日本の伝統芸能、狂言を体験 宝塚市立宝塚小学校
中学校の新しい学習指導要領には、これまで馴染みの薄かった和楽器などを音楽の授業に取り入れるように明記されているが、指導する教師の側も、それまで触れたことのない楽器を、どのように生徒に教えていけば良いのか模索の段階。そんな混乱する教育現場の一助になればという思いから、TOA株式会社は、小中学生を対象に邦楽も含めた世界の民族楽器を体験するワークショップを開催している。
目の前にはない扉を開けて閉める動作に挑戦
高らかに大笑い 大蔵流狂言「盆山」の一場面
本物の狂言に見入る子どもたち
社会貢献を担当する吉村真也さん |
■声の芸術の一環として狂言を学ぶ この日、講師をつとめるのは善竹隆司さんと善竹隆平さんの兄弟。二人とも大蔵流狂言師である父親の善竹忠一郎さんから、子どもの頃から狂言を学び、現在ではより多くの人に狂言の良さを知ってもらおうと海外公演も数多くこなしている。 会場に集まった子ども達に、兄の隆司さんが「これまでに狂言を見たことがある人はいますか」と聞くと、意外なことに、何人かの児童の手が上がる。そこで、どこで見たのかを聞いてみると、宝塚北高校の生徒たちが演じたのを見たとの答えが返ってきた。それを聞いた隆司さんが「その宝塚北高校の狂言の指導には自分があたりました」と言うと、思わぬ結び付きに子ども達からは驚きの声があがった。 狂言の魅力を子ども達に伝えるために、「能は悲しい話が多いけれど、笑えるような話になっているのが狂言」と丁寧に語りかけていく。「狂言が与える笑いは、今を生きていくということをテーマにしたもの」という言葉には、狂言はよく分からない子ども達にとっても印象に残るものとなったようである。 ■狂言の動きや発声を、みんなでチャレンジ なんとか、大きな声も出るようになったところで、小道具である扇が登場。テレビドラマと違って狂言の舞台にはセットは存在しない。実際にそこに家や扉が無くても、目の前にあるように演じなければならない。 続いて披露されたのが動物の鳴き声。狂言における動物の鳴き声は、日常で表現されるものとは少し違っている。「ピーヒョロ」と鳴いて、子どもに何の動物の鳴き声か当てさせると、すかさず「トンビ!」という答えが返って来る。 さらに、狂言に含まれる音楽的要素を体験してもらおうと、選ばれたのが狂言「蝸牛」の一節。隆司さんが「でんでん虫々、でんでん虫々」と一文を歌い上げると、それを聞いた子ども達は、音楽の授業に出てくるような歌とは、全く違ったテンポに戸惑いながらも、みんなで合わせて「でんでん虫々~」と声を出していく。 最後は笑いの表現として、全員で高らかに大笑いして、狂言の体験が締め括られた。 こうして狂言が、どういうものであるか、大まかに理解してもらったところで、善竹兄弟により大蔵流狂言「盆山」の始まり。これは盆栽が欲しくてたまらない男が、お屋敷に盗みに入るという物語。盗みに入ったところを、屋敷の主人にバレてしまった小心者の男が、どうにかごまかそうとする様子が滑稽に表現されていく。 ■民族楽器から邦楽まで多彩な内容のワークショップ ■企業が持っているノウハウを教育に活かす 「民間企業が主催するワークショップということで、教育現場に理解してもらうまでが大変でした」と吉村さんは語る。それを教育委員会の後援をもらったり、学校に足を運んで説明するなどして、実現にまでこぎつけていった。 毎回、感想を聞くため、子ども達にアンケートをお願いしているが、「三味線をひきながら出される声がすごかった」、「太鼓を叩いた時の振動がすごかった」など、素朴に感動している子が多いという。「また、三味線をひきたい」といったメッセージをもらった時などには、本当にやっていて良かったと思うそうだ。 「こうした活動を行っていることを、もっと知ってもらって、いろんな学校に来てもらい、多くの子ども達に本物を体験してもらいたい」と吉村さんは語っている。 TOAのホームページ ジーベックホールのホームページ
(取材・構成:田中雄一郎) |
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