2016.04.05
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新任あるある Vol.1 「質問や相談の仕方…」

特定非営利活動法人TISEC 理事 荒畑 美貴子

 桜満開の中、新年度が始まりました。いよいよスタートだなという気分が高まってきています。

 実は、3月には卒業生を送り出し、その上多くの先輩方が退職されてしまって、私は一人取り残されたような寂しい気分を味わっていました。しかし春休み中、卒業生からのメッセージを何度も読み返しているうちに、多くの子どもたちが、「教師を続けてください」という言葉を送ってくれていたことに気付いたのです。子どもが書いたものですから、深い意味があるとは思えません。「元気でがんばってください」に等しい意味で書いたものと推察されます。でも、時間が経つにつれ、「教師を続けなさい」という神さまからのメッセージであったかもしれないと感じるようになりました。背中を押されたのかもしれないなと思います。

 そこで、今年度は、「新任あるある」と題し、私の失敗談も織り交ぜながら、新任の先生がスキルアップできるような内容を書いていこうと思います。もちろん、ベテランの先生にも、教師の生活に興味をもたれている皆さんにも楽しんでいただけると思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

 

 さて、もう少し前置きです。この季節は新しい人との出会いも急増する時期、誰しも知らず知らずのうちに緊張していることと思います。深呼吸をしたり美味しいものを食べたり、早寝を心がけたりして、4月を乗り切っていきましょう。

 深呼吸をあなどってはいけません。腕を高く上げて胸を開き、深く呼吸をすることは、生きるエネルギーを得るための最も簡単な方法です。食べ物もしかりです。納豆ご飯であっても、炊きたてのご飯から得られるエネルギーは、コンビニのお弁当の比ではありません。自分が美味しいと心から感じられるものを、食べるようにしていってほしいと思います。それから睡眠も大切。眠ることで体力も気力も回復することは、言うまでもありません。

 

 ここからが本題です。それに加えて大事なことは、同僚と対話することです。メールでのやりとりでわかったつもりになったり、本を読んでできるつもりになったりすることよりも、同僚と話して学ぶことが大切です。それに、仕事の土台を支えてくれるのは同僚なのです。その同僚と心を通わせることができるようになれば、ストレスも軽減されるはずです。

 実のところ、学校の仕事を覚えるのは、けっこう大変です。次のような会話は、仕事を覚えていないとできません。教師の仕事に慣れた者同士の会話例を以下にご紹介します。

 「明日の4時間目、空いていますか?」

 「空いているけど、どこに入ればいいの?」

 これは、どこかのクラスの担任が所用で授業ができなくなるので、代わりに授業を担当してほしいという願いに、承諾の意を表している場面です。自分の担当するクラス以外で授業をするのは骨が折れるものですが、私たちは度々こういった仕事を任されています。同僚同士の信頼関係ができてくると、短い言葉でも通じるようになる例だと思います。

 

 教師という仕事を外側から見ると、子どもに勉強を教えているだけのように感じるかもしれません。しかし、私は教師を続けて10年経った頃にも、20年経った頃にも、まだまだ知らないことがあるんだなと思ったことを鮮明に覚えています。授業をするだけでも苦労が多いのに、学校を動かしていくためには、たくさんの仕事をこなしていかねばならないのです。そうは言っても、一年間やってみればだいたいの流れがわかってきますので、焦らずにやっていきましょう。わからないことは、どんなに小さなことでも、質問してみてください。

 何年か前に、新任の先生が初めて職員会議に出席したときには、「何のことを言っているのか、ほとんどわかりませんでした」と感想を述べていたことがありました。早口でさっさと説明が終わってしまう会議の内容を追っていくのは、何年か経験してみないと慣れないものです。会議中に質問をしても納得いくまで説明してもらえないこともあるので、わからない点は、会議の後で先輩に教えてもらうといいと思います。

 また、質問に限らず、相談してみたいことなどがあったら、どんどん話をしていきましょう。ただし、コミュニケーションを取るときには、ちょっとしたコツがあります。まず、わかりやすい表現を心がけてください。相手に解釈を任せるような、不明瞭でわかりにくい表現は好ましくありません。相手に話しかけるときには、相手の時間を使わせるのだということを念頭に置いて、短い時間で用件を終わらせるような表現を心がけていきたいものです。

 それから、相手が誰かと話しているときには、「お話ししたいことがあるので、時間の空いたときにお願いします」と、声をかけるといいと思います。できるならば朝のうちに、午後の何時頃なら話ができるのかを聞いておくと、先輩教師も心構えができるので、よりよい関係を築きやすくなります。

 あるとき、こんな若手に出会いました。「お話し中、申し訳ありません。実は・・・」と、いきなり話し始めるのです。雑談をしているならまだしも、同僚と相談事をしているときに、横入りをするのはやめるべきです。緊急の中身でなければ、待つことも仕事のうちだと思ってください。

 それから、「このように考えましたので、お願いします」という表現を若手が使うのも慎んだ方がいいでしょう。私が若い頃、「会費が足りなくなったので1000円集めます」と連絡したら、「お金のことを勝手に決めるのはおかしい」と先輩からきつくお叱りを受けました。「集めたいと思いますが、いかがでしょうか」と伺いを立てるべきだったと教えられました。そのときはとても恥ずかしかったし悔しかったですが、教えてくださった先輩には、今でも感謝しています。

 

 こういった細かな注意点を読むと、教師の世界もずいぶん堅苦しいなと思われたかもしれませんが、礼節を重んじることは大切です。学校だけではなく、どこの職場であっても同様だと思います。「親しき中にも礼儀あり」なのです。私自身も、子どもの手本になるような言動を心がけたいと思っています。 

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)

特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com

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