次の時代を担う子どもたちのために、情報教育はどうあるべきか 慶應義塾幼稚舎 鈴木二正先生
早くから校内の情報化に着手し、平成10年から「情報」を授業として採り入れている慶應義塾幼稚舎。まったくゼロからのスタートで、短期間のうちに、1人1台以上のパソコン、高速な校内ネットワークの構築に成功したのは、情報課担当の若き先生たちの功績によるところが大きい。 今回は、慶應義塾幼稚舎の情報化の中心となった先生のひとり、鈴木二正先生にお話をうかがった。
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■コンピュータなんて大したことない 「子どもたちには、今世の中にある最先端の技術に触れて欲しい」 「なんだ、最先端でもこんなものか、コンピュータって不便だな、くらいに思う子どもたちであって欲しい。じゃ、もっといいものを自分で作ってみよう、そう思ってくれればしめたものです」 |
■情報化成功の秘訣は「誰でも簡単に操作できる」環境づくり もとは教員用の図書館だったスペースを改造したというコンピュータ教室の正面には、大型のスクリーンが鎮座しており、生徒用の、黄色と紫のモダンなデザインの稼動式テーブルの上には、最新のノートパソコンが据えられている。もちろん生徒ひとり1台パソコンだ。 | |
■お金がないからできない、は言い訳 「お金がないからできない、というのは言い訳だと思うんですよ。今IT関連では、国や企業から助成金の出る、研究助成金や実験プロジェクトの公募は探せばかなりあるんです。常にそういう情報に対してアンテナを張って、チャンスがあれば、すぐ企画書をだせるようにいつも用意しておくべきです」 そもそも、鈴木先生が慶應義塾幼稚舎の情報化に携わるようになったきっかけは、学生時代に教育実習で同校を訪れた際の、当時の舎長(校長)中川真弥氏との出会いに端を発する。中川氏が繰り返し言った「これからは情報教育が大切」という言葉がいつまでも耳に残った。
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■本当の答はコンピュータの先にある 授業は1年生から6年生まで各学年週1回。1、2年生では、遊びを通じてコンピュータに慣れ親しむことを、3、4年生では基礎・リテラシーの習得、情報を取得・共有・交換して発表することを、5、6年生では情報の取捨選択、情報の整理、情報を自分に都合のよい形で加工し効果的に活用することなどを学ぶ。 コンピュータ教室は、「ダイナミックに動く情報教室」を目指して、小振りの稼動式のテーブルを採用。実習の時間には、子どもたちは一人で作業に没頭したり、友だちのパソコンを取り囲んだり、自由に動きまわってかまわない。 「指導案もない、教科書もない、という状況で手探りの授業をやってきて、だんだん形が見えてきました。すごいな、と思うのは、3年前に6年生でやっていたことを今の4年生で、5年生でやっていたことを3年生でやってみたら、できちゃうんです。これから先、彼らがどうなっていくのか、怖いような楽しみのような。先を知りたいですね」 あまり小さい時からバーチャルな世界に慣れ過ぎることによって、リアルな社会での人づきあいがうまくいかなかいなど、不適合を引き起こす心配はないのだろうか。 「むしろ心配なのは、不正や汚職まみれの大人たちのほう。子どもたちがこれから巣立っていく社会を形成している大人がしっかりするべきでは? 子どもたちにいつも言っているんです。コンピュータはうまく使ってやればスゴイ武器だ。でも、コンピュータでできることなんて大したことではないし、コンピュータの中にすべての答があるわけでもない。本当の答はその先にある、と。インターネットで調べる方がいいこともあるし、本で調べた方がいいこともある。パソコンで描くより手で描く方がいい場合もある。いろいろなものに触れて、本物の知識を見つけだして欲しいと思っています」
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