2007.08.26
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簡単な 俳句作るの 難しい

京都外国語大学 非常勤講師 森 美抄子

 はじめて日本語に触れた外国人たちの中には、音声に非常に敏感な人たちがいます。

 私たちは普段「母音の無声化」や「ガ行鼻濁音」ができていようが、できていまいが、そんなことは気にしていません。「ん」の音にしても「N」だろうが「M」だろうが、あるいは鼻音だろうが、いちいち意識をせずに話しています。

 ところが、外国語ではそのような音の違いで意味が違うという場合がありますので、「今言ったのはどの発音か」ということを聞かれます。無声化や鼻濁音が苦手な者としては、イタイ質問です。だって関西弁にはないんだもの・・・。

 逆に指導者側が気になるのが「拍感覚」です。私たちはカナひとつで一拍という感覚が染み付いているので、学習者たちが話す長さの足りない促音や長音なんかにはとても違和感があります。外国人なまりのステレオタイプな日本語を言おうとするときは、この拍感覚をずらしていますよね。

「ミナサン、コニチワ。ワターシワー、マイケルデース」
 という欧米風の場合も、
「ワタシ、チュゴクカラ キタアルヨ」
 という中国風の場合も、拍の長さが微妙に違いますね。もちろん、イントネーションの影響もありますが。

 この拍の指導のとき、よくやるのが、一拍ずつ手を叩いたりするような方法。「きって」なら三回手を叩く、というようなやり方です。もちろん、これは間違いではありません。

 でも、もっと効果的なのは、二拍子の感覚を利用する方法です。
「きって」「かって」「もって」「かえって」
 と、ゆっくり単語を続けて言ってみてください。ゆっくりですよ。

 すると、おそらく単語と単語の間に一拍ぶんあるはずです。
「きって○かって○もって○かえって」
 のようになりませんでしたか? これを二拍で一回手を叩くと、
「きっ / て○ / かっ / て○ / もっ / て○ / かえ / って」
 となります。

 ということは、最初は四文字の単語から練習したほうがわかりやすいということです。
「おんがく」「がっこう」「とうきょう」
 などの単語を使って、二文字(拗音があれば三文字)をひとつの単位としてとらえるやりかたをしたほうが、促音や長音の長さをつかむ練習がしやすくなります。

 つまり、日本語は四分の二拍子。これで数えると、俳句は12回手を叩くことになりますよね? 五・七・五は文字の数。拍は八・八・八。調子をとったらその半分の四・四・四。

 そうそう、毎年学生たちに川柳を作ってもらうとき、説明をはしょって、「五・七・五」だということしか言わなかったら、漢字を含めて「五・七・五」にしてしまいます。単に見た目の文字の数だと思っていて、拍だという意識がないんですね。それで、「ひらがなで、五・七・五です」と言い直します。

 では、最後に傑作をもう一句ご紹介。

 「ゴキブリも じぶんのねがい かなえたい」

森 美抄子(もり みさこ)

京都外国語大学 非常勤講師
留学生たちに日本語を教えるのが仕事です。そして、日本語教育を学んでいる学生たちにその面白さと厳しさを伝えていくのも仕事です。人間だって宇宙人、日本語だって外国語。

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