LGBTに悩む子どもたちのために。
私、アグネス・チャンがこれまで学んだ教育学の知識や子育ての経験をもとに、学校や家庭教育の悩みについて考える連載エッセイ。今回のテーマは「LGBTに悩む子どもたちのために」です。性について違和感を覚え、親に心配をかけたくない、自分はちょっと変わっているかもと悩みを抱える子どもたちがいます。そんな子どもたちのために、私たち大人ができることは何なのでしょうか。
性別はグラデーション。
私がスタンフォード大学で男女学の授業を受けたときのこと。
先生は「僕は宇宙人の目線で地球人を見ています。人間って変ですね。外見だけで男はこっち、女はこっちって、性別は2つしかない。でも実際には、見た目も心も身体の構造も男らしい人と女性らしい人が両端にいて、その間には女らしい男もいれば、男らしい女も居て、“途中の人”がほとんどです」といいました。私は目からウロコでした。
私はレズビアンもゲイの友だちもたくさんいて、彼らのことを“特別な人”と思っていましたが、先生の言葉を聞いて、性別はそもそもグラデーションなので、LGBTに該当する人がたくさんいるのはとても自然なことだと気づきました。
愛する人が誰であれ、子どもの人生を応援することが親の役目。
私は「自分の子どもがLGBTであったら、受け入れられるのかな?不安です」と親の声も耳にします。
親の役目は子どもの幸せな人生を願うことです。LGBTと聞くと、「子どもは大変な人生を送るんだろう」と、何かの病気のように考えている方も中にはいるようです。でも、誰か愛する人と一緒にいられるのは幸せです。そして、その愛する人を決めるのは本人であり、親ではありません。
また、孫が生まれないと心配する人もいますが、今では自分の遺伝子を持った子供を産んでくれる人を見つけることもできます。
同棲愛者のカップルであっても、家族を増やす手段が広がっているのです。
子供がLGBTなら、子どもの生き方と幸せの人生を応援しましょう。
仲間や愛する人に囲まれ、誰かを愛し愛される人になることが、人生においてとても大切なことです。
いつでも“帰れる場所”があれば、子どもは強く生きられます。
自分は男性が好きなのか女性が好きなのか、またどちらも好きなのか。そういったことを意識し自分の性についての悩みを抱えだすのは、思春期の辺りに気づきます。ですが、思春期はそういった性的な悩みの他にも、勉強についてや、ホルモンのバランスも変わり、様々なプレッシャーを感じる時期。
LGBTだという事実を親に打ち明けられず、家出をするほど苦しみを抱える子もいます。
私は子どもたちが思春期を迎える中学生の時に「ゲイだったらまずママに言ってね。ママはあなたが大好きだから、全然平気だからね」と言っていました。
誰にも言えない恋をすることはとっても可愛そうなことですから、子どもの気持ちを理解できる親でいたかったのです。
またこういった言葉は親だけでなく、先生も同じです。
「この自分でいい」と親や先生が認めてくれれば、その子にとっての心の拠り所ができるのです。
LGBTについて、周りには理解できない子もいるかもしれませんが、本人がいつでも“帰れる場所”をつくることが大切です。
親や先生が認めてくれれば、「私は価値ある人間」と強く生きることができます。
LGBTで悩む子がなくなるように、大人は意識を改め、LGBTの子どもの人生を応援しましょう。
アグネス・チャン
1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)
構成・文・写真・イラスト:学びの場.com編集部
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