2007.05.14
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プリングルスの謎

横浜市立みなと総合高等学校 有馬 真由美

「いる?」隣りに座ったハワイ出身のリッキー先生が、プリングルスのサワークリームオニオン味を差し出した。授業も終わってほっと一息ついた午後のことだ。
「いるいる、ありがとう」小腹のすいた私は、嬉々と手を伸ばした。
「どっちの面を上にして食べるかで、味が違うって知ってる? 僕はこっち派」といって、えびぞったチップス(写真1)を口に放り込んだ。
リッキー先生によれば、写真1の方は塩味が強く、写真2の方がマイルドだそうだ。さすが、ポテチの国アメリカ!? こちらはそんなこと、ついぞ考えたこともない。何枚か頂戴して味をくらべたが、言われてみれば違いがあるような、ないような。
「反った方は、谷の部分にスパイスが多めに残るので、味が濃く感じるんだ」と、リッキー先生。
「なるほどね。でもパッケージを見ると、山なりの方(写真2)が出ているじゃない。メーカーお勧めはこっちってこと?」
「それは、舌に上手くのって食べやすいからさ」
こんなことでも英語で説明されると、理屈が通っているように聞こえてしまうのは気のせいかしら。
 その日、自分で買ってさらに試してみたものの、確信に至らず胸やけが残っただけだった。

 上下がひっくり返っただけで違いを見せるのは、ポテチに限ったことではないかもしれない。去年から持ち上がりで担任をしている3年生は、4月を境に急に落ち着いて大人びた感じがする。カナダの交流プログラム参加を機に、今まで内に秘めていた何かが表に出てきた生徒もいる。去年は学校に来るだけで精一杯に見えた生徒が、体育祭の応援団をひっぱっている。
 毎日顔をあわせていると、微妙な違いに気づく瞬間がある。残念ながら気づく余裕もなく見過ごしていることのほうが多いだろう。それでも、そんな瞬間を感じて、ひっくり返ったきっかけを想像するのは楽しい。

写真1:リッキー先生おすすめエビぞり型
写真2:舌になじむ山なり型
 
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有馬 真由美(ありま まゆみ)

横浜市立みなと総合高等学校
民間企業から教育現場に飛び込んで3年目。3年の担任として緊張の春です。中華街そばの地の利を生かし、お茶の間国際交流を生徒と一緒に取り組んでいます。

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