2016.04.29
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「ワク熱!」 経験こそが最大の財産

滋賀学園中学高等学校 校長・学校法人滋賀学園 理事・法人本部事務局 総合企画部長 安居 長敏

前回、ここで紹介させていただいた入学式改革。司会進行を中高の生徒会メンバーが務め、後半には『ワク熱!安居教室』と題し、マイケル・サンデル教授の「白熱教室」をモデルに校長自らが授業を行うという、他校でもあまり例がないチャレンジングな取り組みでしたが、予想をはるかに超える成果があり、保護者の期待度も一気に上がりました。

"Real Life" and "Street Smart"

未来の社会がどうなっていくのか、そこで生きるにはどんな力を身につけておく必要があるのかをベースに、そんな滋賀学園生になりたいのか、滋賀学園で何を学ぶのか・・・といったことを、自分との対話の中で考え、みんなで共有し合うことをめざした、50分間の『ワク熱!安居教室』。

実際の進行は、こんな感じでした。

ルール説明(ナレーション)

1:ワクワクしている今の気持ちを大切に。
2:どんなことでもいいから発言しましょう。沈黙はできるだけ避けてください。
3:良い意見だと思ったら迷わず拍手を。
4:自分を変えるチャンス。今までの自分とちょっとだけ違う自分を演出してみよう。

オープニングムービー
Chapter 1 「Activeになろう!」

Q1:滋賀学園で始まる新生活、ワクワクしていますか?(Yes or No)
Q2:本音で答えて!滋賀学園は第一志望でしたか?(Yes or No)
Q3:滋賀学園、もっと有名な学校になってほしい?(Yes or No)
☆Message 1 「自分の居場所を見つけよう! 誰にだって居場所はある!」

Chapter 2 「10年後・2026年、皆さんが仕事をしている未来を想像してみよう」

資料グラフ・映像
1:デューク大学、キャシー・デビットソン氏の「2011年度にアメリカの小学校に入学した子供たちの65%は、大学卒業時に今は存在していない職業に就くだろう」
2:パソコン所有率、スマートフォン・携帯電話所有率、携帯ゲーム機所有率の国際比較
3:AIロボット動画

Q1:皆さんが仕事をする未来、どんな仕事がなくなるだろう?(隣の人と話し合ってみよう!)
Q2:皆さんが仕事をする未来、どんな仕事が生まれるだろう?(隣の人と話し合ってみよう!)
☆Message 2 「自分の未来を具体的にイメージすることをはじめよう!」

Chapter 3 「どんな滋賀学園生になりたい? 18歳の時の自分を想像してみよう」

Q1:どんな仲間をつくりたい?(Open Question)
Q2:どんな部活動、課外活動にチャレンジしたい?(Open Question)
Q3:どんな知識を得ていきたい?(Open Question)
☆Message 3 「18歳の春、自分の描いた夢を実現させよう! 滋賀学園はそのために存在する場所だ!」

校長メッセージ 「"Real Life" and "Street Smart"」
エンディング 「新入生全員紹介ムービー」

新入生(中学生28名、高校生191名)に混じって、在校生(生徒会メンバー6名)も着席。こちらからの質問に対して、どんどん生徒からの発言を促していくスタイルで進めていきました。最初に Yes or No Question を持ってきたおかげで、全体を通して発言が途切れることなく、和やかで活気のある空気が流れていたように思います。

僕は中学校時代、学年最下位の成績でした

後半、まとまった時間を取りたかったこともあり、Chapter 2 の話し合いが十分にできなかったのは心残りでした。そもそも、50分に詰め込むには無理があったのが正直なところです。

そんな中、Chapter 3 の最後で、ある一人の男子生徒がスッと手を挙げ、こんなことを言いました。

「僕は中学時代、成績が学年最下位でした。将来、車の整備士になりたいと思っています。こんな僕でも頑張れば、なれるでしょうか。」

すばらしい発言でした。

私はすぐに「ありがとう!」と彼に返し、「2つの点で良かった」と続けました。

「1つめは、将来、整備士になりたいということをはっきり言えたこと」「2つめは、自分の成績が学年最下位だったことを、これからの頑張りにつなげたこと」。

そして、「成績が学年最下位であっても、それはあなたのごく一部、単に成績という指標で観たら、たまたまある時期に最下位だったというだけで、それが全てではありません。別の指標や観点、例えば走ったりすることや楽器を演奏することなどであなたを観れば、決して最下位ということではないと思います」という流れでその場を展開し、締めくくりの校長メッセージへとつなげていきました。

