今年度、11度目の異動をして、単学級の小学校に勤務しています。3年ぶりに担任となり、元気のよい3年生の担任を楽しんでいます。
さて、本校ではゴールデンウィークをはさんで家庭訪問が行われました。私も久しぶりの家庭訪問ですので、張り切って道に迷いながら回ってきました。
ところで、家庭訪問のねらいは何でしょうか。
Wikipediaには、次のように記され、目的として6つ挙げられています。
教師の家庭訪問は、主に小中学校において、児童・生徒の家に訪問し、学校での様子、成績の状態などを親に報告し学校と家庭の連携を図る行事である。
・児童・生徒の家庭の地理的位置を把握する。
・児童・生徒の家庭での様子を把握する
・児童・生徒の家庭での問題点などがないかを把握する
・児童・生徒の学校での様子や成績を保護者に報告する
・保護者の疑問に答え、学級経営・指導方針を説明する
・通学路の安全を点検する
家庭訪問のねらいは、子どもに関する情報交換をして、保護者と担任(学校)の共通理解を図るといったことで間違いはないでしょう。ただ、私はこれを「表のねらい」と考えています。
そこで、事前に行われた保護者会や学級通信を通して、「子どものよいところを3つ教えてください。」とお願いをしておきました。したがって、家庭訪問では保護者がとらえた子どものよい面に、教師が知っている子どものよさを付け加える場になりました。
こうした家庭訪問がどういう意味があったのかについて、事後の学級通信に記しました。それを紹介します(一部割愛)。
事前にお願いした「子どものよいところを3つ教えてください。」にも、真摯にお考えいただき、ありがとうございました。
さて、家庭訪問ではお子様に関する情報交換をして、保護者の皆様と担任が共通理解をするというのが主目的になっています。今回は、家庭訪問の際にお話しした家庭もありましたが、さらに2つのねらいを加えて家庭訪問をさせていただきました。
一つ目は、家庭では普段の生活の中では、どうしても子どもを叱ることが多くなってしまうと思います。そこで、改めて保護者のみなさまにご自分の「子どものよさを再認識してもらうこと」をねらいとしました。つまり、日常生活の中では、子どもの問題点にばかり目がいってしまいますが、よい点に目を向けたいということなのです。「3つ探す」のは苦痛に感じられたご家庭もあったかと思いますが、それはもしかしたら「心地よい苦痛」ではなかったでしょうか。このように考えることで、保護者自身が我が子のよさを深く認識することになり、「こんなよさがあったんだ。」「そうだったよね。」という再確認ができ、お子様をよい面から見てもらいたいと考えたわけです。
二つ目は、子どもの自己肯定感や自己存在感、自己有用感の「核」を形成するねらいがありました。小学校も高学年になると、自分のよいところが見つけられない子どもがいます(最近では、もっと下の学年でも)。「自分にはいいところなんてない。」「自分はダメな人間だ。」と考える子までいます。しかし、それはその子自身が悪いわけではなく、学校や家庭での対応に問題があるのではないかと考えました。つまり、学校や家庭で「早くしなさい。」「ぐずぐずするな。」「そんなこともできないのか。」といったことばかり言われていれば、「自分にはいいところなんてない。」「自分はダメな人間だ。」と考える子になるのは、しかたがないのではないかということです。そこで、1年に1度の家庭訪問の機会に、子どもよいところを再認識してもらい、具体的にそのよい点が見えたら、その場で事実を指摘してほめるようにしてほしかったのです。
たとえば、「優しい」というよいところを持っているならば、下の子の面倒を見てくれている時に、「優しいのだから当たり前」と考えるのではなく、「面倒見てくれて、ありがとう。」「面倒を見てくれるので、お母さんは助かるわ。」と言葉に出して、その優しさをほめてほしいのです。こうすることで、子ども本人は、何気なくやっている行動かもしれませんが、周りの大人が具体的にほめることで、子ども自身が「自分のよさを認識する」ようになるのです。この「よさの認識」が、前述の自己肯定感や自己存在感、自己有用感といった『自尊感情の核』を形成していくのです。
心を育てるためには、この『自尊感情の核』を形成し、それを育てていかなければなりません。今後、家庭と担任が本当の意味(=子どもを育てるという視点)で連携していけるようにお願いいたします。
これから、ますます厳しくなる社会の中で、自分(自己肯定感・自己存在感・自己有用感)をもって、夢や希望に向けて努力できる子どもに育つように、どうぞよろしくお願いします。
家庭訪問後に、連絡帳で「子どものよい所をたくさん見つけていただき、ありがとうございました。」「子どものよさを見直すことができました。」といった連絡をいくつもいただきました。
上記の2つのねらいは、家庭訪問の「裏のねらい」です。保護者にも十分伝わったのではないかと思っています。
これから担任する子どもたちを、保護者とともに楽しみながら育てていきたいと考えています。
大谷 雅昭(おおたに まさあき)
群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭
子どもと子どもたち、つまり個と集団を相乗効果で育てる独自の「まるごと教育」を進化させると共に、「教育の高速化運動」を推進しています。子ども自身が成長を実感し、自ら伸びていく様子もつれづれに綴っていきます。
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