2015.10.23
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チャレンジ

福岡工業大学附属城東高等学校 教務主任 石丸 貴史

 以前この場で、陸上競技部の顧問をしていること、私自身が陸上競技連盟にマスターズ選手登録をして競技会に出場したことがあることを書いたことがあります。

実は先日、生徒も出場する協議会に参加しました。

 

 今年度は5月に競技会に出場し、その後も6月と7月にも出場するつもりでした。ところが、6月上旬にけがをしてしまい、共に出場することができませんでした。

その後、毎年8月に行われている顧問をしている部の合宿前から練習を再開し、9月に行われる勤務校の体育祭練習期間あたりまでまずまず順調に練習ができていました。

体育祭で普段からある程度体を動かしている教員有志と生徒に混ざってリレーを走り、まずまず手ごたえが感じられ、生徒達や他の教員から「先生、速いですね。」と言われ、いい気分になっていました。

 ところが体育祭が終わると一気に仕事が集中してしまい、競技会直前の3週間ほとんど練習ができていませんでした。

 直前の3日間ほど焦ってバタバタと練習しましたが、全く思った様に体が動きません。

直前にバタバタと練習しているので、筋肉痛とまでは言いませんが肉体的な疲労が残ってしまい、ますます体が動きません。

 

 陸上競技はメンタルが大きく結果を左右します。

陸上競技場の400メートルトラックを見ると、一般的には広いと感じる人が多いと思いますし、400メートルという距離が種目としては短距離だということを信じてくれない人もいますが、十分な練習を積んで肉体的にも充実し、「今回は良い記録が出そうだ。」という気持ちで臨む競技会ではトラックがいつもより狭く感じるものです。学生時代に400メートルを専門的にやっていた時にはその様に感じることもしばしばありました。さらに4×400メートルリレーという種目でバトンを持って走るときには、何か自分の力以上のものが出せている気がしていました。その様に感じることができたのは学生時代のことで、いまは400メートルが短距離だとは思えませんが。

 

 40代になり肉体的にも精神的にも十分な状態で競技会に臨めるわけではありません。常に体のどこかが痛いですし、学生時代には感じたことのなかった肉離れなどの心配もついてきます。その様な状態で競技会当日を迎えました。

 

 陸上競技はタイムテーブルに従って原則時間通りに進むので、スタートの時間から逆算して食事の量とタイミングを調整します。食事をした後十分なストレッチを行ってからウォーミングアップに臨みます。ストレッチの意味も量も質も学生時代とは全く異なるのですが、今回はいつも以上にそわそわして落ち着きません。

その落ち着きのなさはウォーミングアップに行っても変化がなく、体が温まったからではない別の汗が出ているような気がします。そんな状態でレースの時間が迫りスタートライン周辺の集合場所に行き、何分か後に自分が走るレーンを見ると、とても長い距離に感じます。

 

そんな私の気持ちに関係なく、時間になるとスタート位置につかなければいけません。

ふと競技場のスタンドを見ると、部の生徒達があえて何か所にも散らばってそれぞれにカメラを持って録画をしようとしているではありませんか。自信の無さとの相乗効果でますます気持ちが重くなっていきます。

それでも合図に従ってスターティングブロックにつき、ピストルの音と共にスタートします。

ところが、最初のスタートから出遅れたことが自分でわかるほど、最悪のスタートでした。

それを取り戻そうとすると動きが硬くなってますますスピードに乗れません。練習の時には最後まで何とか走り切れていたはずの距離なのに、フィニッシュライン近くで足がもつれるかと思うほど体が動きません。トップの選手の遥か後ろを走っているのはもちろん、すぐ隣の選手にもゴールした瞬間に「負けた。」とわかりました。

 

 ちなみに、出場した種目は100メートルです。わずか10数秒のレースにも様々なドラマがあるものです。ゴールした瞬間に「負けた。」とわかった選手とのタイム差はわずか0.1秒です。たったこれだけのタイム差でも、走っている当人達は勝ち負けがはっきりわかります。

 いつもは出場種目の終了後にアドバイス等を求めに私のところにやって来る生徒達が、ここぞとばかりに録画した動画をもって私のところにやってきます。

「先生、スタートが悪かったですね。もっとこうすれば良かったと思いますよ。」

「先生、ラストの何メートルか足が動いていませんでしたよ。もっとこんな練習をすれば良かったと思いますよ。」

「あっ、腕も振れていませんでした。先生がラストはしっかり腕を振れと言われるのがよくわかりました。」

等々、言いたい放題です。

日頃の指導が良いためか、いちいちもっともな指摘です。

 

 最近の好きな言葉は「率先垂範」です。

結果は結果として受け止めて、来シーズンに向けて生徒を鍛えると共に自分自身も、もっともっと鍛えていかなければいけません。

「準備」というものの大切さを再認識した競技会となりました。 

石丸 貴史(いしまる たかふみ)

福岡工業大学附属城東高等学校 教務主任
高校での新学習指導要領導入を控えて、「カリキュラムマネジメント」・「I C T活用」を中心に、日々の授業改善に取り組んでいます。大学を卒業後すぐに会社員として塾・予備校業界で勤務をした経験も活かしながら、社会で活躍できる生徒を育てるべくどのような資質・能力を育成すれば良いかを試行錯誤しています。

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