2021.08.16
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意外と知らない環境作り~特別支援教育の視点から~(第3回) すぐに実践できる環境作りの事例を紹介

2012年に文部科学省が実施した「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」では、「知的発達に遅れはないものの学習面又は行動面で著しい困難を示す」通常の学級に在籍する児童生徒の割合は6.5%という結果でした。この数値は担任教員が記入し、特別支援教育コーディネーターまたは教頭(副校長)による確認を経て提出した回答に基づくものであり、医師の診断によるものではありませんが、発達障害があり、困り感を有する児童生徒は相当数存在すると考えられます。

通常学級においては、一人ひとりのニーズに応じた指導がしたくても、第2回で紹介したような「刺激を低減するために個別のパーテーションで区切る」「活動と場所を1対1で対応させるため、教室のレイアウトを変更する」といった環境整備は、実際には個別に対応することが難しい場合も多いと思います。そこで第3回では「構造化」を意識した、少しの配慮や工夫で実践できる環境づくりの具体例を紹介していきます。

黒板の整理

掲示物が、児童生徒に興味や関心を持ってほしい情報を示し続けていると、そちらばかり気になってしまう。

黒板の周辺にさまざまな掲示物を貼ったり、その時間に不必要な情報を書いたりしておくことは、学習への集中を妨げる視覚的な刺激になってしまうことがあります。学びやすい学習環境づくりには、刺激を軽減することが重要です。特に発達障害のある視覚的に反応しやすい児童生徒は、黒板周辺の掲示物の整理とともに、掲示位置の工夫などが有効です。

ポイント
  • 必要のない情報は消す
  • 掲示物は教室の後面や側面に貼り、前面黒板には貼らない
  • どうしても黒板周りに取り外せないものがある、または前面に提示の必要がある場合は覆いをかけて視界に入りにくくしたり、必要のないときにはとり外したりする。

座席の配置

配置例

大阪市教育委員会『校内及び教室内環境のユニバーサルデザイン化のためのリーフレット』4ページの図をもとに作成

友達の私語など、さまざまな刺激に反応しやすい発達障害のある児童生徒は、教室の前の方に座らせることが有効な場合があります。人から話しかけられるといった刺激に反応しやすい児童生徒の場合は、そのような相手が視界に入らないようにしたり、先生の指示や説明が伝わりやすいように配慮・工夫したりすることが必要です。

「なにを」「どのように」するかをわかりやすくするために、姿勢が良く、聞き方や話し方が上手な行動の基準となる児童生徒を周囲に配置することも工夫の一つです。また、配慮が必要な児童生徒を前に座らせておくことで、混乱してしまうような場面で個別に関わりが必要なときにすぐに支援にいくことができます。

整理整頓

整理整頓には、プリント類や文具などを探す時間を減らし、学習を効率的に進める効果があります。また、発達障害のある児童生徒は変化が苦手な特性があり、学級内で使うものの置き場所が日によって変わると、不安になったりイライラしたりするなど、教室が落ち着かない場所となってしまうことがあります。校内・教室内の置き場を決めるために、「何を」「どこに」「どのように」置けば良いのかを誰が見てもすぐに分かるように、視覚的に伝える工夫・配慮をすることが必要です。

  • 靴のかかとをそろえて置けるように、合わせるラインを示す。

  • 何をどこに置くか、カゴやラベルを準備して、わかりやすく示す。

ルールの示し方

学校には、集団生活を安心・安全に過ごすためのルールがあり、そのルールが明確に示され、しっかりと守られている学級では、授業や集団行動において、児童生徒が安心して過ごすことができます。学校生活のさまざまな場面において、児童生徒がその場に適したルールを身につけるためには、「どのような場面で」「どのようにすれば良いのか」といったことをわかりやすく伝える必要があります。そのためには、ルールを明確に示すことが重要です。「○○してはいけない」という禁止や否定のルール表現に代わり、「なにをするのか」そのために「どういうことがよいのか」を具体的に示すことが大切です。

個に応じた支援・配慮の重要性

一日の流れの例

ここまでで紹介したようなやり方で学級環境を整えたり、授業の進め方を工夫したりしても、児童生徒の困っている状況や問題とされる行動を改善できない場合もあります。そのときは、一人ひとりの特性を踏まえ、個に応じた支援・配慮を行うことが必要です。構造化は一人ひとりに合わせることが大切であり、その最初のステップは児童生徒一人ひとりのことをよく知ることです。学校での様子を観察したり、保護者から家庭での様子を聞いたりして、その子は何が得意なのか、何に困っているのかを知り、支援につなげていきます。

今回著者が訪問させていただいた「放課後等デイサービス子笑(こえみ)」では、アセスメントを非常に重視しており、学校・保護者と連携しながら一人ひとりに適した環境づくりを行っています。例えば、一日の流れをわかりやすく示すとしても、写真の例のように一人ひとりに合わせたやり方で示すように工夫されています。文字で示すのが良いのか、写真があった方がよいのか、写真ではなくイラストの方が良いのか、などを職員の方々で検討することで、個人に適した支援を行っています。

3回にわたって、特別支援の視点を踏まえた環境づくりについて紹介してきました。冒頭でも述べたとおり、最初から一人ひとりに適した支援を行っていくことは難しいこともあるかもしれません。まずは学級・学校全体の環境を整えたうえで、段階を踏んで個別ニーズに応じた合理的配慮を行い、平等な教育機会を提供できるような支援につなげていただく参考になればと思います。

構成・文・写真:内田洋行教育総合研究所 研究員 大澤 柚子

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