2007.08.01
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「不言実行」,「縁の下の力持ち」… もはや現代日本の美徳ではないのか?

宮崎県えびの市立加久藤中学校 教諭 山下 豪一

 「不言実行」,「縁の下の力持ち」…,これらのことわざに異を唱える人はいないでしょう。また,諸外国に比べこれらのことわざのように実行する人が多いことから,日本人の美徳といっても過言ではありません。

 私も教師としてこのことわざのような価値観は,大切だと思います。事実,生徒に対しこれらのことわざのような人生を送れば,必ず世の中から認められる…。と教え続けてきました。読者の皆様も同じ思いの方は多いと思います。

 ところが,バブルの崩壊以後のビジネスの世界では,「不言実行」,「縁の下の力持ち」…が否定れる傾向にあるそうなのです。私は,教師になる前にとある電子部品メーカーで働いていた関係上,現役ビジネスマンと今でもつながりがあり,つい先日,所用で上京した時の飲み会で先記のことを聞いたのです。

 バブルの崩壊以後,企業は賃金体系を年功序列報酬から成果報酬への変換を進めてきました。そこで,個人に年間(もしくは半期)目標を会社に明示させ,その成果を報告させて個人ごとに査定を行う。この個人査定のときに,大きく物言うのが発表力・説明能力。つまり,“プレゼンテーション能力”だということです。

 友人が言うには,「同じ成果を出しても,プレゼンがうまい者が高く査定される。また,課の皆で頑張ったからと遠慮したプレゼンだと,遠慮しないプレゼンをした者が高く査定される傾向にある。」とのこと。また,私に対し「“遠慮”,“不言実行”,“縁の下の力持ち”といった美徳はこれからビジネス界では通用しなくなるだろう。“有言実行”,“積極的自己主張”の時代になる。君は教師だから,粉飾では困るが,自分の成果を相手に強く印象づける“プレゼン能力”を生徒に身につけさせないといけない。」と言いました。

 今まで,美徳として生徒に言い続けてきたことが,実社会で通用しなくなりつつあることに衝撃を受けました。私は,心のどこかに引っかかるものを感じながらも,実社会の変化に気付いていなかった恥ずかしさもあって,何も言えずに東京を後にしたのでした。

 しかし,個人の成果を自己主張するだけでよいのでしょうか。これは,“個人プレーに走る人間”を増やす結果にならないでしょうか。ことわざにもあります,「三人寄れば文殊の知恵」。団体競技でも,個人の力量がいくら高くても,チームプレーができなければ勝てない。個人の力を出し合い,協力して,個人の持っている能力以上の結果を導く。人間の面白さは,1+1=2ではないこと。協力しだいでは0(ゼロ)の場合もあるし,3の力にもなる。

 もちろん,プレゼン能力も大切なので,生徒には指導します。しかし,今までどおり“遠慮”,“不言実行”,“縁の下の力持ち”といった,チームプレーを大切にした指導を,私は続けて行きたいと思います。

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■「教育つれづれ日誌オフ会リポート」はこちらから
http://www.manabinoba.com/index.cfm/4,8869,30,html
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山下 豪一(やました ひでかず)

宮崎県えびの市立加久藤中学校 教諭
山下豪一(ひでかず)と申します。鹿児島,熊本両県に接する宮崎県西部のえびの市で、社会科を担当しております。校務のIT化に興味を持つ教員です。

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