2007.07.01
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学生先生方式

京都外国語大学 非常勤講師 森 美抄子

 つい先日、教育実習期間が終わりました。
6月は小・中・高でも実習の学生さんを受け入れていらっしゃることと思いますが、日本語教育の現場でも、将来日本語の先生になりたいという学生さんの実習授業が数週間にわたって行われます。

 日本語教師というのは、免許があるわけではありませんので、言ってみれば誰でもできる仕事です。でも、教えるために必要な知識は幅広く、また、教える技術というのもある程度鍛えられないと学習者たちの信頼を得ることが難しいので、この実習はたいへん貴重な体験になります。

 日本語教育の現場は、ほとんどの学習者が子どもではないので、大人として常識的にふるまえるかどうかが問われるところです。彼らは結構シビアな目で見ているんですね。
 というのも、一口に留学生といっても、社会経験が豊富な人もいれば、現職の教員もいますし、博士レベルの研究者もいたりするので、「学生」感覚で対応してはいけないのです。

 彼らの視点で、私たちの教え方は冷静に分析、評価されています。わかりやすいか、練習の方法や量は適切か、公平か、テストの妥当性はどうか、などなど、実に怖いものです。

 中には子どもっぽい学習者もいて、自分の基準に合わない先生に対してあからさまにナメた態度を見せることもありますが、たいていは穏やかに、さりげなく自分の意思を表現します。なので、気づかないこともあるぐらい。もちろん、授業中は協力的で、非常にまじめです。

 では、この教育実習はというと、好意的に受け入れてくれる場合がほとんどですが、やはり授業の出来がよくないと不満を持ちます。自分たちは日本語学習に貴重な時間とお金をかけているという思いがありますので、それに実習生が応えられない場合は問題なんですね。「授業をさせてもらっている」という意識をもっているかどうか、という基本的なことではありますが、そこが大切。「自分の単位のために」とか「仕方なく」と思っている実習生は見事に見抜かれます。

 さて、今回の実習。
ある中国人学習者はこれを「学生先生方式」と名づけていました。
 何をかいわんや。

森 美抄子(もり みさこ)

京都外国語大学 非常勤講師
留学生たちに日本語を教えるのが仕事です。そして、日本語教育を学んでいる学生たちにその面白さと厳しさを伝えていくのも仕事です。人間だって宇宙人、日本語だって外国語。

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