2015.09.10
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体育祭もキャリア教育

福岡工業大学附属城東高等学校 教務主任 石丸 貴史

 福岡市内近隣校の多くと同様に、本校も9月5日(土)に体育祭が行われました。
他校に勤務したことがないので比較はできませんし、福岡県外出身の教員によると独特の習慣等もあるそうですが、今回は体育祭ってキャリア教育だなと感じたことについて書きたいと思います。
 
 まず、5月に前期中間考査が終わった頃全校を四つに分けたブロック割が発表されます。全体の生徒数が均等に分けられるのはもちろんのこと、各学年やコースもできるだけ均等に分けられます。
その後、教員のブロック責任者とブロック割が決まり、同時進行で生徒のブロック長、応援団長、人文字パネル長、バックパネル長、衣装長が決まります。
ブロック長はブロック全体の統括、応援団長は応援合戦のリーダーかつブロックの一般の生徒への指示、人文字パネル長は応援合戦での人文字パネルの企画および練習・本番での指示、バックパネル長は生徒スタンド席の後ろのパネル絵を企画および作成、衣装長は応援団が応援合戦できる衣装の作成と当日にブロックの生徒全員が着るTシャツのデザイン作成を行います。
 各長にはサブリーダーがおりメンバーがいて、全員で協力して体育祭を作り上げていくことになります。(様々な高校の特に応援合戦の様子は、よくYouTubeに動画が上がっていますのでイメージしにくい場合はそちらをご参考にされてください。)
 
 歴史と伝統のある高校では、既に生徒が中心となり主体となり体育祭を運営していく文化ができあがっているもとのと思いますが、本校はまだそれができあがっているとは言えません。しかし、年々「生徒が主体となる体育祭を」をキーワードに企画・運営の調整と変更が行われています。
 
 普通科の他に工業に関する学科を持つマンモス校と呼べる本校では、なかなか生徒の意思統一を図ることが困難な面があります。少し前までの体育祭であれば教員が大きな声を出して指導する場面も見受けられましたが、今年私自身が属していたブロックではブロック責任者の教員が、絶対に教員から全体の生徒に対しての指示・指導をしないという方針を大きく打ち出していました。
 指示が不足していたりするときには長を中心とした各係のメンバーに行い、どうしても指導が必要な場面では個別に呼んで指導するようにしました。
 
 最初は指示が出せなかったり不足していたりする長や各係のメンバーも、ブロック責任者に報告・連絡・相談を繰り返し、ミーティングを通してそれぞれに意見をぶつけ合い協力することを学んでいきます。また一般の生徒も、中には体育祭に対してネガティブな生徒もいますが、長の気持ちを受け止め、周りの生徒と協力して体育祭を盛り上げていく気持ちが育っていき、応援合戦や騎馬戦やブロック対抗リレーといった終盤の大きな競技で一丸となって取り組んでいく様子を見ることができます。
 そのようなわずか2週間弱の体育祭練習期間を通して、生徒の大きな成長を見ることができるのは、教員という仕事の大きな喜びであり、学校という教育機関の大きな役割であると思います。
 
 長はもちろん各係のメンバーの多くは3学年の生徒が務めます。私自身は現在2学年の担任をしており、クラスの生徒達の多くは全体の体育祭練習期間しか知りません。しかし次年度を踏まえた教員の業務の引継のためにも、教員の副ブロック責任者という立場で3年生達にも関わってきました。その中で長を務めた生徒は2年生の体育祭が終了してから1年間かけて温めてきた企画を見事実行させた生徒もおり、その様な話を聞いていると主体性の大切さを再確認することができました。
 体育祭終了後のホームルームでは、クラスに対してその様な準備の話をして、来年度に向けての意識の高揚を図ることが少しでもできたと思います。
 
 来年度の体育祭では、私自身がブロック責任者になる可能性があり、自分のクラスから長や各係のメンバーが出てくることと思います。その様な生徒達をどのように育てていくことができるのかいまから楽しみです。
彼らが自分達の体育祭をどの様にしていくのか、創造力を働かせ、課題を発見し、計画を立てることで、考え抜いて欲しいと思います。それを主体的に取り組み、周囲に働きかけ、実行に移して欲しいと思います。そしてブロック一丸となって感動的な経験ができるように、情報を発信し、周りの意見に耳を傾けて聴いて、的確に状況を把握して、柔軟に対応して欲しいと思います。ストレスがかかることも多くあるでしょうが、規律ある行動の積み重ねこそ体育祭の真骨頂ですので、チーム一丸となって乗り越えてくれるものと期待しています。つまり、社会人基礎力ですね。
 以前文化祭がキャリア教育であることを書きましたが、やっぱり体育祭もキャリア教育ですね。
本校についていえば原則クラス単位で行う文化祭よりも規模が大きくなる体育祭の方が得られるものも大きいのではないかと思います。
 
ちなみに、陸上部の顧問であり自分自身もマスターズ陸上競技連盟に加入し選手登録している「自称アスリート」なので、半ば強引に教員有志をかき集めてリレー競技に参加して共に走りました。その瞬間はまだまだ走れることを確認しましたが、翌日は筋肉痛でした。

何事も日々のトレーニングが大切です。 

石丸 貴史(いしまる たかふみ)

福岡工業大学附属城東高等学校 教務主任
高校での新学習指導要領導入を控えて、「カリキュラムマネジメント」・「I C T活用」を中心に、日々の授業改善に取り組んでいます。大学を卒業後すぐに会社員として塾・予備校業界で勤務をした経験も活かしながら、社会で活躍できる生徒を育てるべくどのような資質・能力を育成すれば良いかを試行錯誤しています。

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