みなさんは、「教員免許更新講習」を受講したことがありますか。
教員免許更新制はご存知だと思いますが、2007年6月27日に公布された「教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律」を改正施行することによって、実施されているものです。
この法律は概ね次のような内容です。
・免許状の有効期限は10年
・更新講習はおよそ30時間程度
・費用は個人負担で3万円
・講座の開設は教職課程認定大学の他、各自治体の教育委員会が大学や大学院との連携によって設置することも可能で、講座の設置許可は文部科学省が行う。
・免許満了の2年前から受講可能。
課題もある教員免許更新制ですが、私は今年度で免許満了となるので、この夏、5日間の講習を受けてきました。
どこでどのような講習があるのか、昨年度から気にしていました。文科省や都道府県のHPを見て、免許更新講習会を実施する大学等を調べ、その内容を検討していました。せっかく、時間とお金をかけるのですから、興味関心があり、受講してよかった楽しかったと感じられるところはないか探しました。
必修領域2日12時間は「最新の教育事情」というテーマで、文科省が決めているテーマなのでどこも同じでした。教職についての省察、子どもの変化や教育政策、学校内外の連携協力に対する理解などでした。結局、必修領域は地元の国立大学に申し込むことにしました。
選択領域の3日18時間は、1日6時間単位でいろいろな教科等領域の講習がありました。自宅から遠くなく、講義形式だけでなく、野外で活動できるものを探していると、国立赤城青少年交流の家(群馬県)の更新講習が目に止まりました。それは「長期宿泊体験に活きる体験活動」をテーマに、自然環境や人間関係を構築するためのプログラム体験を通して、免許状更新とともに、教員の資質向上を図るというものでした。
「もう、これしかない!」と思い、開催要項を取り寄せました。募集は3月からでしたが、例年、受付開始15分程度で定員(30名)に達するという超人気の講習会でした。受付時刻をチェックしながら、受付開始と同時にメール送信をして、仮受付を完了させました。
国立赤城青少年交流の家の更新講習は、2泊3日の日程でした。宿泊を伴いますから、費用は若干高くなりましたが、十分満足できる内容でした。日程は次のようでした。
1日目 講義「青少年問題と体験活動」、講義・実習「仲間づくりのレクリエーション」
2日目 講義「自然体験活動と子どもの変容」、実習「あかぎ自然体験プログラム」
講義・実習「野外炊事」、実習「ナイトウォーク」
3日目 講義「青少年施設と学校の望ましい関係とは」、実習「クラフト」、履修認定試験
ここでの「仲間づくりのレクリエーション」は、プロジェクトアドベンチャー(PA)の赤城青少年交流の家版「あかぎプロジェクトアドベンチャー(AAP)」でした(写真 左)。仲間とともに、体と心と頭を使ってアクティビティをこなしていきます。もちろん、みんなで楽しくクリアすることで、自然に仲間意識が芽生えてきます。PA的な手法は日頃から取り入れていますが、改めてそのよさを感じることができました。
1日目の夜は、会食がありました。ここでは、2日目に野外炊事を行うグループ毎(6~7人)に集まることになりましたが、AAPの成果もあり懇親が深まりました。同時に、各グループの活動テーマを決めて発表するなどして、大いに盛り上がりました。
2日目の午前は、「自然体験活動は感覚運動的相互作用によって感性の発達を促すなどの効果がある」という講義を受けた後、フィールドに出てネイチャーゲームをしました。38人を1人の指導者では大変ではないかと思いましたが、誰もが満足できるような展開をしてくれました。流石、プロの技だと思いました。
午後は、グループ毎の「野外炊飯」となりました(写真 中)。まず、「野外炊飯に関する知識や安全確保に関するレクチャー」を受けました。今年は鍋でご飯を炊くコンテストとともに、用意された食材の中から選んだ物を使って、自分たちで考えたメニューを作るというものでした。私たちのグループは、昨夜からこのプログラムを予想して、分担とメニューを考えておきました。かまどを作り、薪に火をつけたり、食材や用具を洗って準備をしたりするのを、手際よく行いました。6つのグループがそれぞれにうまく活動している様子が見られました。理想の集団だと感じました。4時過ぎには調理が終わり、いただきますをすることになりました。かなり早い夕飯となりましたが、味は最高でした。もちろん、ご飯コンテストは第1位でした。もし、主菜のコンテストがあっても1位になったのではないかと思っています。主菜は定番のカレーが多い中、私たちのグループはボルシチを作りました。みんなで協力して、野外で食べる食事は最高においしかったです。
暑い中、フィールドの活動が多かったので、後片づけの終わった5時過ぎからは休憩となりました。
この日のプログラムは、夜間もありました。赤城青少年交流の家から30分ほどバスで移動した「赤城自然園」での「ナイトウォーク」です(写真 右)。歩き始めの午後7時半は明るかったのですが、まもなく真っ暗になりました。整備された森の中、チップが敷かれた小道を2時間ほど歩き、夜の木や花の様子、ホタルや星を見る体験をしました。普段はなかなかできない体験で、2時間はアッという間でした。
最終日の午前中は、まず、赤城青少年交流の家の所長さんの話で、「自然体験活動に関する中教審の答申や同所の利用状況等について」学習しました。そして、最後はグループ毎に3日間の振り返りをしながら、写真立て作りの「クラフト」を行いました。自然物を使った飾りを付け、集合写真を入れた記念品を作り上げました。
午後は、90分の「履修認定試験」(筆記試験)を受け、閉講式となりました。
とにかく、3日間はアッという間に終わり、楽しいことばかりでした。野外活動プログラムはどれも体験したことがあるものでしたが、知らない人とAAPを通して知り合い、会食で意気投合し、ネイチャーゲームや野外炊事で協力関係を強化していきました。最後の振り返りでは、充実感いっぱいの意見がたくさん出されました。
日常とは異なる体験をしつつ過ごした3日間は、単なる免許更新講習や思い出だけに止まらないと思います。
自然と人を通して、自然と人間のよさを改めて見直す機会となったと考えています。本当に充実した時間でした。この体験を今後、人として教師としての生き方に活かしていくことを考えたいと思っています。
大谷 雅昭(おおたに まさあき)
群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭
子どもと子どもたち、つまり個と集団を相乗効果で育てる独自の「まるごと教育」を進化させると共に、「教育の高速化運動」を推進しています。子ども自身が成長を実感し、自ら伸びていく様子もつれづれに綴っていきます。
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