師修業の場ととらえていました。発信したことへの反応が、まわりまわって自身のところに返ってきたからです。いつも、まだまだだなあと感じていました。

Q4.20年前と比べて、また先生が教育つれづれ日誌に連載を始めた頃と比べて、学校はどのように変わってきたと感じますか。

菊池 私が教員になった23年前はちょうど、いわゆる「ゆとり教育」が始まる頃でした。総合的な学習の時間がスタートし、学校週5日制ももうすぐ毎週実施になる頃でした。数年前に、当時文部科学省のスポークスマンであった寺脇研先生(現在、映画プロデューサー・京都芸術大学客員教授)と研修会で何度もご一緒し、「ゆとり教育」についてのお話を伺いました。「これからの教育は生涯学習を念頭に置いて行われなくてはならい。」というお言葉に感銘を受け、私も児童の指導に生かしてきました。寺脇先生とはそれから、総合的な学習の時間の研修会などを通して、ご指導いただいてきました。しかし、その後すぐに、「ゆとり教育」への批判から授業時数が増えたり、「キャリア教育」「SDGs」「STEAM教育」など様々な課題が増えたりしており、少し学校が忙しくなってきているように思います。

しかし、私の教員になったころよりも大変若い先生が増え、学校が活気づいてきたこともよい点として挙げられます。私が教員になったころには20代の教員が私1人だけでした。先輩の先生方からたくさんのことを学びながら、様々な学校の重要な仕事にも携わらせていただきました。しかし、同世代の仲間があまりできずに、教員としての悩みなどを相談できないことがありました。しかし、今は若い先生が増えてきました。多くの仲間に囲まれて楽しく仕事をされています。バイタリティーもあり、教材研究にも積極的に取り組む若い先生が多いという印象です。私も長い間学校で「研修主任」という仕事をしてきました。学校の課題研究を推進する仕事です。その仕事を遂行するために、いつも若い先生に助けてもらっていました。研究授業を引き受けてもらうことはもちろん、資料の準備や研修会の会場準備など、進んで仕事をしてくれました。若い先生が増えてきたということは、頼りになるベテランの先生が減ってきたということでもありますが、若い力で学校全体が活気づき、バイタリティーがあふれるようになったと感じています。私自身は、いつも同僚に恵まれ楽しく学校での仕事をすることができています。大変ありがたいことであると感じています。

荒畑 学校の変化について、3つの視点から感じたことを書いてみたいと思います。

ひとつは、教師の変化です。20年前は、発達障害という概念ができ始めた時期で、子どもの発達に関して鈍感であったと思います。例えば、「泣いてばかりいる子ども」「勉強ができない子ども」のような捉え方はできても、そこに困難さというイメージはなかったのです。しかし、今の若い先生たちは、そういった視点をもっていて、頼もしいと思うことがあります。保護者に、適切に話をする姿も見られます。

しかし一方で、小さくまとまってしまっているといった様子を危惧しています。保護者の視線を極端に意識して、教育活動を行なっているような側面もあるのではないでしょうか。

ふたつ目は、子どもの変化です。言うまでもなく、発達障害があるのではないかと感じる子どもたちが増えました。支援するにも、大きな苦労を伴うことも多くなってきたように感じます。どうしてそのような変化があったのかという点は、専門家の分析に任せたいと思いますが、家庭の教育力の低下というのも否めないと思います。

最後に保護者の変化です。子育てに正解はないので比較はできないのですが、不安な気持ちで子どもに関わる保護者が多いように思います。その不安が、教師への苦情となっている図式があるかもしれません。逆に、教育への関心が薄く、親の生活が真っ先といった感じも受けます。仕事に没頭することで子どもから目を背けたり、我が子のことを客観的に見ることができなかったりする保護者にも出会うことがあります。

鈴木 変わらないものと変わったものがあると感じています。

変わらないものとしては、1人1人の子どもを大切にすること、誠実に対応することなどがあります。きっとこれまでも、これからも変わらない部分だと思います。

変わったものとしては、電子機器に関するものです。GIGAスクール構想による1人1台端末は、学校の姿を大きく変えました。これは明治初期に近代学校システムが日本において出来上がった時以来の大きな変化だと感じています。

関田 さらに忙しくなった!(笑)けれど、働き方を見直そうという動きが出てきたことは嬉しいことです。

Q5.教職を目指す学生~ベテラン教員まで色々な読者に向けて、学びの場.comの活用法を教えてください。

菊池 私自身、「学びの場.com」の活用法として、主に3つを行っています。まずは情報源としての活用です。サイトでは、「授業実践リポート」や「教育ウオッチ」、「教育インタビュー」などで、教育の最新情報を提供してくださっています。教員は普段はなかなか文部科学省の資料などを読んで勉強する時間が限られています。答申などの原文を読んで学ぶことも大切ですが、そのエッセンスをこれらのコーナーで学ぶことができます。効率よく必要な情報を得ることができます。

