2015.09.17
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よりよい授業を創造するためにNO.13 「子どもたちとの合意形成を!」

特定非営利活動法人TISEC 理事 荒畑 美貴子

 新学期がスタートして二週間が経とうとしています。
私事ですが、この二学期から産休を取る教師の代わりに、担任を務めることになりました。
この1年数ヶ月は、算数担当としてマイペースで仕事を行ってきたため、担任業の多忙さに目が回るようです。
しかし、子どもたちにとっては、かけがえのない一日一日です。
私の事務的な仕事の煩雑さはさておき、授業を大事にしてがんばっていこうと思っています。

 さて、前回までアクティブラーニングについて書いてきました。
子どもたちが主体的に学ぶことができるようにするための、教師の力量が問われる時代に入ったのです。
その背景には、知識の伝達だけでは確かな学力をつけることができないということにあります。
今回は、アクティブラーニングを成立させる前提となっているものについて、考えてみたいと思います。

 学級担任として授業をしたり宿題をみてやったりしていると、主体的な学びを引き出すために最初にやらねばならないことが見えてきました。
子どもたちとの合意形成です。
例えば、引き受けたクラスでは、1日2ページの自主学習をメインに、家庭学習を行うように指導されてきたようです。
ですから、子どもたちは、内容の善し悪しを考えるよりも、とにかく2ページを文字で埋めなければというような強迫観念にかられているように見受けられました。
その一方で、既に終わっておいた方がいいと思われる漢字ドリルなどは、手つかずになっていたのです。

 誤解のないように申し上げますが、前任者の批判をしようと思っているのではありません。
実のところ、とてもやりやすいクラスで、前任者の努力や人柄がとてもよく伝わってくるのです。
でも、もしかしたら多くの教師の陥りやすい実態が、この例に見て取れるのではないかと思いました。
もう少し、この例を分析してみましょう。

 高学年ともなると、学習内容やスピードにも個人差が生じてきますので、一律に宿題を出すことがベストとは思えません。
しかし、子どもたち一人一人の学習面での進行管理は大切なのです。
今の段階で終わっているべき学習を、全員がクリアしているのかどうかを把握しておかなければならないということです。
家庭学習では、まずは積み残しになっていることがらを学習するように伝えるべきだと思います。
やるべき学習を終えているならば、自分なりに学習内容を考えて学ぶように仕向けていくのです。

 その際、予習や復習の意味、一日を振り返って学んだことを思い出してまとめることの意味を、子どもたちと一緒に確認しておく必要があると思います。
予習をすると、翌日に学ぶことが予想できるので安心できるし、より深く学ぶことができるようになること。
また、復習をすることによって学習内容が定着しやすくなることなどです。

 それから、家庭学習は分量の問題ではなく、時間が問われることにも気付かせておくべきです。
例えば漢字の練習を30分間で終わる子どもは、さらに30分間くらいの計算練習をすることができるでしょう。
しかし、漢字の宿題だけで1時間を超えてしまうのなら、それ以上の学習を続けるのは難しいかもしれません。

 また、塾の勉強で多くの時間を費やしている子どもにとっては、大量の宿題が負担となることもあるのです。
ですから、やるべきことを決めて、短時間で終わらせるようにさせることも大切になってきます。
もちろん、宿題を免除するとか、学校の勉強より塾を優先させるという意味ではありません。
子どもの実態を考えて、無理なく乗り切らせてやることも大事なことだと思うのです。

 ずいぶん前に、私は身体の不自由な子どもを担任しました。
手に麻痺があったので、その子どもは漢字の練習をするのに何時間もかかりました。
他の子どもたちが、5種類の漢字を5回ずつ練習するのに20分間くらいかかるだろうと想定して出している宿題を、夜の10時過ぎまでかかってやってくるというのです。
私は、保護者に回数を減らして、早く寝かせることを目標にしてほしいとお願いしました。
しかし、その願いは聞き入れられませんでした。
その保護者は、他の子どもと同じことを子どもにさせたいと強く願っていたからです。

 40人のクラスを受け持って、一人一人に個別に家庭学習計画を出すことは不可能です。
ですから、個人差はあったとしても、多くの子どもたちの負担にならないように、しかも繰り返し練習によって学習が定着できるようにと願って宿題を出すことになります。
それに加えて進学などの様々な事情が出てくる高学年になったならば、子どもたちと話し合い、どのように家庭学習をやるべきかについて考えさせていく必要があると考えています。

 もちろん、家庭学習以外のことでも、子どもたちと確認しておいた方がいいことがあります。
例えば、集中的に学ぶことの大切さです。

 先日、2時間続けて家庭科の授業を行いました。
1時間目は学習ノートにまとめるような知識にかかわる学習をするけれど、2時間目には実技をすることを予告しました。
私は、まとめを早く終わらせることができれば、1時間目の途中からであっても実技をしようと提案しました。
しかし、子どもたちは実技そのものに魅力を感じなかったらしく、のんびりとノートをまとめていました。

 ところが、実際に縫い物を始めてみると、とても楽しかったらしく、時間を忘れてやっていました。
そして、2時間目の終わりには、もっとやりたいと言い始めました。
本当なら、そういうタイミングを逃さずに続けさせたいのです。
しかし、時間割が複雑に組まれているので、子どもの希望に添えることは滅多にありません。
次の授業のときには、この経験を生かして、時間の使い方を考えていってほしいと話をしました。

 低学年であっても、子どもたちと話し合い、確認しあって授業や活動を行うことはとても大切です。
教師の願いを押し付けるのではなく、合意を形成して始めれば、互いに気分よく時間を使うことができるようになるからです。

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)

特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com

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