2016.01.29
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修学旅行をふりかえる

福岡工業大学附属城東高等学校 教務主任 石丸 貴史

 勤務校の修学旅行は、福岡から北海道に移動して小樽市内研修が1日目、2日目から4日目は札幌でスキー研修、5日目は北海道から東京に移動してディズニーランド、6日目はクラス別都内研修という5泊6日のスケジュールです。
他校で勤務したことがないので、これが長いのかハードスケジュールなのかなどの判断がつきませんが、他校の先生からは長くてハードだと言われることが多いですね。加えて、本校はマンモス校の部類に入るので、様々な場面で大変な部分はあります。
 
 修学旅行は旅行の期間だけを指すのではなく、出発前の事前指導から帰ってきた後の解団式までが修学旅行と話をします。様々な事情で旅行そのものに参加できない生徒もいますが、その様な生徒でも事前および事後の指導に参加することはありますので、そのつもりで参加するように指導します。さらに「修学旅行のしおり」を回収して全ての生徒の全てのページに目を通しました。旅行中の注意事項をどの様に理解して何をメモしているのか、日々の出来事から何を感じて何を記録しているのかなど、同じスケジュールで過ごしていても感じ方は様々です。
その文章からだけでも生徒達の成長の様子を感じ取ることができます。
 
 学年主任が掲げた修学旅行のテーマは「感謝と気配り」でした。修学旅行を行うことができるのは、保護者の方はもちろん旅行会社の方、宿泊先のホテルの方、スキースクールのインストラクターの方など多くの方の支えがあって成り立っていることを知り、そこに感謝の気持ちを持って行動することを確認しました。また、大人数が動くので周囲の一般の方へご迷惑をかけてしまうこともありますが、その様なことが最小限となるように気配りを求めました。
 加えて、クラスとして担任として掲げた目標は、健康管理と時間管理でした。健康な状態で修学旅行に参加すること、多くの時間的な制約がある中でスケジュール通り円滑に進められるように時間を守ることを求めました。
 この様なことは、修学旅行だけで必要なのではなく、これから先の彼らの人生の中でも大事なことだということも十分説明して理解してくれているはずです。
 
 さらに、様々な場面でリーダー体験をするために、様々な係を設定し全て立候補で決定しました。具体的には、クラス代表者として点呼を中心にクラスのメンバーを掌握する生徒、事前指導の段階でクラス別研修の内容を考えるクラス別研修企画委員の生徒、ホテルの部屋の部屋長としてミーティングに参加して連絡事項を確認伝達して他の生徒の健康状態や部屋の整理整頓にも気を配る生徒、スキー班の班長として班員が怪我をしないように気を配り技術的にやや劣っている生徒に気を配る生徒です。
この様な必ず決めておかなければいけない係の他にも、自分達で自主的な係として、目覚まし係、荷物係、部屋長サポート係、バス忘れ物チェック係など設定して積極的に動いてくれました。
 
 また、修学旅行中のクラスの宿題として、「修学旅行中に旅行先でしか出会うことができない社会人の方に、仕事の内容とやりがい苦労などを聞く。」という課題を出しました。
スキーインストラクター、バスの運転手の方、バスガイドさん、ホテルの方、お土産の買い物をしたお店の方等々多くの修学旅行でしか出会うことができない社会人の方にお話を聞いて、新しい発見をしてくれました。
 
以下、生徒の声を一部抜粋します。
○ 飛行機に乗るとき学年の生徒が一斉に動くことの大変さと、時間の大事さを改めて知ることができた。
○ 一般の方にできるだけ気を使い、迷惑にならない行動、さわやかなあいさつを心がけました。
○ 感謝よりも気配りをする機会のほうが少なく、気配りは難しいと思った。
○ 親にも今日駅まで送ってもらったから身近な人にも感謝したいです。
○ インストラクターの方だけではなく、友達も教えてくれたり助けてくれたりして、感謝は大切だと改めて思った。
○ インストラクターの方に上達したと言われとても嬉しかった。
○ インストラクターに三日間の感謝の気持ちをしっかりと伝えることができた。
○ 最終日は一度もこけませんでした。みんなに「おめでとう!」と言われたのも嬉しいですが、インストラクターの方に喜んでもらえて嬉しかったです。
○ 明日は今日よりも、明後日は明日よりも気配りできるようにがんばりたい。学年集会で言われたように、切り替えやルールを守ることなど当然のことも大事にしていきたい。
○ ディズニーランドのキャストさんは、インタビューをしても夢のある答えをくれました。
○ 修学旅行ほんとに楽しかったし絆も深まったと思います。
○ この修学旅行で集団の団結力が高くなったと思います。
○ たくさんの方に感謝、そして気配りが大切であり、それを学んだ5泊6日の修学旅行でした。
○ 学んだことを普段の学校生活に生かしていきたいです。
 
 この様に、生徒は多くのことを学んでくれました。
修学旅行という行事に、社会的には賛否もいろいろあると思います。
「個」の時代に集団行動の規律を求めることに対する批判もいろいろあると思います。
場合によっては理不尽なくらい厳しい指導と受け取られることもあるかもしれません。
しかしながら、修学旅行という高校生活最大級の行事で、目の前の生徒が成長する様子を見る事ができると、我々がやっていることは正しいと確信を持つことができます。
教えているつもりが、様々なことを教えられているこの生徒達と2年生の残り2ヶ月を充実したものになる様に過ごしていきたいと思います。

石丸 貴史(いしまる たかふみ)

福岡工業大学附属城東高等学校 教務主任
高校での新学習指導要領導入を控えて、「カリキュラムマネジメント」・「I C T活用」を中心に、日々の授業改善に取り組んでいます。大学を卒業後すぐに会社員として塾・予備校業界で勤務をした経験も活かしながら、社会で活躍できる生徒を育てるべくどのような資質・能力を育成すれば良いかを試行錯誤しています。

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