 次に、発信する場としての活用です。私は15年間「教育つれづれ日誌」に拙いながらもエッセイを寄稿してきました。もうすぐ300回になります。今読み返すと、その時その時に取り組んできた実践について懐かしく思い出すと同時に、これからの実践のヒントも得ることができます。また、10年ほど前から、東日本大震災を取り上げた実践を「震災を忘れない」のコーナーで紹介いただいています。震災や防災を授業で取り上げることで、本当の意味で子どもたちの防災意識を高めることができることを全国に訴えたいと思ってレポートを書いています。自分の考えを発信する場をいただけることも「学びの場.com」を活用する醍醐味だと考えています。

 3つ目は、多くの出会いの場にもなるということです。サイトにはたくさんの先生方が登場されます。様々な分野で活躍されている先生ばかりです。現在はSNSなども発達し、直接コンタクトをとることもできます。私も「教育つれづれ日誌」の同じ執筆者の先生と交流を持ち、授業を見せていただきに行ったり授業のことを相談したりしています。新しい出会いがあるのもこのサイトを活用する醍醐味です。

 教職を目指す学生の皆さんはぜひ、教育情報の収集や全国の先生方の実践を知ることでたくさん活用していただきたいと思います。そしてベテランの先生方はサイトへの投稿によって、ぜひ指導法をたくさん紹介してほしいと思っています。たくさんの素晴らしい先生方が集まっているのがこの「学びの場.com」の特徴であると思います。これからさらに、サイトを活用している先生方が相互作用的に情報交換をしていけるようになることを願っています。私も微力ながらアイディアを出していくつもりです。

荒畑 最先端の教育の情報を得る場として、ぜひ活用していただきたいと思います。また、つれづれ日誌などを通して、具体的なスキルを身に付けたり、先輩教師の苦労に共感したりしてもらえればと思います。

鈴木 私は現在、小学校や特別支援学校で働くことを目指す学生と関わっています。学生たちはどうしても経験が足りないという面があります。学生たちが学びの場.comのようなメディアに触れ、様々な情報に触れることはとても意味があることだと感じています。

関田 ここでの発信がすべてではなく、こういう考え方もあるんだなあって、とらえてもらえればいいのかなと考えています。さらなるヒントを得たいとき、ちょっと元気を出したい、もらいたいとき、しんどくなったときに、飲み物を片手に、ゆっくりと読んでもらえたらなと考えています。

Q6.今後、学びの場.comに期待することを教えてください。

菊池 これまで通り、私たちにとって、子どもたちを指導する上で有益な情報をたくさん発信していただきたいと思います。また、いろんな学校・先生の実践をたくさん取り上げていただければと思っています。「学びの場.com」を活用し始めたころ、「教育つれづれ日誌」の執筆者によるオフラインミーティングのようなものがありました。ミーティングを通して、たくさんの先生と知り合うことができました。今でもそこで知り合った先生から学ばせていただいています。「学びの場.com」のサイトを活用して、様々な方と出会える機会をいただけたらと思います。サイトを活用している先生たちが集まって行う研修会や発表会などできないかなと考えています。普段は情報交換をすることが少ない他の都道府県の先生方とのつながりを「学びの場.com」を通して作っていきたいと考えています。

今回、改めて「学びの場.com」のサイトを隅から隅まで拝見しました。これまではあまり活用しなかった、「算数の教え上手」や「科学夜話」など、初めて見るコーナーもありました。まだまだサイトを活用しきれていないことに気づきました。これからも「学びの場.com」のファンとして、サイトを活用していきたいと思います。そして、自分自身の授業力の向上を図っていきたいと思っております。今度ともよろしくお願いいたします。最後になりますが、「学びの場.com」開設20周年、誠におめでとうございます。今後のますますの発展をお祈りいたします。

荒畑 教師や出版社などが読んでくれているというのは、以前から教えてもらっていました。しかし、保護者や教育に関心のある人たちにも、ぜひ読んで欲しいと思っています。そのための宣伝にも、ぜひ力を入れてください。

鈴木 学校や社会の変化に応じて、その時その時に必要とされるものを情報発信していって欲しいです。

関田 お気に入り記事をストックできるなんてこともできると面白いですね。また、どこかで書かせてもらいたいです!

学びの場.com お忙しい中、本当にありがとうございました。開設30周年に向けて、今後とも学びの場.comをよろしくお願いいたします。

企画:学びの場.com編集部

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