2005.04.13
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お金や投資について学ぶ2日間 「キッズ・マーケット・キャンプ」

2日間にわたる授業で、子どもにお金や投資について学んでもらう「キッズ・マーケット・キャンプ」が、3月29日(火)・30日(水)、東京の早稲田大学日本橋校で開催された。前回は昨年8月23日~25日に行われ、今回で2回目となる、このイベントは、早稲田大学日本橋校、メリルリンチ日本証券株式会社、NPO法人金融知力普及協会の主催によるもので、1日目は講師による2時間の授業とお金に深く関わる場所の見学、2日目は4時間の授業で構成されている。

開講宣言を行うメリルリンチ日本証券の小林社長
開校宣言を行う
メリルリンチ日本証券の
小林社長

6つのチームに分かれて自己紹介
 「キッズ・マーケット・キャンプ」に参加するため、会場となった早稲田大学日本橋校に集まったのは、小学校5年から中学1年の児童・生徒約30名。子どもたちは5人ずつ6つのチームに分けられたが、それぞれのチームの名前は、チーム・ドル、チーム・ユーロ、チーム・ポンドといった感じで、全てお金の単位が付けられたものだった。

まず、開校宣言を行ったのはメリルリンチ日本証券の小林いずみ社長。「この2日間で、生活とお金の関わりを学んで新しい発見をしてください。何か答えを出すというのではなく、疑問をいっぱい増やすことがキャンプの目的です」との言葉で、2日間のキャンプは幕を開けた。

子どもたちは、2日間で6時間の授業を受けることになるが、最初の授業を始める前にオープニングガイダンスとして、まずはスケジュールが説明された。続いて行われたのが、参加した子どもたちの自己紹介。それぞれのチームには、子どもたちをサポートしてくれる大人のボランティアが付いているが、なれない場所で緊張している子どもたちをリラックスさせて、うまく話を聞き出していくのもボランティアの役目。最初は小さな声で自分の名前を言っていた子どもたちだが、段々と笑顔を交えながら、自分の特技や、学校や家のことを話せるようになっていった。

自分の将来の目標と、そのために必要なお金を考える
 

  子どもたちが互いに打ち解けたところで、1時間目の授業を開始。この2日間で講師となって授業を行うのは、ファイナンシャル・プランナーの伊藤宏一さん。伊藤さんは個人のマネー相談の他にも、企業等でライフプランセミナーを開催している。そうした知識や経験を活かして、子どもにもお金や株式のことが分かるように、身近な実例を交えながら説明していった。 講師を務めた伊藤宏一さん
講師をつとめたオフィシャル
プランナーの伊藤宏一さん

 1時間目の課題は「お金の計画をたてよう-貯蓄を考えてみよう」。まず、伊藤さんが子どもたちに話したのは、2003年に世界最高齢となる70歳でエベレストの登頂に成功した三浦雄一郎さんについて。エベレストに登るには入山料が必要だが、それがいくらぐらいになるか質問する伊藤さん。子どもからは「1万円」「100万円」などの答えが返ってくるが、正解が800万円だと知ると驚きの声があがった。続いて紹介したのは、大リーグで活躍するイチロー選手のケース。小学校6年の時にはプロ野球選手になるという目標を持っていたイチローは、「ドラフトの契約金は1億円以上を目指す」と小学校の作文に書いていたというエピソードを話して聞かせた。

こうして目標を達成するためには、お金が必要になってくるということを理解してもらったところで、自分の将来の目標を達成するためには、どれぐらいお金がいると思うかを、目標設定ワークシートに記入させていった。子どもたちは自分の目標はすぐに記入できたが、そのためにいくらぐらいのお金が必要か、そのお金をどうやって稼ぐかとなると、普段あまり考えないことだけに、少し迷った様子。それでも最後には、「自分で工場を作る」、「東大に行って政治に関係する仕事に就く」といった自分の目標を発表していった。

 さらに、金利について考えてもらうために、子どもたちに教えられたのが72の法則。これは銀行に預けたお金が、利子で倍の金額になるのに必要な年数を導き出すもので、72÷金利=倍になるのに必要な年数となる。今回参加した子どもの多くが銀行に口座を持っているということだったが、0.05%の金利だと倍になるのに7万2000年もかかるということを知って驚いていた。

大学進学から就職までの明確なライフプランを立ててもらう
 2時間目の授業は「ライフプランを考えよう」ということで、シートに記入してもらいながら、5年後、10年後の自分は何をしているかを考えさせた。数年後には高校や大学に進学し、いずれ就職することになることは、漠然と理解していても、これまで具体的に考えることはなかった。それをライフプランのシートに記入していくことで、これから何年間、学校に通って何歳の時に就職するかが、はっきりと見えてくる。その上で、具体的な目標を持っている子には、大学でどういうことを勉強するつもりかといったところまで記入してもらう。

 そうやって自分のライフプランが見えてきたところで、大学に進学するにはお金がかかり、それは国立と私立で違うことや、高卒に比べて大卒の賃金が高くなることなどを伊藤さんは説明する。そうした点を理解してもらいながら、給料のために大学に行くわけではないが、自分の将来のことを具体的な目標を立てて考えるように促した。今回の「キッズ・マーケット・キャンプ」は、将来の進路に明確な答えを出すものではなく、あくまでも将来に対して思いを巡らしてもらうのが目的。「大学でかかる費用を、少しは自分で働いて稼ぎますか」との質問に、大半の子どもが手を挙げていたが、学ぶことにもお金がかかるということは伝わったようだ。
 

こうして午前中に2時間の授業を終えて、お金が自分たちの生活に関わるものだと学んだ子どもたちだが、午後からはメモ帳と筆記用具を手にして、会場となった早稲田大学日本橋校の近くにある日本橋銀行本店と貨幣博物館を見学して1日目は終了した。

自分の将来の仕事とお金を結びつけて考えさせる
そして、2日目の授業は、さらに踏み込んだ内容となり、3時間目の「お金の予算管理とお金の将来価値」では、宿題として出されていたお小遣い帳の記録から、自分のお金の使い方に無駄はないかを考えさせた。4時間目は「仕事のことを考える」として、自分の得意分野を考えさせて、そこからどんな仕事に向いているか導き出させていった。そして、5時間目は「リスクとリターンを考える」として「お父さんの会社が倒産して失業した」「火事になって家が全焼した」などのリスクを想定し、それをカバーするための手段には、どんなものがあるかを説明。そして締めくくりとなる6時間目で学んだのは「投資と分散投資」で、子どもには難しいと思われる株式や債券について、実在する企業の株価をサイトで調べたりしながら、基本的な知識を身に付けていった。
 

こうして2日間にわたる授業を修了した子どもたち。今回、学んだことは、すぐに何かに活かせるといったものではないが、自分の将来をお金のことを念頭におきながら、計画立てて考えられるようになったというのが、最大の成果と言えそうだ。

(取材・文:田中雄一郎) 

伊藤さんの話に聞き入る子どもたち
伊藤さんの話に
聞き入る子どもたち
将来の目標を決めてワークシートに記入
将来の目標を決めて
ワークシートに記入
銀行の金利を電卓を使って計算
銀行の金利を
電卓を使って計算
ライフプランシートで自分の未来を考える
ライフプランシートで
自分の未来を考える

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