2008.02.12
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個を生かし、達成感を持たせる -演劇指導から-

欧風カレー専門店『アルパッシェ』オーナー 高柳 新

私は、演劇が大好きで、自分でも脚本を書いていました。学習発表会や卒業の謝恩会など、機会のあるたびに学級や学年で子どもたちにも演劇に取り組ませました。また、教師生活最後の年には、演劇クラブをつくり、小学生による本格的な劇団(大人が演じてもよいような脚本を小学生が演じる)として数紙の新聞にも紹介記事を載せていただきました。

 私が子どもたちを演劇に取り組ませるとき、まずベースとなる脚本を書き、配役を希望で決めさせた後、さらにそれぞれの子どもが最も生きるようにセリフなどを書き換えていきます。練習の中でも、どんどん修正して、個々が生きるようにしていきます。そして、その子の能力より、ほんの少し高いレベルの演技を目標に練習に取り組ませます。よい演技ができたときは心から褒めます。それはセリフ数の多い子も少ない子も同じです。実際に子どもたちは期待以上に上達していきました。私でも覚えられないだろうと思われる長いセリフを与えた子が、ちゃんとそれを覚えて演技できるようになる姿はこちらも感動します。

 演出面で常に意識していたのは、それぞれの子どもたちが舞台にできるだけ長くいられるようにすることと、最後のカーテンコールでは個別に挨拶させ、大きな拍手を受けさせるようにすることでした。それによって、自分が劇の中で必要だったことを実感し、その大切な役を務めたことによる大きな達成感を得ることができると考えました。十分ではないにしても、演劇活動では目標をかなりの割合で達成できたように思います。それは、演劇後の子どもたちのきらきらした満足感いっぱいの笑顔が物語っていました。
 『舞台役者は三日やったらやめられない。』と言われます。カーテンコールなどで多くの観衆から拍手をもらったときに感じる達成感は、やったものでなければわからない大きなものだからです。

 ふだんの学習活動や学級活動でも同じように個を生かし、十分な達成感を与えられるよう、努力をしていたつもりです。しかし、演劇活動のようにうまくできたことは、ほとんどなかったように思います。それは教師生活での心残りの一つです。授業での脚本と演出の力が不足していたということでしょう。

 一斉授業の中で全員の個を生かすことはたいへん難しいことです。また、全員に大きな達成感をもたらすことはさらに難しいことでしょう。しかし、そんな中でも、個を生かし、数多くの達成感を与えられる授業の名脚本家であり名演出家である先生がいらっしゃいます。そんな先生がどんどん増えてくれることを期待したいですね。

高柳 新(たかやなぎ はじめ)

欧風カレー専門店『アルパッシェ』オーナー
四半世紀の小学校教師経験と小学生卓球チーム指導者として全国大会の出場経験。そして現在は、学校を外から見ることのできる立場を生かし、現場の先生方を応援したいですね。

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