何のために、どのように学ぶのか

校長メッセージは「"Real Life" and "Street Smart"」。

学校での学びは、"Real Life" = 生活に即した、より良く生きるためのものでなくてはならない。そして、そういった学びは、"Street Smart" = 街(さまざまな人たちとの関わり)の中を生きていくことで育ち、身につくものであり、自分が体験・経験してこそ身につくものであって、単に教室での勉強(教科書やテストなどで磨かれる表面的な知識)を指すのではない。

生徒会メンバーの大活躍

また、特筆べきことは生徒会メンバーの活躍と大きな成長でした。

今回の入学式を進めていくにあたり、企画段階から大人(先生たち)が主導するのではなく、自分たちがしてもらって嬉しいような入学式を大学生(日本HPの Student Ambassador)と本校生徒会が一緒になって「自分たち目線で考える」ことを念頭に置きました。実際、幾度となく学校でミーティングを行い、それぞれの役割や課題を確認しあいながら、東京と滋賀で離れている間はメールのやり取りを行いながら、中身を詰めていきました。

本校生徒会メンバーの大きな仕事は2つ。前日の事前登校日に、入学生全員にタブレット画面に目標を書かせ、グループ写真を撮ること。そして、当日の司会進行および裏方スタッフです。

人前に出て話すのが得意なメンバーばかりではありません。「自分には何ができるのか、どうすればみんなが喜んでくれるのか・・・。気がつけばそういうことを一番に考え、一生懸命に動いている自分がいました」。誰もが口々にそういう感想を漏らし、「実際、あんなに集中してやれたことって、今までなかったかも」「なんで、あんなに遅くまで残ってれんしゅうできたんやろ」と、自分自身の頑張りに、自分が信じられないといった口ぶりでした。

そう、まさにこれが "Street Smart" ということなんです。

関わる人がたくさんいるイベント、大切な行事、緊張する時間・・・であればあるほど、人は「素直に頑張れる」ものなんですね。この経験は生徒たちにとって、とても大きな成長の場になったと思います。

当日の校長日記

新入生のみなさん、ご入学おめでとう!

みんな、キラキラと輝いていました。これからの学校生活を思うと、こちらがワクワクします。

保護者の皆さま。今日は貴重な時間をご一緒させていただき、ほんとうにありがとうございました。今日のご縁を大切にし、全力でお子様の成長をサポートしていきます。よろしくお願い申しあげます。

生徒会のメンバーへ。一番の功労者は貴方たちだったことを、今回の入学式プロジェクトを進めた身近な人たちから、たくさん聞くことができました。アイディアを出したり、さりげない気遣いをしたり・・・ほんとうに立派でした。憧れの先輩、カッコ良かったです。経験こそが最大の財産であり、成長のエネルギーなんだと、改めて感じました。

Real Life and Street Smart

可能性は∞

ありえないを、創っていこう!

保護者の声

上記のような、入学式の『ワク熱!安居教室』に対する自分自身の素直な気持ちを「校長ブログ」に綴ったところ、こんなメッセージを寄せてくださった保護者がありました。

◇◇◇

始業式の日、帰ってきた息子が「校長先生の話、ノートに書いておきたかったくらい感動した」と教えてくれました。学級通信でその意味を知り私も自身の教訓にしたいです。

選抜の野球部の皆さんのおかげで味わったシガガク魂!一体感!応援に行った息子達の誇らし気なキラキラした目にも嬉しくなりました。シガガクの体育祭や行事や普段の学校にも通づるあたたかさが最高です!

入学式にもまたまた感動しました! 新入生のお母さんから「す、すごかった!」と聞きました!

そして、そして、生徒会メンバーを褒めてくださってありがとうございました! 素敵なバッチを嬉しそうに見せ、今までにない大役をやりきれた息子の顔を見て、滋賀学に出会えて良かったと思っております。

◇◇◇

また、入学式後の保護者アンケートで、「今日の入学式に参加して、これからの学校生活についてどう思ったか」を尋ねたところ、「とても楽しみになった」(46.6%)、「楽しみになった」(42.8%)、「まだ普通」(8.5%)、「楽しみではない」(0%)、「あまり楽しみではない」(0%)、「わからない」(2.8%)という結果でした。

記録

☆学校公式WEB → 平成28年度入学式が挙行されました

☆滋賀報知新聞記事 → Real Life & Street Smart に 入学式で「ワク熱!教室」

安居 長敏(やすい ながとし)

滋賀学園中学高等学校 校長・学校法人滋賀学園 理事・法人本部事務局 総合企画部長
私立高校で20年間教員を務めた後、コミュニティFMを2局設立、同時にパソコンサポート事業を起業。再び学校現場に戻り、21世紀型教育のモデルとなる実践をダイナミックに推進中。

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