2007.07.18
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

無いことは,本当に貧しいことなのか。嵐の夜に,思うこと…

宮崎県えびの市立加久藤中学校 教諭 山下 豪一

 「ろうそくの明かりも,いいものだね。」と長女。「豪華な誕生日みたいだ。」とたくさんのろうそくを見て,はしゃぐ末っ子の長男。「なんかムードあるわね。」と妻。7月13日。宮崎は台風4号の接近により,断続的に強い風雨に見舞われていました。そのため,10年ぶりでしょうか。20分程続く,長い停電になりました。
 自然と,家族がろうそくの周りに集まり,顔を寄せ合って,いつもより家族の会話がはずみました。これも,暖かいろうそくの明かりが,私たち家族の心を和やかにしてくれたからでしょうか。

 電気が止まり,確かに大変でした。長女は,自分の部屋で勉強していましたし,妻は,洗い物の最中。私と次女と長男は,居間でテレビを楽しんでいました。それが突然の停電で,自分のやっていたことが中断されたのですから。しかし,この停電によって,不便ながらも心豊かな時間を持つ,貴重なきっかけを得ました。

 ”不便ながらも,心豊かな生活…”と考えていると,ふと8年前のアフリカのタンザニア旅行を思い出しました。青年海外協力隊で派遣された,大学時代の親友を訪ねたときのことです。タンザニアで,確か第2の都市タンガでしたが,冷えた清涼飲料水が簡単に手に入らず,町の中心部に出かけ冷房の効いた喫茶店に入り冷えたコーラを飲んだとき,おもわず“天国だ!”と友人と話したことを思い出しました。(現在では,そんなことはないと思いますが…)そのとき,「日本は豊かな国である。」と,しみじみ感じました。
 しかし,その旅行も2週間を過ぎるころから少しずつ考えが変わってきたのです。
 確かに,タンザニアは日本に比べ,物は少なく不便なのですが,子供たちはおもちゃがない中で,自分たちで工夫して遊び道具を作っていました。私が驚いたのは,ビニールのレジ袋。日本では,買い物でもらった後は,ゴミ袋として使うのが関の山ですが,タンザニアの子供たちは,それを細く手で裂いて,つなげ,それを程よい張力で巻いて,ボールを作りサッカーを楽しんでいました。
 また,みやげもので買った,フォルクスワーゲン・ビートルの模型にも驚きました。(写真1枚目)何と,材料は木材。それを削り出し見事に再現。圧巻は,車輪の取り付け。針金で,サスペンションを再現。車輪は回転するだけでなく上下に動くようになっていました。(写真2枚目参照)
 物がない中で,いかに工夫し,今ある材料で物を作り上げるか。そのタンザニア人の生き方に,精神的な豊かさを感じたのでした。心の豊かさは,むしろ日本は無いのかもしれない…とさえ思えました。

 停電をきっかけに,物が無いことは,物質的には貧しくも,決して貧しいことではなく,むしろ精神的には豊かであることを再認識できました。8年前のタンザニアでの感動を,思い出させてくれた停電の夜でした。

 そうだ!この感動を,今の勤務校の生徒には話していない。このビートルを持っていって,話してあげよう。私のようにこのビートルに感動する生徒はどのくらいいるだろうか…。
P7150049_R.jpgNewP7150054_R.jpgP7150055_R.jpg

山下 豪一(やました ひでかず)

宮崎県えびの市立加久藤中学校 教諭
山下豪一(ひでかず)と申します。鹿児島,熊本両県に接する宮崎県西部のえびの市で、社会科を担当しております。校務のIT化に興味を持つ教員です。

同じテーマの執筆者

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop