2008.04.08
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人生を変えた先生との出会い

欧風カレー専門店『アルパッシェ』オーナー 高柳 新

両親以外に、人生の中で大きな影響を受けた先生は誰にもいることでしょう。小さな影響を受けた先生は何人もいるでしょうし、人生そのものを変えてしまうほどの先生に出会った人もいるかもしれません。私の場合は高校2年生の時に現代国語を担当してくださったK先生がその人でした。

 高校2年生になるまでの私は、理数系の科目が好きで、高校2年生に進級するときには、理数系の大学受験コースを選択しました。そして、そのときにK先生と出会ったのです。
K先生の現代国語の授業は、物語や随筆などを深く掘り下げて読解するのが中心で、ときには1行の文を考えるだけで1時間をかけるときもありました。ただ、とにかくその授業はおもしろくて、クラスみんなが集中して授業を受けていたように思います。
 そして、1学期の中間テストが返ってきたとき、私はそれを見て驚きました。どの答えにも三重丸や四重丸がついており、採点欄には百六十点と書いてあったのです。K先生のテストは、10問の設問に対して、すべて自分の考えを書き込むもので、私はどの設問に対しても、とにかくたくさんの書き込みをしました。最初は二百点満点のテストか、または百点以上の生徒がたくさんいるのだろうと思っていたのですが、その後の成績発表で2番手の生徒が九十点であることを知りました。私はそれまで、国語が得意だったわけでもなく、文章を書くのも面倒くさくて嫌いだったのです。しかし、K先生は私を褒めちぎり、今までの生徒の中で最高だとも言ってくれたのです。そう言われるとこの年齢では、自分は国語ができるのかもしれない、と思ってしまう(勘違いしてしまう?)のは当然でしょう。
 その日から実際に私は国語のできる生徒になりました。K先生の授業だけでなく大学受験模試でも現代国語だけは突出した成績を残すようになったのです。特別に勉強したわけではないので、とにかく自信を持たせてくれたことが大きかったのだと思います。 
 結局、私は大学も文系に進むことを決め、実際に大学では児童文学を専門に勉強することとなりました。高校では卒業するまで理系コースにいながら、受験勉強は文系科目だったので3年生での数学Ⅲなどは、まったくできない生徒になりましたが…。

 小学生のときに出会った先生の影響でその後の進む道を決めた、という人を何人も知っています。中学や高校の先生となれば、さらにその影響力は大きくなるでしょう。よい影響だけでなく、悪い影響を与えてしまう可能性もあるわけです。
 教師とは、教え子の人生を変えてしまうかもしれない職業です。そのことをしっかりと頭に置き、自分の発言や行動に責任を持つことが必要だと思います。そして、教え子に限りない夢を与え、それを実現する力を与えることも教育者としての一つの役目でもあると思うのです。

高柳 新(たかやなぎ はじめ)

欧風カレー専門店『アルパッシェ』オーナー
四半世紀の小学校教師経験と小学生卓球チーム指導者として全国大会の出場経験。そして現在は、学校を外から見ることのできる立場を生かし、現場の先生方を応援したいですね。

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