2020.05.20
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休校中の子どもたちへ Let's 理科読!『工作でわかるモノのしくみ-AI時代を生き抜くモノづくりの創造力がそだつ』ほか(その3)

学校が休校になって、授業というスタイルではない学びに一人一人が工夫して取り組む毎日です。理科読は、科学的な見方・考え方を練習する学びです。家にいてできる理科読を紹介します。(公共図書館も学校図書館も閉館中の事態を勘案し、ネットを含む販売で現在手に入る本でプログラムしました。)
最終回となる、その3のテーマは自転車です。

その3「身近なものに目をむけよう」

自転車はイノベーションのかたまり

『自転車ものがたり』(たくさんのふしぎ傑作集)

ふだん、皆さんは自転車に乗ってどこかに出かけることはありますか? 通学や買い物、友達と遊びに行くときなど、毎日便利に使うこともあれば、サイクリングのように、自転車に乗ることそのものを楽しむこともあるでしょう。自転車に乗って遠くまで出かけることができない今、自転車のことを研究して、念入りに手入れしてみましょう。

自転車はいつ頃、生まれたものでしょう。それを知るには『自転車ものがたり』がおすすめです。この本を読んでみると、自転車は、蒸気自動車が走るようになってから50年もあとに発明されたとあります。

最初は地面を足でけって「速く歩く器械」として考え出され、やがてペダルをこいで前に進む形が考え出されます。けれどもそのころはまだ車輪は木でできていたそうですから、乗りごこちはとても悪かったでしょうね。軽くて強い器械とするために金属パイプのフレームが使われるようになり、車輪と軸の間の摩擦が少なくなるようにボールベアリングが使われ、地面のでこぼこから受ける衝撃を和らげるゴムタイヤができ、というふうに次々に新しく発明されたものが取り入れられて、より快適な乗り物へと進化していきます。イノベーションが繰り返されていくことが、すっきりとした絵と文で書かれています。

文・絵:高頭 祥八
出版:福音館書店
定価: 本体1,300円+税
判型: 四六変形判 40ページ
発行: 2016年

自転車は物理の実験の玉手箱

『自転車のなぜ-物理のキホン!』(ぐるり科学ずかん)

自転車に上手に乗れるようになるまで、たくさん練習した思い出がある人もいるでしょう。自転車が倒れないですいすいと走り続けられるには、バランスが大事です。バランスをとるとはどのようなことなのか、『自転車のなぜ-物理のキホン!』を読んでみましょう。

「第0章 自転車にはたらく「力」ってなんだ?」とあります。自転車が動くときにも、止まるときにもいろいろな「力」が働いています。この本では目には見えない力について、自転車を様々な角度からみて、いくつもの物理の法則が使われていることを確かめていきます。

続いて、「第1章 自転車をはかる」で自転車のいろいろな部品のサイズや重さを調べ、重力や重心のことを学びます。「第2章 自転車に乗る」「第3章・第4章 自転車の構造Ⅰ・Ⅱ」「第5章 自転車の運動とエネルギー」「第6章 エネルギーの不思議」と、 順を追って読みながら実験をして進んでいくと、「力」や「エネルギー」のことが無理なく学べるように書かれています。物理の自然の法則のことが、私たちの日常生活の中にこんなふうに表れているとわかって、とても面白くなります。

自転車で坂道を上るときなどに電気の力が助けてくれる電動アシスト自転車が、どのような仕組みになっているかも出てきます。回生ブレーキのしくみもやさしく解説されています。少し難しい言葉や概念もで出てきますので、小学生ならば親子で少しづつ読み進むのもおすすめです。巻末に「大人のみなさんへ 各章のポイント」と「読書案内」が付いています。

著:大井喜久夫・大井 みさほ・鈴木 康平 イラスト:いたやさとし
出版: 玉川大学
定価:4,200円+税
判型:A4変形判 128ページ
発行:2015年

今注目のSTEM教育のシリーズ

『工作でわかるモノのしくみ-AI時代を生き抜くモノづくりの創造力がそだつ』(子供の科学STEM体験ブック)

『自転車のなぜー物理のキホン!』には、物理(理科)のことばかりではなく、自転車の部品のサイズや重さをはかったり、円周率のことを学ぶ数学(算数)のことや、自転車の構造と仕組みのように技術やエンジニアリングのことも出てきます。このようなScience、Technology、Engineering、Mathematics の各分野を総合的に学ぶSTEM教育は21世紀型教育として注目されています。科学や数学、技術の知識を活用して、創造的なものつくりや新しい価値を生む力を育てる教育です。

この本はイギリスでSTEM教育をベースとした子供向けに出版されたシリーズを、ほぼ同時に日本向けに出版したものです。エンジニアリングを中心としたこの本と、『実験でわかる科学のなぜ?-AI時代を生きぬく理系脳が育つ』『ためしてわかる身のまわりのテクノロジー-AI時代を生きぬく問題解決のチカラが育つ』『クイズ&パズルでわかる数と図形のナゾ-AI時代を生きぬく算数のセンスが育つ』の計4冊で「子供の科学STEM体験ブック」シリーズになっています。

「現代の科学の基礎から最先端までをわかりやすく概観」(前書きから)できるようになっていますから、理科は苦手と思っている大人の方にも気軽に手に取ってもらえます。そして、楽しい実験がたくさん!のっています。手を動かしながら楽しく基本を学び、身近なものを、もう一つ違った目線で眺めてみましょう。

ありふれた、あたりまえと思っていたものの中に「おや?」を見つける練習をしましょう。たくさんの小さな「おや?」が次の発見や発明のタネとなるでしょう。

監修:ガリレオ工房 原著:ニック アーノルド
出版:誠文堂新光社
定価:2,000円+税
判型:大型本 79ページ
発行:2018年

おわりに

その3「身近なものに目をむけよう」では3冊紹介しました。

「そういうものだ」とあまり疑問に思わずに過ごしている日常生活のなかで、私たちは「不思議」にたくさん出会っています。ちょっと立ち止まって「どうなっているのかな?」「どうしてかな?」と「不思議」を発見しましょう。この連載では不思議を発見する練習を少しだけ紹介しました。

不思議を発見すると、その不思議について知りたくなります。そんな時、知識を得たり、確かめたり、深めたりするのに本は役に立ちますが、それだけではありません。本には、立ち止まるきっかけがたくさん詰まっています。「魔女の宅急便」をアニメにするとき、宮崎駿監督は「キキがほうきにのって飛べるようになる時、キキの体が重さを無くして、重力で引っ張られなくなるのか?それともほうきがキキを持ち上げる力を出したのか?どちらなのかによって、キキの髪の毛、リボン、スカートがどういう風になるのかちがう」とチームの人たちと議論したそうです。ファンタジーを読みながら、重力や揚力、浮力のことを読んだのですね。

読書には多様な「読み」がかくされています。読む視点を変えると、違った「読み」ができることも、この連載で紹介しました。このような理科読という方法を、これからの皆さんの学びに活用してくれたらうれしいです。

構成・文:ガリレオ工房 土井美香子

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