2007.05.23
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えっ!それでも君たちは登るのか… 加久藤中学校登山遠足

宮崎県えびの市立加久藤中学校 教諭 山下 豪一

皆さんは,霊峰「高千穂峰(たかちほのみね)」をご存知でしょうか。宮崎・鹿児島両県境に位置し,霧島屋久国立公園に属する標高1573mの山です。霊峰といわれる所以は,天照大神の孫にあたるニニギノミコト(瓊瓊杵尊)が,日本の統治のために神として初めて地上に降り立たれた…つまり天孫降臨の神話があるからなのです。(一説には天孫降臨の地は,県南にあるこの高千穂峰ではなく,県北の宮崎県高千穂町である…ともいわれております。)また,この山は,幕末,土佐の坂本龍馬が,妻おりょうさんと登ったことでも有名です。(このことが,日本人初?の新婚旅行であるというひともあるようです。)

今年,加久藤中学校は,全学年この霊峰高千穂峰に登山遠足に行くことになったのですが,私も40歳代,○○ボリックとやらの仲間入りを果たし,少々登山遠足が重荷になってきつつあるこのごろ。生徒には申し訳ないのですが,「雨にならないかなー。」とひそかに思うのでした。
遠足1週間前の3学年会議で,安全対策を考えながら職員の配置を話し合いました。私は内心,「先頭になると,こまったなー。生徒に抜かれて,バテ気味の姿をさらすことになると,日ごろ積み上げてきた教師の威厳…?が,跡形もなく崩れ去ってしまうな…。」と,考え事をしながら会議に参加していました。それを見透かしたかどうかはわかりませんが,学年主任のK教諭,「山下先生には,最後尾で遅れた3年生のフォローをしてもらいましょう。」
やった!K教諭,あなたはよく学年職員を把握している主任です。ありがとう!。

それからの1週間,生徒が「先生,今度の遠足,雨で中止になってほしいなー。ボウリングがいい。(雨天の場合は,ボウリング大会の計画でしたので)」と言うものなら,
「何を言っちょるか。若いもんが登らんで,どげんすっとか!。40代の私も登っとじゃから,気張らんといかん。議(ぎ)を言うといかんがね。」(標準語訳:何言ってるの。若い人が登らないでどうする。40代の私も登るのだから,屁理屈を言ったらいけません。)と,元気はつらつ,生徒をなだめる私でした。

さて,遠足当日5月11日(金)。天気快晴,絶好の登山日和。加久藤中学校の登山開始です。最後尾というものの,やはり健康診断で,医師から15キロ減量を勧められた体には,きついものがありますが,最後尾の遅い生徒に合わせているので,「ほら,気張っど。」と,声をかけ余裕の顔を装いつつ,何とか教師としての威厳?を必死に守りながら,登っていきました。

そうこうするうちに,先頭が登頂して30分ぐらいして,学年主任から携帯電話で連絡があり,「最後尾はそのあたりで昼食をとらせて,下山してくれ。」とのこと。最後尾でゆっくり登ってきたものの,もうそろそろ限界に近かった私。天の声に聞こえました。そこで私は,最後尾の3年生女子のグループに,「そろそろここで昼食にして,下山しようか。」と話しかけ,ザックをおろしかけました。

そのときです。

3年生女子: 「先生,私たちは最後の登山遠足です。全員登って,クラスで記念写真を撮りたいです。」

私(心の中のつぶやき): えっ!それでも君たちは登るのか・・・。

私: 「……(しばらく呆然,気をとりなおし)。さ,さすが3年。もうちょっとじゃっで,気張っど。」(標準語訳:もうすこしだから,がんばろう。)

最後の気力を振り絞って,生徒と山頂を目指しました。
山頂では,3年生が拍手で私と最後尾のクラスメートを迎えてくれました。食事時間もままならない山頂滞在20分。ですが,彼女らのおかげで,すばらしい景色を楽しめ,卒業アルバム用の登頂記念写真にも納まることができました。

下山途中の私(心の中のつぶやき): 頑張るきっかけをありがとう。
IMG_0577_R.jpgIMG_0566_R.jpgIMG_0588_1_R.jpg

山下 豪一(やました ひでかず)

宮崎県えびの市立加久藤中学校 教諭
山下豪一(ひでかず)と申します。鹿児島,熊本両県に接する宮崎県西部のえびの市で、社会科を担当しております。校務のIT化に興味を持つ教員です。

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