2008.05.14
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平安時代の総合的な学習の時間?

株式会社内田洋行 教育総合研究所 山田 智之

趣味と言うほどでもないですが,休日はよく散歩に出かけます。
4月中旬のことですが,等々力渓谷に出かけました。
http://home.catv.ne.jp/dd/ohmura/map/mapframe.html

元々知っていたわけではなく,たまたま検索して見つけたスポットだったのですが,都内とは思えない空間で驚きました。
環状八号線をまたいで約1kmほど,谷沢川沿いに緑に覆われた渓谷が延びていて,森林浴には丁度良い感じです。何でも都区内唯一の渓谷なんだとか。
環状線が通っている割りに静かですし,空気もきれいなので落ち着きます。

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さて,この等々力渓谷を歩いていたところ,「椎児大師堂」というお堂を見つけました。
隣には説明書きの立て札があり,それによるとこのお堂は幼少時の弘法大師(空海)を祀ったもの,とのこと。他にもいくつか説明が書かれていたのですが,特に,弘法大師が創設した大学「総芸種智院」に関する説明は興味深かったです。

「総芸種智院」は今の種智院大学の起源とされている平安時代の大学で,貴族階級に限られていた大学教育の門戸を機会均等の立場に基づいて庶民にも開いたものなのだそうです。
(恥ずかしながら,日本史が不得手でこのことは知りませんでした)

この「総芸」「種智」という言葉にも馴染みがなかったのですが,次のように説明されていました。

・総芸とは学芸(学問・文化)を総合すること
・種智とは智恵を植えること
・智恵とは知識ではなく,決断力・判断力のこと
・智恵を育てることは,人生における様々な局面や難しい事態に出会ったとき,正しい決断・判断をする力として発揮される
・知識だけでは判断はできない。智恵を養うためには幅広い学問や思想を総合的に学ぶことが重要

ここまで読んで,総芸種智院の教育内容が,現代で言うところの総合的な学習の時間に通じるものがあるように思いました。

総合的な学習の時間は
・自ら課題を見付け,学び考え,主体的に判断し,課題を解決する力を育てる
・学び方や考え方を身に付け,問題解決や探究活動に主体的,創造的に取り組む態度を育て,自己の生き方を考えることができるようにする
・各教科や活動で身に付けた知識や技能を関連付け,学習や生活において生かし,それらが総合的に働くようにする

といったねらいの元,「生きる力」の育成を目指すとされています。
この生きる力を育成するための総合的な学問が,平安時代前期に既に実践されていたのだと感慨深く思いました。

#毎回こういう知的な散歩(?)ができるようになったら,「趣味は散歩です」と公言しようかと思います。


関連記事:
学力って何? 新学習指導要領で「学力」はどうなるのか (2008/01/16)
http://www.manabinoba.com/index.cfm/6,9528,13,1,html
todoroki.JPG

山田 智之(やまだ ともゆき)

株式会社内田洋行 教育総合研究所
教育の情報化が進められていた99年~を学生時代として過ごしました。「先生をサポートする仕事をしたい」と思い、内田洋行に入社。現在は受託事業、共同研究プロジェクトなどを担当しています。

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