2008.01.13
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「校務の情報化」

株式会社内田洋行 教育総合研究所 梅香家 絢子

新年明けましておめでとうございます。
早くも2週間が過ぎ、もう日常に戻ってきた頃でしょうか?

第二期のつれづれ日誌はちょうど真ん中を過ぎたあたりです。
残り半分なので1つ1つ大事にしていかなくてはと思いつつ、、、
今日は「校務の情報化」を取り上げてみたいと思います。

* * *

お正月の特番で、ある小学校の先生の一日を取材したものを見ました。朝7:50登校、すぐに部活動監督、その後学校を出て地域の人と登校パトロール、戻ってきてようやく1時間目の授業開始。休み時間は次の授業準備に提出物の添削、その間も子どもたちは話しかけてくるし、やっと一息つける給食の時間も書類確認は続く。。。トイレに行く時間も全くない、そんな午前中でした。

この番組が行ったアンケート調査で先生の多忙の一番の原因として挙がったのが「文書管理」。確かにこのスケジュールが日常だとしたら、文科省や教育委員会から依頼される公式文書に加え、子どもたちに関わる書類をこなしていくのは大変と思います。
それが毎日繰り返されるわけですから。

ただ、文書管理自体は必要なものであれば仕方がない。
であれば、問題はその”方法”です。

…ここにパソコンがあったら…と考えてしまいます。
学校は市役所や民間企業と比べると環境が整っていません。
自分のパソコンを持ち込んで文書を作り、USBメモリで持ち歩く。
よく聞く学校の現状ですが、この場合多くの情報が先生個人のパソコンで保存され、効率は良くないし、何よりセキュリティが問われる昨今大きな問題につながりかねない。先生が身をもって実感していることではないでしょうか?

* * *

実際、「校務の情報化」を検討する自治体はこの数年確実に増えています。それで実現できることを3点にまとめてみました。

= = = = = = = = = = = = = =
・市内共通の校務システム導入による事務及び操作の簡易化
・データの一元管理による各種文書作成の正確化・効率化
・学校間・教職員間のコミュニケーションの活発化
= = = = = = = = = = = = = =

例えば学籍・出欠・成績管理、週案管理等の情報を1つのデータベースで一元管理することで、入力・編集・出力(印刷)の一連の流れをスムーズにする。また、校内や学校間の日々の連絡事項に関してもメールや掲示板を使うことで迅速かつ正確にする。
つまり、“机の上にパソコン1台さえあれば、どの先生も、自分が必要とする情報にすぐにアクセスできる”という環境づくりです。


一方で、色々な実践を聞くとすぐにはこうもいかないようです。
多く共通する課題は、そもそもの環境整備が十分ではないこと。
パソコンに対して苦手意識を持つ先生はまだ多いということ。

一人一台の教職員用のパソコンをすでに整備している自治体はまれで、今まさに予算化されているところです。もともと慣れないパソコン業務に、環境が十分に整備されない状況で“さあ使ってください”と言われても使いこなせるわけはなく、余計に負担が増えてしまう。校務にばかり時間を費やしているわけにはいかず、なおさら使わない。長期的に見れば良いものとわかっていても、今やろうとはなかなか思えない。それが今の「校務の情報化」の現状ではないでしょうか。

* * *

「校務の情報化」は今、試行段階の自治体が多いと思います。
言い換えれば移行時期。多少の壁や混乱はつきものです。
環境を整えつつ、研修・フォローを適宜実施し、徐々に正のサイクルへとつなげていく。その実現には綿密な計画と根気が必要なのだ、と色々な自治体の取組みを見て感じます。



上で紹介した番組ご覧になった方も多いのではないでしょうか?
教育改革にはまず教員改革を。
そんなメッセージが込められていました。

3年後・5年後の「校務の情報化」が、先生のゆとりにつながっていることを願って。

梅香家 絢子(うめがえ あやこ)

株式会社内田洋行 教育総合研究所
「開かれた学校づくり」の言葉に惹かれてこの道に。今は仕事を通して、全国の教育現場で実践されている様々な取り組みに驚き、学ぶと同時に、“企業の立場からできること”も学びながら活動する日々です。

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