2007.12.02
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生徒一人一台PC

株式会社内田洋行 教育総合研究所 梅香家 絢子

先日、ある学校の公開研究会でこれまでにあまり見たことがない「普通教室の情報化」を見てきました。

その学校は今年の春に新設された中高一貫の公立中学校。
県の研究校として色々な特色ある活動が実践されていましたが、中でも目を引いたのが、全校生徒に“一人一台”のパソコンが与えられていたこと。パソコン教室ではなく “普通教室で”、先生ではなく “生徒全員が” 使うためのノートパソコンです。

私自身初めて見た学習環境で、そこでどんな授業がされるのか想像できなかったのですが、実際に授業を見て「なるほど」と思いました。なぜなら40人が一斉に集う教室で、それぞれの生徒が自分のやりやすいペースで着実に学習を進めていたからです。

* * *

1時限目、子どもたちが自分のノートパソコンを持って席に座るやいなや、ある画面を開いて一斉に練習問題を解き始めました。ある教室では漢検に沿った漢字練習、隣の教室ではヘッドホンを使いながらの英単語練習、そのまた隣のクラスでは数学の不等式のドリル演習。この学校ではこんな風に毎朝1時間、独自のe-Learningで国語・数学・英語のドリル演習をしています。朝の時間のドリル演習を実践している学校はきっと多いですよね。少し違うのは、かけている時間とノートパソコンを使っていること。

教室の後ろから子どもたちの様子をしばらく見ていましが、自分のペースでできるせいか、誰よりも早く次の演習にいきたい!という勢いのせいか、どの生徒も集中して取り組んでいます。これを毎朝続けていれば着実に学力向上につながっていくのだろうなと思いました。
さらに授業後に先生の話を聞いていいなと思ったのは、全ての生徒の学習状況が常に把握できること。どの子がどこまで進んでいるのか、どこでつまずいたのかが全てサーバ上に蓄積されていきます。そして先生はそれをいつでも確認できるとのこと。

この学校の研究主題には「個人内評価を生かした指導の工夫」の言葉。朝のe-Learningはまさにその工夫の1つだそうです。


* * *


1クラスに生徒が30人から40人。先生は1人。

色々な授業を見る度に、「生徒みんなが満足する授業をするって大変だなぁ」とよく思います。
塾などですでに勉強済みの子はさらっと問題を解いてしまう。
一方、納得できない子は授業中いつでも“わからない”と手をあげる。先生がその子の席で個別に指導している少しの間、他の子はまた暇を持て余してしまう。中には“わからない”と言えず、そのままで授業を終えてしまう子もきっといるのでしょう。

子どもたちが自分のペースで楽しみながら意欲的に勉強できる授業。先生が生徒一人ひとりの学習状況を把握し、より個別に指導できる授業。チームティーチングや習熟度別学習など色々な学習の形が出てきていますが、今回初めて見た生徒一人一台のノートパソコンを使ってのe-Learningもその新しい学習の形なのだと感じました。


「パソコンが子どもたちにとってノートや教科書と変わらない
“学習道具”になっていました。」

授業後の意見交換会である先生が言っていた感想。
今はまだめずらしいこんな授業ですが、いつか当たり前の風景になる日がやってくるでしょうか。

梅香家 絢子(うめがえ あやこ)

株式会社内田洋行 教育総合研究所
「開かれた学校づくり」の言葉に惹かれてこの道に。今は仕事を通して、全国の教育現場で実践されている様々な取り組みに驚き、学ぶと同時に、“企業の立場からできること”も学びながら活動する日々です。

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