2007.09.26
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自転車通勤から見えてきたこと

宮崎県えびの市立加久藤中学校 教諭 山下 豪一

 最近私は、自転車通勤をはじめました。8月下旬からはじめてかれこれ1ヶ月。特別なことが無い限り片道約14キロの道のりを往復しています。はじめたきっかけは、夏休みの定期健康診断の結果と、娘たちの言葉。

検診医:「だいぶん体格がいいようですね。現在86キロですか。身長から考えて、20キロ落としましょう。ご家族を支える、働き盛りの大事なお体です。がんばりましょう。」
娘たち:「おとうさん、ちょっと食べ過ぎ。お腹が出てきたでしょ。ほら、ぷよぷよ!“メタボ”だよ!」(次女は、私のお腹をつつきながら楽しんでいます。ちなみに妻は、私のフォローせずに、ことさら静かに娘たちの言うことを黙って聞いています。矛先が自分に向かないように…)

 2階の教室に駆け上がるとき、少しきつく感じ始めたこのごろ。東国原知事ではないが、この体を、“どげんかせんといかん!”と一念発起。ジョギングはきついので、適度な運動負荷のある自転車をはじめることにしたのです。(写真1枚目:私の愛車のマウンテンバイクです。)

 毎日、片道約40分のサイクリングです。自動車通勤では気にかけもしなかったことが、気になるようになりました。それは“歩道の段差”です。
 交通安全の観点から、最近の歩道は、自転車通行可の歩道がほとんどです。当然私は歩道を走っていましたが、やがて歩道があっても車道を走るようになりました。
 歩道は、車道から約20センチほど高くしてありますが、道路に隣接する家屋や施設のために切り欠いて車が乗り入れられるようになっています。歩道上には、この切り欠きのおかげで、平らではなく,かなり起伏があります。これが、自転車通勤には結構きついのです。走りにくいのです。(写真2,3枚目)

 車道を走るようになると、時折ドライバーからの厳しい視線を感じるようになりました。よくよく考えると、時間は、通勤時間帯。車量の多い時間帯です。対向1車線の道路でも、歩道が整備されている道なので、路側帯が大変せまい車道になるのです。その車道を自転車が通行するわけですから、当然私を追い越す車は、徐行のため減速を強いられることになります。ドライバーにすれば、「なんで、自転車通行可の歩道を走らないの?。」という気持ちになるのです。
 私としては、「40分も自転車を一生懸命こぐのは疲れるから、走りやすい車道を走らせてよ! こちらも左側ぎりぎりに寄って、走っているのです。自転車は、道交法上車両だから、車道を走ってもいいじゃない!」と言い返したい気持ちになります。

 ドライバーの厳しい視線のことを,腹立たしい思いであれこれ考えていると、突然自分が恥ずかしくなりました。以前、センターラインの無い道を自動車で走っていた時の事を,突然思い出したのです。
 おばあさんの乗ったバイクが前を走っていました。対向車が来たとき、
「もうちょっと、左によってくれれば、スピードを落とさなくてすむのに…。おばあちゃん、もうちょっと考えてほしいねー。」
と心の中でつぶやいたのです。
 多少の状況の違いはあれ、自分も、相手のことを理解していない厳しい視線のドライバーの一人であったことに気付き、一人恥ずかしい思いでいっぱいになりました。

 他人を理解することは、実は大変難しいことを学びました。相手を本当に理解する近道は、理解しようとする人の置かれた状況を、できるだけ体験してみることではないかと思います。
 私は教師ですが、今まで、どれだけ生徒を理解できていたのか。もちろん努力をしてきましたが、それがどれだけ生徒理解につながっていたのか、改めて考えさせられました。こんな考えをめぐらしているうちに、ふと中高生の頃見た、テレビ番組の一場面を思い出しました。(遠い昔の話で,確かな記憶ではないのですが…)

 型破りな男性教師と、模範的な女性教師。家出だったか、何か問題を起こした児童の原因を,二人は探っていました。男性教師が、校庭にあったコンクリートの土管の中に座り込んでタバコをふかしています。そこに女性教諭が来て、

女性教諭:「先生、何をやってらっしゃるんですか?」
男性教諭:「いや、あいつが、問題を起こす前に、こうしていたって聞いたものだから…」

 「子供の目線に立って、児童・生徒理解を!」よく言われることです。先の男性教諭の行動は、今思えば,児童・生徒理解の原点ではないのか。今回の自転車通勤を通じて、相手の,また生徒の立場に立つことの大切さを改めて考えさせられました。

余談: 現在1.8kgの減量成功です。あと残り、18.2kg!
IMG_1885_R.jpgIMG_1866_R.jpgIMG_1882_R.jpg

山下 豪一(やました ひでかず)

宮崎県えびの市立加久藤中学校 教諭
山下豪一(ひでかず)と申します。鹿児島,熊本両県に接する宮崎県西部のえびの市で、社会科を担当しております。校務のIT化に興味を持つ教員です。

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