2007.06.17
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「ない」は「あらへん」になります。形容詞とちゃうねん。

京都外国語大学 非常勤講師 森 美抄子

 コメントありがとうございました。今日は、日本語の話はまたにして、学生たちのことをお話をしようと思います。

 関西で日本語を学ぶ学生たちは、教室の外に出ると聞こえてくる関西弁がとても気になるようです。ときどき、どこからか仕入れてきて「おおきに」や「わからへん」と教室で使う学生もいます。教室で学ぶ日本語とは違うぞ、と気がつく頃にそういうことが起こります。

 学生たちにとって、一番簡単な関西弁が「ない形」である「へん」の使い方です。活用は「ない」と同じで、「食べない」は「食べへん」だし、「行かない」は「行かへん」です。「する」と「くる」については、地方によって違う(例えば「こない」は「きーひん」とか「けーへん」あるいは「こーへん」などになったりする)ので、あまり深くは話しませんが。

 共通語の「ない形」ともっとも異なる点が「ある」という動詞についてです。教科書では「ある」の「ない形」は形容詞の「ない」になっています。ところが、関西弁では「あらへん」とちゃんと活用するんですね。

 というような話をして、関西アクセントで話をしたりすると、「わあ」と喜んでくれます。そこで、気をよくして紹介してしまうのが、「ちゃうちゃう(違う、違う)」です。某テレビ番組でもやっていましたが、向こうにいる犬を見て、
「あれ、チャウチャウちゃう?」
(あれはチャウチャウではありませんか)
「えーっ?チャウチャウちゃうんちゃうん?」
(チャウチャウではないのではありませんか)
「いや、ちゃうちゃう。あれ、チャウチャウちゃうんとちゃう。チャウチャウやで。」
(違います、あれはチャウチャウではないのではありません。チャウチャウです)
というようなやりとり。

 学生たちはいろんなことに興味を持って日々教室に持ってきてくれます。そういえば、「女子高生に声をかけられたりするが、あんな短いスカートをはいているので、どこを見ていいかわからない」と恥ずかしがっていたヨーロッパ人もいました。また、「どうして日本人は自分の降りる駅でちゃんと目覚めるのか。どうやったらそのワザが身につくのか」と質問されることもよくあります。「道にゴミ箱がほとんどないのはどうしてか」とか、「そのわりに、道がきれいなのはどうしてか」ともよく聞かれます。
 
 昨日は「日本では道でティッシュを配っているが、それは店でも売っているものなのか」という質問を受けました。あらら、日本に来てもう3か月になるのに、一度もティッシュを買ったことがないってことですね。風邪をひいて、初めてそれに気がついたらしいです。

 日本って、いい国です。

森 美抄子(もり みさこ)

京都外国語大学 非常勤講師
留学生たちに日本語を教えるのが仕事です。そして、日本語教育を学んでいる学生たちにその面白さと厳しさを伝えていくのも仕事です。人間だって宇宙人、日本語だって外国語。

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