新学期が始まり1カ月余りが立ちました。
山間地にある本校から見る風景は、すっかり変わってきました。梅や桜に続いて咲く藤の花も終わりに近づき、山々の緑は日に日に濃くなっていくのがよく分かります。
ところで、いわゆるゴールデンウィーク明けの「リ・スタート」では、「何を」「どんなことを」すれば、学級を集団としてまとめ、成長に導くことができるのでしょうか。
もちろん、学年や発達段階、学校や地域の特性もありますから、これをすれば絶対にうまくいくというものは、ないかもしれませんが。
さて、我が家には何本かの庭木があります。花が咲くものでは、ロウバイ、シャクナゲ、ツツジ、キンモクセイです。シャクナゲとツツジは、今、花が咲いています。しかし、枝葉も伸びて、格好が悪くなる時期でもあります。剪定が必要ですが、花期と剪定をどのようにとらえたらよいのでしょうか。
花木の剪定は、「花の終わった直後」に行うのが基本とされています。今、ピンクや白色の花を楽しませてくれているツツジは、花が終わると、来年に向けた準備が始まるそうです。ツツジは夏に向けて伸びる枝先に花芽が分化し、翌年の花が準備されます。したがって、ツツジの整枝は花後できるだけ早く行うべきで、夏過ぎに枝を切ると、その枝には花が咲かなくなるのです。
具体的に、ツツジの整枝・剪定の最適期は、花後の1~2週間で、後にも先にもこれ1回と心得るべきだと言われています。つまり、花が1年の終わりで、花後が新年の始まりと解釈するとよいということです。
このツツジの花と剪定の関係が、学校で子どもたちを育てることとよく似ていることに気付きました。
4月は進級・進学の時期です。どの子も進級・進学し、一学年大きくなったことを無条件に祝福されることで、子ども自身も何か成長を感じ、何となく自信と希望をもち、何かができるような気持ちになっています。つまり、どの子も輝きをもっているので、「花が咲いている時期」ということができるでしょう。
しかし、それは長くてゴールデンウィークまででしょう。
どの子も輝きを放ち、やる気を見せている「花」の時期に、さらに成長の背中を押すために、剪定=型を教える必要があります。また、進級して気持ちが大きくなり、それぞれの素の部分が出過ぎている子どもがいるとすれば、その言動をとらえて、きちんと剪定・仕分けして線引きする必要があるのです。
進級・進学したことで、剪定する枠は大きくなるかもしれません。しかし、大きくなったからこそ、その枠は厳しくもなり、細かくなることがあります。つまり、しなければならないことが増え、逆にしてはいけないことが分かり、自制しなければならないことが多くなるということです。
教師はその剪定する枠を教えて、子どもたちと共有するのです。そして、上学年の子どもには、細かいことは考えさせて、枠の中身(ルール)を決めさせるのです。こういうシステムを作っておくと、子どもどうしのリレーション(関係づくり)もできます。
一方、教師が前述のような「剪定をしない」とどういうことになるでしょうか。
何か起こる度に、その都度、指導することになります。つまり、もぐらたたきゲームのような、後手後手の対処療法の学級経営となってしまい、結果として、子どもが育たないことになります。そして、翌年に「立派な花を咲かせることがない」ということになるのです。
年度末から翌年度始め(1年先)に、より大きくて美しい花を咲かせるために、この4月半ばから5月にかけての「剪定」が重要だということです。
植物も人間と同じ生き物ですから、それから学ぶことはあると思います。樹木の剪定時期はその特性によって異なりますので、子どもと子どもたちの伸びる時期も個々によって異なります。
教師は、子どもと子どもたちの様子をよく見極めて、1年の間に何度も新芽を伸ばすようにして、多様な花(様々な可能性や能力)を咲かせる重要な使命をもっていると言えるでしょう。
5月の剪定から、こんなことを考えました。
大谷 雅昭(おおたに まさあき)
群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭
子どもと子どもたち、つまり個と集団を相乗効果で育てる独自の「まるごと教育」を進化させると共に、「教育の高速化運動」を推進しています。子ども自身が成長を実感し、自ら伸びていく様子もつれづれに綴っていきます。
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