2020.05.11
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休校中の子どもたちへ Let's 理科読!『おつきさま こっちむいて』ほか(その2)

学校が休校になって、授業というスタイルではない学びに一人一人が工夫して取り組む毎日です。理科読は、科学的な見方・考え方を練習する学びです。家にいてできる理科読を紹介します。(公共図書館も学校図書館も閉館中の事態を勘案し、インターネットを含む販売で現在手に入る本でプログラムしました。)
その2のテーマは月です。

その2「月をさがそう」

昼の空で月をさがそう

『おつきさま こっちむいて』

この本の主人公は、いろいろな時にいろいろな形のお月様と出合います。犬の散歩中に見る三日月は横を向いているように見えます。そこで、正面を向いているように見える満月まで、「おつきさま こっちむいて」とお月様を探します。昼間、ぼんやりと白く見えるお月様も見つけます!そうです、月は昼間にも出ているのです。国立天文台の暦計算室というサイトを開いてみましょう。各地の月の出月の入りの時刻と月齢がわかります。

例えば2020年5月14日は下弦の月(左半分が光っている)で、東京では月の出は夜中の0時22分、月の入りは翌朝の10時39分とあります。朝早起きして西の空を見ると、月を見ることができるかもしれません。5月18日には朝8時すぎに南の空に三日月とは反対の形をした細い月が出ています。この日の月の入りは14時26分とありますから、昼間月が少しづつ西に動いていくのを見ることもできます。

毎日学校に行っているときは、学校での活動に忙しくて、昼間月を眺めることはなかなかできません。今なら毎日昼間の月を探すことができますね。でも、月を探しに外出することはできません。家の中で南向きの窓を探しましょう。その窓からどんな時間にどんな月が見えるのか、観察して、あなただけのお月様絵本を作りましょう。

文:片山令子 絵:片山健
出版:福音館書店
定価:900円+税
判型:B5判変形 24ページ
発行:2010年

月のクレーターに名前を残す日本人

『月のえくぼ(クレーター)をみた男 麻田剛立』

今、私たちが使っているカレンダーは、太陽の動きを基準にした太陽暦です。日本では明治時代に太陽暦を使うようになりましたが、それまでは月の満ち欠けを基に太陽の動きも参考にした太陰太陽暦が使われていました。月の出入りや満ち欠けは、今の私たちよりずっと生活に密着した大切な情報でした。

この本の主人公麻田剛立は、太陰太陽暦が使われていた江戸時代の実在の人物です。幼少の頃より天文への関心が強く、脱藩し独学で天文の研究をつづけました。月だけではな く、太陽の動きの観察も、星の動きの観察も、熱心に取り組み、月が太陽を遮る天体現象:日食を予言し、的中させます。当時使われていた暦は、中国から輸入されてから長い年月が経って生じた様々な不具合を解消しようと何度か改暦が重ねられていましたが、もっと精度の高い新しい暦が必要とされていました。新しい暦に必要な基礎理論をつくる仕事をし、日食の予言でその理論が信頼に値するものだということを証明したのです。

麻田剛立は輸入された反射式望遠鏡を使って月面の観察をし、日本最古の月面クレーターのスケッチを残しました。この本を書いた鹿毛敏夫さんが、麻田剛立研究を重ね、資料を収集してこのスケッチの所在を発見しました。この本は麻田剛立と鹿毛敏夫、二人の粘りつよい研究者の肖像ともなっています。

月のクレーターには世界の著名な科学者の名前が付けられていますが、その一つに「クレーター・アサダ」と、日本の近代天文学の礎を築いた麻田剛立の名が冠せられています。国立天文台のサイトから月球儀のペーパークラフトの型紙がダウンロードできます。三段階の難易度別になっていますから、自分に適した型紙をダウンロードして作り、クレーターの名前にある科学者たちの伝記や著作を読んでみましょう。

国立天文台のサイトでは今、この他にも特別授業動画など家にいて楽しく天文が学べるコンテンツがたくさん提供されています。

著:鹿毛敏夫 画:関谷敏孝
出版:くもん出版
定価:1,400円+税
判型:四六判縦 240ページ
発行:2008年

言葉の世界で月を探そう

『夏井いつきの月の歳時記』

月は世界中でこよなく愛され、文学でも絵画でもたくさん扱われている素材です。月が登場する絵本や物語がたくさんあります。ストレートに「月」と言わずに、桜が月光を浴びて花が明かりをともしているように見えることを「花明かり」というような表現もあります。あなたの持っている本の中にどれだけ月は出てくるでしょうか。

