ある中学校を訪問したときのことです。
午後5時前、車で校門前に着くと校門が閉まっていました。周辺では部活動で走り込みをする生徒がいて、放課後なのに閉まってるって珍しいなぁ~と思いながら、開けるため車を降りようとしたところ、一人の女生徒が笑顔で校門を開け、「どうぞ」と言ってくれました。
ごく自然な流れで、さも当然のようにさりげなくそうしてくれた彼女。周りにいた生徒も、来客をもてなす・・・というと何か特別なことのように聞こえるかもしれませんが、ふだんどおりの雰囲気のなかに「自分の中学校にゲストを迎える」気持ちが表れているようで、清々しい気持ちになりました。
車を停め、校舎に入ってからも、その空気は続きました。
出会った先生に、約束してある先生の名を告げ、「その前にちょっとお手洗いを・・・」と場所を尋ねると、とても丁寧な言葉遣いで、前まで案内してくださいました。校舎そのものは、けっこう年数が経っていて、お世辞にも近代的な感じはありません。ですが、まるでどこかのお店やホテルに来たような、もてなしのココロみたいな空気を、ごく自然なカタチで感じました。
お手洗いを済ませ、職員室前まで行くと、偶然、外出から帰ってこられたばかりの校長先生に出会いました。訪問の挨拶をしたところ、すぐさま職員室の奥へ入っていかれ、会う約束をしていた先生と一緒に出てきてくださり、そのまま校長室へと案内してくださいました。
なんと、お客さんへの対応が行き届いているなぁと感心するばかり・・・。きっと、ふだんの生徒や保護者への心がけすべてがこうなんだろうなぁ~と思いました。
具体的な話をしているときもそうでした。
とにかく何事にも真剣というか、誠実というか・・・、こうやって訪問してもらっている時間を無駄にしない対応をしようという姿勢がこちらにも伝わってくるような真摯な態度に、「真の教育者」を見たような気がしました。
一事が万事、校門での出来事からすべてに共通して流れている学校の雰囲気が、とても素晴らしかったです。こんなところで学んでいる子どもたちはシアワセだなぁと思いました。
巷では、世間の常識が通用しないと苦言を呈されている学校現場ですが、この中学校にあっては全くそれがあてはまらない、むしろ180度逆の印象を感じさせてくれるホンモノの魅力がありました。
ちなみに、この中学校は大阪の北部にあります。滋賀県とはまた違った環境に置かれているのかもしれませんが、ややもすればその特殊さ?ゆえに、高圧的になり、甘え、横柄になりがちな学校現場への警鐘を見るような気がしました。
良い経験をさせてもらいました。この学びを活かさなくては・・・と思います。

安居 長敏(やすい ながとし)
滋賀学園中学高等学校 校長・学校法人滋賀学園 理事・法人本部事務局 総合企画部長
私立高校で20年間教員を務めた後、コミュニティFMを2局設立、同時にパソコンサポート事業を起業。再び学校現場に戻り、21世紀型教育のモデルとなる実践をダイナミックに推進中。
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