授業というものに関して、反転授業やICTの活用、アクティブ・ラーニングといった様々なキーワードをよく目にする昨今、授業というものに対する見方や考え方、価値観が変貌しているのだと思います。
しかしながら、教員が教壇に立って「何か」を伝えるということはこれからも変わらないものと考えています。
近年、塾・予備校等が、ネットを介してオンデマンド等で授業を配信するサービスは、拡大しています。これに対して、現場の教員が危機感を持っている場合が多くあります。その危機感に対して、教員が自身の教科力や授業運営について研鑽を重ねるのは、健全な取り組みだと思います。その様な健全な取り組みを進行させるとともに、授業というものについて再考することも大切だと考えています。
前述の様なオンデマンド等で配信される授業というものは、「講義」だと認識しています。講義とは原則一方通行であり、繰り返し見ることができる、自分のペースで見ることができるといったメリットは大きいものの、同じ内容のリピートであり、目の前の生徒の様子を見ながら表現方法や例を示すこと等を通して、理解が深まるよう工夫することができないというデメリットもあります。
これに対して、従来からある教員が教壇に立って「何か」を伝える授業というものは、目の前に生徒がいるというライブ感を利用して、オンデマンド等の授業のデメリットをカバーすることができると考えています。
そのためにも、私はまず「授業というものは、コミュニケーションである。」ということを心がけ、目の前の生徒にもそのことを繰り返し確認するようにしています。
大雑把な言い方ですが、反転授業というものは授業というコミュニケーションを円滑に進めるための予備知識の導入方法の工夫であり、ICTの活用というものはコミュニケーションを円滑に進めるためのツールを増やすことであると考えています。また、アクティブ・ラーニングというものはコミュニケーション能力の強化と言えるのではないでしょうか。
つまるところ、教員と生徒とのコミュニケーションを軸に、教員間のコミュニケーションも、生徒間のコミュニケーションも、広げて深めていかなければ、授業というものが成り立たなくなるということだと考えています。
先日、卒業生が訪ねて来て、「メール等で伝えることもできた要件だけど、せっかくだから先生と顔を合わせて直接伝えたいと思った。」と言ってくれました。
この言葉から、スマホやパソコンの画面を介してのコミュニケーションには長けているものの、顔を合わせてのコミュニケーションを苦手とする人が増えていることが、教育現場はもちろん社会で起きる様々な問題の原因になっているのではないかということ改めて感じています。
本日をもってゴールデンウィークが終了し、中学校や高校の教育現場では、中間考査等が近づき、また慌ただしい時期に入るところも多くあると思います。だからこそ「連休中どう過ごしていた?」という問いかけを積極的に行うことを通して、生徒も自分自身もコミュニケーション能力を鍛えていきたいと考えています。
その様にして吸収したことを、教壇に立って「何か」を伝えることに還元していきます。

石丸 貴史(いしまる たかふみ)
福岡工業大学附属城東高等学校 教務主任
高校での新学習指導要領導入を控えて、「カリキュラムマネジメント」・「I C T活用」を中心に、日々の授業改善に取り組んでいます。大学を卒業後すぐに会社員として塾・予備校業界で勤務をした経験も活かしながら、社会で活躍できる生徒を育てるべくどのような資質・能力を育成すれば良いかを試行錯誤しています。
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