体験学習という言葉を聞くと、6年生の担任をしていたときの総合的な学習の時間で取り組ませた、各国大使館への訪問取材のことを思い出します。
この学習は、学年全員がクラスを越えて小グループを作り、自分たちが担当した国を他の児童たちに紹介するというもの。そして、その中心活動のひとつが、実際にその国の大使館に行って取材を行うことでした。社会科の都内見学の日、見学を午前中に終わらせ、その後を大使館訪問にあてるという計画で、事前に子どもたちは大使館の場所や取材内容などの調べ学習を行いました。
私たちは、その取材時に於いては教師は力を貸さず、児童だけの力でそれを行わせようと考えました。もちろん、実際には大使館にアポをとり、子どもたちだけで取材をすることを大使館の方に理解しておいてもらうことなど、事前に教師がしておいたことはいくつもありました。しかし、当日については、付き添っていても一切、力を貸さず、訪問の挨拶から取材まで、すべて子どもたちだけでやらせることにしたのです。
この訪問取材が決定したとき、私は子どもたち全員にこのように言いました。
「大使館訪問のときには、先生たちは君たちに一切、力を貸さないつもりです。大使館の下調べ、そして当日の訪問の挨拶から訪問の目的を伝えること、そして実際の取材まですべてあなたたちだけで行うのです。相手の国の大使が直接会ってくれる大使館もあります。あなたたちの態度が、そのまま『日本の小学生』として評価されるかもしれません。その意味ではあなたたちは日本の小学生の代表になるわけです。日本の小学生の代表として、恥ずかしくない取材をしてきてくれることを望みます。」
私の話を聞いて、子どもたちは緊張した表情になりました。まったく知らない大人に自分たちだけで応対しなければならないこと、しかもそれが外国人かもしれないとなれば、不安になるのも仕方のないことだったと思います。
実際に訪問する大使館の数は14。国会議事堂前から各グループに分かれ、各大使館を訪問し、最後は東京タワーに集合するというコース設定。当日の付き添いの教師は校長を含めて6名だったので、子どもたちだけで訪問する大使館もありました。
私は3つのグループの付き添いはしましたが、子どもたちに何も手を貸しませんでした。子どもたちも、先生は本当に力を貸してくれないことを察して、自分たちだけで達成しなければならないことを再認識したようでした。しかし、逆にそのことが子どもたちに責任と自覚を持たせたようで、各リーダーを中心にほとんどの子どもが、学校では決して見せないようなしっかりした態度になっていったのです。
最後の集合場所である東京タワーに戻ってきた子どもたちの顔は、みんな達成感で満ちていて、本当にいい表情をしていました。数多くの体験学習を経験させてきましたが、この時ほど子どもたちの顔に達成感と満足感を見たことはありませんでした。
今、考えるとこの学習計画にも多くの問題点は感じます。特に安全面の点では大いに論議されるところでしょう。しかし、計画されたものだったにしても、子どもたちにとっては、学校教育の場でしかできない貴重な体験学習だったと思うのです。
現在、体験学習の名のもとに、本来、学校でやらなくてもよいもの(学校でやったら意味のないもの)も数多くあるような気がします。また、教師や協力してくれる大人が手を貸しすぎて、子どもたちの力になっていないこともあるのではないでしょうか。
より価値のある、子どもに生きる力と学習する力をつける体験学習が増え、子どもたちに数多くの達成感を味わわせて欲しいものですね。
この学習は、学年全員がクラスを越えて小グループを作り、自分たちが担当した国を他の児童たちに紹介するというもの。そして、その中心活動のひとつが、実際にその国の大使館に行って取材を行うことでした。社会科の都内見学の日、見学を午前中に終わらせ、その後を大使館訪問にあてるという計画で、事前に子どもたちは大使館の場所や取材内容などの調べ学習を行いました。
私たちは、その取材時に於いては教師は力を貸さず、児童だけの力でそれを行わせようと考えました。もちろん、実際には大使館にアポをとり、子どもたちだけで取材をすることを大使館の方に理解しておいてもらうことなど、事前に教師がしておいたことはいくつもありました。しかし、当日については、付き添っていても一切、力を貸さず、訪問の挨拶から取材まで、すべて子どもたちだけでやらせることにしたのです。
この訪問取材が決定したとき、私は子どもたち全員にこのように言いました。
「大使館訪問のときには、先生たちは君たちに一切、力を貸さないつもりです。大使館の下調べ、そして当日の訪問の挨拶から訪問の目的を伝えること、そして実際の取材まですべてあなたたちだけで行うのです。相手の国の大使が直接会ってくれる大使館もあります。あなたたちの態度が、そのまま『日本の小学生』として評価されるかもしれません。その意味ではあなたたちは日本の小学生の代表になるわけです。日本の小学生の代表として、恥ずかしくない取材をしてきてくれることを望みます。」
私の話を聞いて、子どもたちは緊張した表情になりました。まったく知らない大人に自分たちだけで応対しなければならないこと、しかもそれが外国人かもしれないとなれば、不安になるのも仕方のないことだったと思います。
実際に訪問する大使館の数は14。国会議事堂前から各グループに分かれ、各大使館を訪問し、最後は東京タワーに集合するというコース設定。当日の付き添いの教師は校長を含めて6名だったので、子どもたちだけで訪問する大使館もありました。
私は3つのグループの付き添いはしましたが、子どもたちに何も手を貸しませんでした。子どもたちも、先生は本当に力を貸してくれないことを察して、自分たちだけで達成しなければならないことを再認識したようでした。しかし、逆にそのことが子どもたちに責任と自覚を持たせたようで、各リーダーを中心にほとんどの子どもが、学校では決して見せないようなしっかりした態度になっていったのです。
最後の集合場所である東京タワーに戻ってきた子どもたちの顔は、みんな達成感で満ちていて、本当にいい表情をしていました。数多くの体験学習を経験させてきましたが、この時ほど子どもたちの顔に達成感と満足感を見たことはありませんでした。
今、考えるとこの学習計画にも多くの問題点は感じます。特に安全面の点では大いに論議されるところでしょう。しかし、計画されたものだったにしても、子どもたちにとっては、学校教育の場でしかできない貴重な体験学習だったと思うのです。
現在、体験学習の名のもとに、本来、学校でやらなくてもよいもの(学校でやったら意味のないもの)も数多くあるような気がします。また、教師や協力してくれる大人が手を貸しすぎて、子どもたちの力になっていないこともあるのではないでしょうか。
より価値のある、子どもに生きる力と学習する力をつける体験学習が増え、子どもたちに数多くの達成感を味わわせて欲しいものですね。
高柳 新(たかやなぎ はじめ)
欧風カレー専門店『アルパッシェ』オーナー
四半世紀の小学校教師経験と小学生卓球チーム指導者として全国大会の出場経験。そして現在は、学校を外から見ることのできる立場を生かし、現場の先生方を応援したいですね。
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