この本は、全国高等学校俳句選手権大会「俳句甲子園」の創設にかかわり、今TVでも活躍する夏井いつきさんが選んだ、月を詠んだ俳句と美しい写真で月を楽しむ本です。四季に合わせたシリーズで、この本のほかに「花の歳時記」=春、「時鳥の歳時記」=夏、「雪の歳時記」=冬があります。「月」が秋の季語であることから「月の歳時記」=秋とされていますが、春、夏、秋、冬、どの季節にも月が登場する句があります。

俳句を味わうのに、季節をイメージするのは重要なステップです。朧月といえば春の季語ですし、寒月といえば冬の季語です。次にそこに詠まれている月はどんな形をしているのかをイメージしてみます。与謝蕪村の「なのはなや つきはひがしに ひはにしに」に登場する月は、月の出と日の入りが同じくらいの時刻ということですから、満月です。菜の花の咲く季節の夕方、ゆったりと大きな満月が出てきた風景が目に浮かびます。

この本には、季節と月の形が推し量れるように、「月齢と月の季語のカレンダー」と春夏秋冬の月の季語が載っています。この本を片手に自分の好きな句集を手に取ってみてください。そして、どのような月が詠まれているのか、探してみてください。もちろん自分で見た月を一句詠むのもおすすめです。

著:夏井いつき
出版:世界文化社
定価:1,300円+税
判型:B5判 96ページ
発行:2018年

子どもから大人まで繰り返し楽しめる

『宇宙―そのひろがりをしろう―』

一枚の窓から月を探して空を見上げれば、そこはもう宇宙への扉です。宇宙とはどのようなところでしょう。この本は、足もとのノミから始まってだんだん視点が広がっていくにしたがって宇宙とはどんなところかを考えていく本です。知識を教え込む本ではなく、この本を手掛かりに読み手が自分で「宇宙ってどんなところかな」「人間はこういう宇宙の中で生きているのだな」と自分なりの考えを持つことができるようになる本です。本を読むということは、読み手が持っている知識や体験を総動員する行為です。年を取って体験や知識が増えると、同じ本でも「読める」内容が変わります。

この本には本文だけでなく、イラストにもとても高度な内容がたくさん書かれています。この本を読んでから、先の国立天文台のサイトで学ぶと「わかった」と思えることがたくさんあります。それからもう一度この本を読むと、「あ、ここに書いてあることは、あの事だ!」とわかることがあります。大人から子供まで、繰り返し楽しめる本です。本をゆっくり、1ページ1ページを隅々まで繰り返し読むのも良いことです。あちこちへ寄り道して戻ってきて読んでも良いのです。

この『宇宙―そのひろがりをしろう―』は1970年代に書かれた本です。その後、宇宙の研究はとても進みました。新しい知見の本もたくさん出ていますので、自分の興味のある所から読んでください。

文・絵:加古里子
出版:実教出版
定価:1,500円+税
判型:大型本 68ページ
発行:1978年

無料公開中!

「月刊たくさんのふしぎ」バックナンバー

『宇宙とわたしたち』

140億年前、宇宙には水素とヘリウムしかなかったと、今では考えられています。水素とヘリウムのガスが集まって星が生まれ、炭素や酸素や窒素、ケイ素、鉄などがつくられ、その星が爆発して宇宙にばらまかれた炭素や酸素からまた新しい星が生まれて、と今の宇宙の中で私たちがどのようにしてできたのかをやさしく教えてくれます。月刊誌のため品切れ中ですが、福音館書店の「おうち時間を楽しもう」というサイトで、今、無料公開されています。こちらも読んでみてください。

文:藤沢 健太 絵:なかの ひろたか
出版:福音館書店
定価:700円+税
判型:B5判変形 40ページ
発行:2017年
その2「月をさがそう」では、4冊+α紹介しました。その3もお楽しみに!

構成・文:ガリレオ工房 土井美香子

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