2007.06.25
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スイッチオン!

横浜市立みなと総合高等学校 有馬 真由美

 ズジャジャジャ、ズンジャ。ズジャジャジャ、ズンジャ。タタラタララララ~タララ~♪
 ドラムやウッドベースの軽快なリズムにのって、クラリネットのもの哀しげな音色がメロディーを奏でる。朝の蒲田駅。東急線とJRとをつなぐ連絡通路に、今朝もジャズの名曲「TAKE5」があふれていた。源は、ラーメンスタンド。つねに客足が途絶えることのないこの店から、通勤時間帯の朝7時ごろだけ、ジャズが流れているのだ。心なしか、麺の湯をきる、店主のリズミカルな手元が、パーカッションを刻んでいるかのように見える。BGMにしては大きい音量に、通りかかった人は思わず振り返っている。かくいう私も初めは戸惑ったが、今ではすっかり慣れてしまった。お、今日はスウィングだ。これは誰が唄ってるんだっけ?と、つい耳を傾けてしまう。帰りがけに前を通っても音楽に気づいたことはない。きっと、好きなジャズをかけて、店主は仕事モードへと気持ちを切り替えているのだろう。

 私にとって仕事のスイッチが入るタイミングは、蒲田から乗車した京浜東北線が多摩川を越えるあたりだ。すいた下り電車に乗り込み、腰をおろしてぼうっと向かい側の車窓を眺めていると、まもなく視界が開けて多摩川の河川敷が目に飛び込んでくる。時間にすると数十秒。多摩川を越えて神奈川県側に入ったその時、ONランプが点灯する。スムーズにスイッチが入るときもあれば、むりやり押し込むときもある。そしてやおらスケジュール帳をとりだして、昨日やり残したことや今日やるべきことを簡単にチェックしながら、何となく今日のプランを考えていく。ここで、決してがんばって偉そうなリストを作ってはいけない。急な仕事や、生徒から無理難題のリクエストがきても、ひきつった笑顔で応えられる余裕を残しておくためだ。さもないと、リストのチェックボックスに「→(継続中)」やら「×(削除)」が目だって気が滅入ってしまう。

 さて、ONが多摩川で入るのならばOFFも多摩川かというと、さにあらず。OFFになるのに時間はかからない。石川町を電車が滑りだした瞬間にはランプは完全に切れている。

 
写真1: 朝の7時にもかかわらずラーメンスタンドのカウンターは、ほぼ埋まってる。
写真2: 人がこぼれそうな上りホームを尻目に、閑散とした下りホーム。
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有馬 真由美(ありま まゆみ)

横浜市立みなと総合高等学校
民間企業から教育現場に飛び込んで3年目。3年の担任として緊張の春です。中華街そばの地の利を生かし、お茶の間国際交流を生徒と一緒に取り組んでいます。

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