2007.10.01
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スーパーマン現れる

横浜市立みなと総合高等学校 有馬 真由美

「先生、今連絡があって、北鎌倉で電車が止まっていて、遅れるみたいです。ジェイミー先生たちも一緒だそうです」
「ありがとう。みんな、聞いてくれる。今ね、北鎌倉と鎌倉間の踏み切りで、車が立ち往生しているそうです。上下線とも運転を見合せているから、しばらく時間がかかると思う。少し待っていてね」
「じゃあ、ドリンク買ってきても良いですか?」
「いいわよ。あまり遠くまでいかないでね」
 
 待ちに待った姉妹校の面々がカナダのバンクーバーから来日した。生徒17名と先生2名。みんな元気いっぱいだ。初めての週末は、親睦をかねて鎌倉へホストファミリーと一緒にでかけた。お天気にも恵まれ、順調な出だしかと思われたが、集合時間直前になって、北鎌倉―鎌倉駅間の踏切で車が立ち往生したため、横須賀線が上下線で運転を見合わせてしまった。とはいえ、急ぐ旅でもなし、カナダの生徒たちは周辺の店をひやかしたりして時間を潰している。

 「先生、電車が動きだして到着したみたい」
 「あ、来た~!!」
 「オハヨウゴザイマース」

 生徒と一緒に到着したカナダ人の先生おふたりが笑いながら、掌を見せてくれた。すすみたいな汚れで真っ黒だ。聞けば、今回の遅れの原因となった車をJR職員や生徒たちと一緒に抱えて移動させたというではないか。来日早々、何という武勇伝。

 みんな揃ったところで、まずは最初の目的地である鎌倉大仏へ。とはいえ、切符を買わせるのも、自動改札を通すのも一苦労だ。とって食われるかのように、おそるおそる切符を改札機に通す姿に思わず微笑んでしまう。ちなみに訪問箇所は、鎌倉大仏と鶴岡八幡宮のふたつだけ。沢山の場所を見ることよりも、ホストと一緒の時間をゆっくり楽しんでほしいからだ。私たちにとって日常の風景であっても、カナダの生徒には珍しいかもしれない。それに気づくにはゆとりが必要だ。

 今回の鎌倉散策のために、国際交流バディは、夏休み前から準備を始め、観光ガイドを作ってくれた。事前にこれを渡したおかげか、2年前は素通りだった手水舎で、カナダの生徒はみな手を洗っていた。さらに鶴岡八幡宮では、結婚式に遭遇するというおまけがついた。雅楽の音にのってしずしずと現れた神主や巫女、着物姿の新郎新婦に感激し、カメラにおさめていた。真夏を思い出させる残暑の中、歩くにしても限度がある。鶴岡八幡宮でみんなで記念撮影をしてお開きとした。

 さて、滞在期間も半ばを過ぎ、カナダの生徒たちの元気度が増す一方で、ホスト役の生徒たちに疲れが見えてきた。文化祭を控えて、忙しさを増す自分の予定をこなした上に、カナダの生徒たちをもてなそうと、がんばっているからだ。再会の興奮がさめて数日がたち、疲労と共に自分が描いた受入れの理想と現実とのギャップに襲われ、戸惑ったりフラストレーションを感じたりしている。

 団体旅行では、日ごろ気づかない友人の一面にとまどったり、怒ったり、傷ついたりするものだ。カナダの生徒のそうした気持ちの揺れに気づき心を痛める生徒がいる。ここは日本なんだから、少しはこちらのやり方に合わせて行動してほしい。気持ちを伝えたくても細やかな表現が英語ではなかなか伝えられないと涙する生徒がいる。私としては聞き役に徹し、生徒のモヤモヤした気持ちを吐き出させて様子を見るしかない。とはいえ、生徒の話しを聞きながら、短期間でよくぞここまで相手の気持ちによりそって心を砕いてくれているなあと感動していた。

「言葉にこだわらず、大切に思ってるからねって言って、ぎゅっと抱きしめちゃえば」
「それで伝わるかな」
「言葉をちりばめるよりも、目を見て何度でも伝えるの。相手の気持ちも大切だけど、何よりあなたが心配しているという気持ちを伝えてあげるのが一番の支えになるはずだよ」
「はい、やってみます」

 文化祭間近、展示や舞台の準備も十分とはいえず、ちょっと、いえ、かなり心配だけれど、とにもかくにも生徒と一緒に楽しもう。

写真1:手水舎で手を洗うカナダの生徒たち
写真2:鎌倉大仏の中に入って感動してました
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有馬 真由美(ありま まゆみ)

横浜市立みなと総合高等学校
民間企業から教育現場に飛び込んで3年目。3年の担任として緊張の春です。中華街そばの地の利を生かし、お茶の間国際交流を生徒と一緒に取り組んでいます。

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